18
いつもお読みいただきありがとうございます!
大粒の雨を受けながらぬかるんだ地面を蹴ってキアランのところへ急ぐ。
この姿じゃ遅いわね!
目の前が白い光に包まれると、アタクチの視線は高くなった。神獣の大きさに戻って地面を強く蹴る。見えてるのになかなか到着できないのはもどかしい。
ユーインについていたはずの護衛の人数はかなり減っていた。倒れている護衛たちを飛び越え、兵士を踏みつけ噛みつく。あとは放り投げる。
いきなり大きな白い神獣が襲ってきたら怖いのは分かるんだけど、この高貴なるアタクチを目の前にして、その情けない表情は敵ながらどうなのかと思うわ。
「他の護衛は?」
アタクチがすべての兵士を地面に伏せたのは、キアランの背中を守っていた護衛が倒れた後だった。
キアランが周囲を見回して首を振る。
「これってクーデター?」
「そのようです……しかし、雨季でもないのにこの雨とは……」
地面はひどくぬかるみ、小さな小さな川のように流れができている場所もある。
「じゃあ、あそこまで走るわよ。背中に乗りなさい」
キアランが乗りやすいように体を傾ける。毛が引っ張られて痛いが、そんな場合ではない。
ぬかるんだ地面に足を取られながら目的の丘までなんとか登った。
眼下にはひどくなった雨で排水や吸収の追いついていない地面。遠くで避難する人々が見える。
相変わらず城の中で水は吹き上がり続けているが、勢いは最初より幾分か落ち着いている。オボロが抵抗しているせいかもしれない。
キアランがぐったりしたユーインを大樹によりかからせるように座らせる。
二人に治癒をかけたが、相変わらずユーインにはかからない。
「こいつ、治癒を拒絶するんだけど」
仕方ないので、治癒は諦めて二人の濡れた服をさっと乾かして火をおこした。
相手が意識のない状態でも治癒を拒絶すれば、いくら神獣でも治すことはできない。
「もしかしたら、陛下はずっと死にたかったのかもしれません」
キアランは周囲を見回し、追手が丘に近付いてこないのを確認するとユーインの隣に腰を下ろした。
「神獣様を城に招いたのも、このクーデターも。何もかも陛下の思い通りなのかもしれません」
「そんなことは、ない」
意識がないと思っていたユーインの声がした。
「陛下!」
「キアラン、今、どんな状況だ?」
ユーインの声は弱弱しい。
「大臣によるクーデターが起きましたが、神獣様のおかげで丘の上に避難できました」
「雨が、降っているのか?」
「はい」
ユーインは光も目で感じられないらしく、耳を澄ますようにぼんやりと周囲を見回した。
「陛下。神獣様の治癒を受けてください」
「あの日もこんな雨だったなぁ、キアラン」
ユーインは人の話を聞いているのかいないのか、全く返答をしない。
「それにここは……あの場所か?」
「はい。神獣様がここに運んでくださいました」
「そうか。神獣によってここに導かれるのか」
ユーインは誰かを探すように首を動かす。
アタクチはユーインの足に手を置いた。
「あぁ、そこにいたのか。神獣。ありがとう。俺を、最後にここに連れて来てくれて」
こいつってやっぱりメンドクサイ男よね。




