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「シャータル?」
「シャンタル!」
「ゲヘゲヘッ。神獣様、三歳相手にそんなムキにならなくても……」
後ろでゲヘゲヘプリンが何か言っているが、アタクチは無視してベッドに軽やかに飛び乗る。というかプリンって名前可愛すぎない? 名前と言葉遣いとか見た目が合ってなくない?
「マンマァ」
シャルルはまた涙をぽろぽろこぼしながら、アタクチに手を伸ばしてくる。ガキに乱暴に扱われたらアタクチの毛並みが乱れるし、毛が抜けるからシャーっと威嚇した。
「ひっ! えぐっ」
シャルルはびっくりして手を引っ込めたが、涙は止まらない。
「あんた、ママに会いたいわけ?」
「う、うん」
ガキはバカだから助かるわ。大人だったら「ネコが喋った!?」とかってしばらくうるさいもの。時間がないしね。
「じゃあ頑張ってコーシャクになりなさい。それで、この家を乗っ取ってママを迎えに行くのよ」
「ゲヘゲヘッ。コーシャクになったら別に乗っ取らなくても……」
「ママ? このおうち、くる?」
「シャルル。ママはあんたを迎えに来たけど、追い返されたわ。だから、あんたがママを迎えに行くのよ。アイシャのためならアタクチの力を貸してやっても良いわよ」
「サータルもおうち、くる?」
ふぅん。このガキ、アタクチのことちゃんと覚えてたのね。
「ママがこのおうちに来るなら、アタクチも来てあげても良いわ。あんたのママはアタクチの大切な……」
大切な、なんだろう? 下僕? 下僕って言ってもきっとこのガキには通じないわね。
「あんたのママはアタクチの友達なのよ。だから早くママを迎えに行けるように頑張りなさい。勉強とか」
「うんっ!」
「ママを迎えに行くのはアタクチとあんたとの秘密よ」
「ひみちゅ?」
「誰にも言ってはいけないわ。プリンはいいわよ。でもこのおうちの誰にも言ってもダメよ。いいわね?」
祝福を与えたからといってもアイシャはなるべく危険にさらさない方が良い。もしかしたら、コーシャクはもう一人産ませるつもりかもしれないわね。それか、他にも妾がいるか。
「わかった!」
「じゃあ、約束よ。手を出しなさい」
シャルルは元気よく手を出す。さっきまで泣いていたのにもう笑っている。ガキというのは本当によく分からない。
アタクチは先ほどアイシャにしたのと同じように、シャルルの手の甲に鼻を当てた。
虹色に輝く紋章を見てシャルルは歓声を上げかけて、ハッと口を噤む。
「もうすぐそれは見えなくなるわ。じゃああんた、頑張りなさいよ。また来るから」
シャルルが元気に頷くのを見て、アタクチはベッドから下りる。
「プリン。あんたとエイダンでシャルルのことお願いね。アタクチは神力が切れるからもう戻るわ」
「ゲヘゲヘッ! はい、神獣様。あっしらにお任せください。緊急事態が起こった時はどうしますかい?」
「あんた達がそばにいるならシャルルの手の甲に触ったらいいわ。シャルルしかいなかったら強くアタクチに願うしかないわね」
アタクチは神の庭に戻った後、泉に近付いてしまったことで謹慎処分を受けた。




