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いつもお読みいただきありがとうございます!

「どうした? おやつか?」


すりすりすりすりすり

アタクチは座っている男の服に体をすりつける。


「仕方ないな。内緒だぞ」


むふふふふふ。それでいいのよ、下僕2番。

この表情筋が死んでる男は下僕の義兄よ。アタクチの下僕2番。

下僕がオーヒになるからって、コウケイシャにするためにブンケから迎えたんですって。ブンケの中から優秀なのを選んだそうよ。

綺麗な顔してるのに、ほとんど笑わないのよね。でも、アタクチの前では別よ。やはりこの美しすぎるアタクチの前ではこの下僕2番、よく微笑むのよ。


献上されたおやつをしっかり食して腹ごしらえは万全。

さぁ、下僕2番ついてきなさい!


「どうした? 何かあるのか?」


もう! さっさとしなさいよ!! 高貴なるアタクチが誘っているんだからすぐに来なさいよ! アタクチにその服の裾を噛んで引っ張れとでも!?


「分かった分かった」


降参するように手にしていた書類を置いて、下僕2番が立ち上がる。ふぅ、おっそいのよ。さぁ、下僕の部屋に行くわよ。ガクエンから帰ってくる頃なんだから。ほんと世話が焼ける。


「ヴィクトリア、どうしたんだ?」


「あ、お義兄様……」


ふぅ、ちゃんと鉢合わせできたわね。

てゆーか、下僕! 朝より酷い顔じゃないのよ! どうしたってのよ! ちゃんとメイクしてんの!? ゾンビよ! ゾンビ! 死んでんの!?


「酷い顔色だ。どうしたんだ? 何かあったのか?」


下僕2番が下僕の体を支える。下僕もいつもより近い距離に戸惑いながらも、しんどいのか身を任せている。

そうよ、下僕2番。頑張りなさい。アタクチは先に部屋に入るわよ。お気に入りのクッションの上で高みの見物といくわ。


あれから下僕は下僕2番の胸でしこたまメソメソ泣いていた。でも、泣いている理由は言わなかった。

全く、あの下僕。変なところで頑固なんだから!!

でも大丈夫。下僕2番は優秀だもの。ほら、下僕が泣き疲れて眠ったらなんか考え込んでるわ。下僕2番は何かを決心したように立ち上がると、下僕の頬に愛おしそうにキスをする。


ちょっとぉ、アタクチ見てるんですけど? アタクチの前でラブシーン?

目を細めていると、下僕2番はアタクチに向かってシーっと唇に人差し指を当てる。

ふん、あんたが下僕のこと好きだってアタクチはとっくの昔から知ってんのよ。青いのよ。まぁ、黙ってろって言うならおやつで手を打ってあげるわ。あと猫じゃらし30分よ。


それから下僕2番はいろいろ調べたようだ。

なんだかウキウキ嬉しそうにしているし、加齢臭親父と話し合いをしている時間も長くなった。

アタクチ、バカな猫ではないからおやつと猫じゃらしはもう少し待ってあげても良くってよ? てゆーか、早くしなさいよ。ちゃっちゃと。



朝から下僕がえらくめかしこんでいる。アタクチも一緒にお風呂に入れられた。


「ジョゼフィーヌはいつも綺麗ね」


下僕が分かりきったことを言う。アタクチが美しいのは太陽が東から登るのと同じくらい当たり前だわ。

侍女とかいう下僕に丁寧に毛を拭かれ、ブラッシングされる。はぁ、気持ちいい。苦しゅうない。


下僕もマッサージされて、化粧されてドレスを着せられている。なるほど、今日は卒業パーチィだ。


「どのアクセサリーがいいかしら」

「お嬢様、こちらは?」

「それは髪型に合わないわ」


侍女達がワラワラとアクセサリーで悩んでいる。何やってんだか。揃いも揃って使えないわねぇ。仕方ないなぁ。


「あ、ジョゼフィーヌ様。いけません」


ぴょんとアタクチは華麗にジャンプする。そこのお前、アタクチに命令するなんて百万年早くってよ。アタクチはとあるアクセサリーが入っている箱の前で優雅に足を止め、ポンポンと手を置く。


「まぁ! ジョゼフィーヌ様がアクセサリーを選んでくださったわ」

「あら、このお色のものがあったのね! 忘れていたわ!」

「ヴィクトリア様にお持ちして」


アタクチが選んだのは下僕2番の目と同じ色の宝石を使ったものだ。

あの下僕2番の目、アタクチは気に入っている。だって今日の下僕のエスコートは下僕2番ですもの。第一オージは見事にすっぽかしやがったわ。ちなみに、まだ第一オージとコンヤク中とか気にしない、気にしない。ん? コンニャク中だっけ? コンヤク中? どっち?


侍女達と一緒に卒業パーチィに行く下僕と下僕2番を見送る。

うん、いいじゃないいいじゃない。お似合いよ。下僕は珍しく柔らかい笑顔だし、下僕2番もうっすら笑っていて色気がある。侍女が当てられて何人か倒れかけている。ふん、あんた達、根性が足りなくってよ!


下僕と下僕2番からしこたまナデナデされて、部屋に戻る。

果報は寝て待てって言うもの。下僕がパーチィから帰ってくるのを待ちましょう。


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