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アランの怪我は治癒せずに最初にパーチィをした城に転移する。マオー倒して歩いて帰るのって面倒だもの。
「勇者よ、本当に魔王を倒したのか? ここにいる聖女と魔法使いがそなたではなく自分たちが倒したと言っておる。そなたは遊んで帰ってきただけだと」
オーサマの横には聖女と魔法使いの男。
あら生きてたのね。いい物食べてたのか血色がいいわね。でも、聖女の顔にひっかき傷あるの笑えるわね。頑張って化粧で隠してるけど。
「あ、生きてたんだ! ヒメに逆上されて谷に落ちたから心配してたんだ」
アラン、あんた今すっごい馬鹿にされてるんだけど。そこんとこ分かってる?
あとアタクチ、逆上してないから。アタクチが逆上したらあんなもんじゃないから。
「神獣様を怒らせたのか?」
「剣士はどうした? 一緒じゃないのか」
アランが帰還したことで集められた貴族のおっさん達はヒソヒソしている。
「いや、冷静に考えろ。そもそもあのお二方は陛下が突然帰還したと発表されたが、それは一月近く前だろう? 一月前にもう魔王が倒されていたなら魔獣被害はもっと少なかったはずでは?」
「確かに……王都まで迫っていた魔獣たちが撤退を始めたのが先ほどだな」
「今騎士団が追撃している」
おっさん達のヒソヒソ。誰に聞かせるつもりなのかしら。
「魔王って聖剣じゃないと倒せないんじゃなかったでしたっけ? えーと、魔王の角とか切ってこなかったからなぁ、倒した証拠とかって言われると、うーん困ったなぁ」
アラン、この状況でもマイペースな男。
「あ、もしかして君たちは証拠持ってる?」
自分が魔王を倒したくせに、わざわざ相手に聞いて煽りにいくタイプ。
「ぎりぎりで倒したんだから証拠なんて持って帰る暇なかったわよ!」
「そ、そうだ!」
「うーん、じゃあどっちも証拠はないねぇ」
「剣士はどうした?」
のほほんとしたアランにコクオーは尋ねる。
「その二人と一緒に俺を殺して聖剣を奪おうとしてきたので、負傷したまま置いてきました。そうしたらアンデッド化して魔王城で襲い掛かってきたので仕方なく切りました」
アタクチはアランの肩に乗っかりながら、尻尾をポンポンとアランに当てた。アランにとってはキツイ選択だっただろう。聖剣で人間だった者を切るなんて。ちょっとだけ慰める気持ちだ。
「なんと!」
「どちらが正しいのだ!?」
「魔王は聖剣でしか倒せまい」
「もともと王女殿下は我儘だったのだから怪しいんじゃないか?」
「いやしかし、勇者が勝手な行動をしたかもしれん。平民出身の勇者など信用できん」
はぁ。マオーがいようといなかろうと、こいつらは醜悪ね。
アタクチはアランの肩から降りてコクオーの前に進み出る。
コクオーの横にいた聖女と魔法使いはアタクチを見て後ずさりした。
「ヒメ?」
「ユーシャを疑うということは神を疑うということ。それを理解しているのかしら?」
アラン以外にも言葉が分かるようにしてからアタクチは口を開いた。
「な」
「この声は?」
「神獣様か?」
うーん、やっぱりアタクチが話すとこのくらいの衝撃があるもんよね。
このアランはトイレ終わるまでいて、なんて言ってたけど。
「神に聞いてみましょうか。誰がマオーを倒したか」
「え、ヒメ。別にいーよ」
「そのようなことが!」
「やはり神獣様だったのだ!」
「うるさい」
アランのやる気のない声。そして途中でおっさん達が茶々を入れるので黙らせる。アタクチ、デブとハゲは嫌いなの。加齢臭も。
「もし嘘をついていたらどうなるかしら? 神は神を信じない者が嫌いなのよ。二度とこの国で奇跡は起きないでしょうね」
アタクチの言葉が終わる頃、外でゴオッと音がした。
「お、おい! 庭が燃えてる!」
「なんだと!?」
「え! 私のバラは!?」
アタクチのところからは見えないけど、王女(聖女)自慢のバラは燃えているんじゃないだろうか。
それにしてもタイミングがいい。誰か来ているわね。
ゼノンは燃やすタイプじゃないから違うし、ハルモニアは目立ちたがり屋だからもっと派手な演出にするだろうし。マルタは引きこもりだから違う。あとは――
今度は雷が落ちる音がした。さっきまで晴れてたけど……今も晴れてるわね。アタクチも神力残ってたらあのくらいできるんだけど。省エネだし、そもそもあそこまでして危害を加えていいのは神の許可があったときのみ。
アランと長く一緒にいたからもうあまり神力が残ってない。あとはアランを治癒するくらいしか残ってないわね。
「ひぃ! 陛下! 城に雷が!」
「晴れているのに!」
「あちらには王の私室が……」
今度はアタクチのいるところからも見える。
晴れているのに空を切り裂く雷。うわー、雷の落とし方で性格が分かるわ。性格悪いわね、間違いなく。
最初に王族のプライベートエリアに落として、あとは庭の高い木々に落としている。徐々にこの広間に近付くようにして。
アタクチはその性格の悪い奴の意図を組むことにした。
「それで、真実は?」
尻尾をお高そうな赤い絨毯にペシペシ叩きつけながら聞く。
アランはバカでアホなので、自分がらみのことなのに窓まで駆け寄って「雷、すっげー」とか言ってるわよ。ほんと世話が焼ける。
あと、近くで雷が落ちているからふつーにうるさい。ピカピカ光るし、音も凄い。
「そうそう、アタクチのひっかき傷と同じで治癒魔法は効かないわよ? 人間ごときの扱う魔法と神獣を一緒にしないでほしいわ。ま、そもそも即死したら治癒魔法どころではないわね」
アタクチの言葉に、余裕が見えていたコクオーの顔色が変わった。
「お、王女殿下が勇者を気に食わないと! 私は強要されました!」
「はぁ!? あなただって賛成したでしょ!」
最初に裏切ったのは魔法使いの男だった。
「剣士も平民が勇者なのが面白くなかったようで聖剣を奪おうと! 王女殿下は神獣様のことも信じておらず!」
「何勝手なこと言ってんの! あんただってそこのネコに攻撃してたじゃないのよ!」
醜悪な言い争いに貴族やコクオーも静かに見守るしかない。
「ヒメ、雷やんだよ。もう帰っても大丈夫かな? 俺は故郷に胸を張って帰れたらそれでいいからさ」
「あんた。手柄を全部横取りされそうだったのよ?」
「俺はヒメと一緒に冒険できただけで楽しかったよ」
「あっそう」
むかつくわ、この男。何がアタクチと一緒に冒険出来て嬉しいよ。そういう感謝は毎日しなさいよ。
「でも、俺を庇ってくれてありがとう」
「このスーパーポジティブ。神を侮辱されるのがアタクチは嫌いなの」
「うんうん」
「聞いてんの?」
「うん、聞いてる」
「ちょっとそこのコクオー。あんた、アランのために馬車と報奨金を用意しなさいよ」
「税金免除か最新の農具とお金でも大丈夫です!」
ちゃっかりしている。




