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いつもお読みいただきありがとうございます!

なによ、この紙の山は。

アタクチが上機嫌で屋敷を闊歩していると、とある部屋に紙の山が現れていた。

昨日まではなかったはずよね?


下僕2番が見たこともない冷たい笑顔でその紙の山から紙を抜いては別の紙に何かを書き留めている。側で使用人達も同じことをしている。みな、イイ笑顔ね。


「何をしてるの?」


気になったのでアタクチは優雅に部屋に入る。


「あぁ、ジョゼフィーヌ。おはよう」


そういえばあの日以来、下僕と下僕2番とは会話ができるようになったのよ。すごく便利だわ。この二人以外の人間どもとは会話できないんだけど。これで、おやつをいつでもおねだりできるわ。


「これはヴィクトリアと私宛の釣書だよ」


「ツリショ? なにそれ。釣りでもするの? 魚はアタクチに献上しなくてダイジョウブよ」


「要はお見合いで使われる自己紹介書だね。ジョゼフィーヌが神獣だと知ってうちに取り入ろうとしているんだよ」


最初、使用人達はアタクチに向かって喋る下僕と下僕2番を微笑ましく見ていた。アタクチはミャオミャオと鈴のような声で鳴いているだけに見えるものね。

でも、下僕と下僕2番がアタクチと会話できると知ってからは、尊敬と羨望のまなざしでアタクチ達を見ているわ。


「ちょっとぉ、あんた達は結婚するんでしょ? なんでこんなの他の奴らが送ってくんのよ!」


「私とヴィクトリアの婚約は成立したばかりだからね。だから、知らない輩がこうやって送ってきているのさ。中には知ってて送ってくる図々しいのもいるが。大丈夫、ちゃんと名前は控えているから」


「ふぅん、じゃあこれ名前控えたらもういらないのよね?」


「あぁ、捨てるだけだ」


「じゃあ、暖炉に火を起こしなさい」


「?? 分かった。ジョゼフィーヌが言うなら」


下僕2番のこういうところ好きよ。何をするのかを聞かず、自ら暖炉に火を起こそうとして側にいた執事が慌てて代わりにやっている。この執事もイイおやつくれるのよ。加齢臭もしないし、下僕5番くらいにしてやってもいいわ。


「ちょっとぉ、ボスカラス! いるんでしょ!」


「ほんと朝カァらお前、うるっせぇなァ」


暖炉に火がつくまでにアタクチは窓を開けてボスカラスを呼ぶ。奴は文句を言いながらすぐにスィーとやってきた。


「あんた、ヤギ連れてきて」


「なんでヤギィ?」


ボスカラスは部屋の中を見て悟ったようだ。


「面白そうだァ。オレも手伝うぜェ」


「いいからさっさとヤギ連れてきなさいよ。あいつら紙食べるでしょ。こんなくだらないツリショ、ヤギのフンと煤にしてやるわ。なんならヤギのフンを送り返してやるわ」


「ちょっと待てェ。仲間に連れてくるように言うぜェ」


ヤギが来るまでの間、アタクチとボスカラスはキックでツリショとやらを暖炉に入れていた。


シュバッ

シュパッ


意外と楽しいわ。蹴ったツリショが綺麗な弧を描いて暖炉の火の中に吸い込まれる様は美しい。アタクチ、美しいものが好きよ。


「ジョゼフィーヌ様、かっこいいわぁ」

「美しいおみ足であのケリ、すごいわ!」

「あのカラスさんもいいキックねぇ」


アタクチがケリで暖炉にツリショをシュートするたびに、使用人達が側で拍手してくれるので良い気分だ。なぜかボスカラスまで一緒にいるのに使用人達も下僕2番も突っ込まないのが凄い。普通に溶け込んでいる。


「お、ヤギきたぜェ」


「ねぇ、鷹がヤギを運んでない?」


「あぁ、公爵家の門をヤギが通れるか分からなカァったしなァ。空輸だァ」


鷹はすごい速度で部屋に入ってきて、足で掴んでいたヤギを下ろす。そしてビシッとボスカラスに敬礼する。

ヤギは最初ポカンとしていたが、紙の山を見ると喜んで食べ始めた。


「ジョゼフィーヌの友達は凄いな」


下僕2番が感心している。いや、凄いなの前に鷹とかいろいろツッコミどころはあるでしょ。ヤギはアタクチが連れて来いって言ったけど。


「なんだァ? ヤギは帰りも鷹が連れて帰るから安心しろォ」


「ふん。じゃあいいわ」


鷹はアタクチに敬意を払うように羽を大きく広げて身をかがめた。使用人達がその姿にどよめく。良い気分である。


「ジョゼフィーヌはさすが神獣だな」


「アタクチはシンジューじゃないわ。ジョゼフィーヌよ」


「本に出てくる神獣にそっくりだったとヴィクトリアが言っていたぞ?」


「アタクチはシンジューなんて知らなくってよ」


下僕2番とそんな会話をしていると、廊下が騒がしくなった。下僕2番が様子を見に部屋から出る。


「神獣様! どうかうちの孫に祝福を!!」


なによ、あのダミ声。うるっさいわね!


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