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第二章スタートです!週に2、3話更新していきます~。
恋の季節がやって来た。ネコの。
独特な鳴き声が屋敷の外から聞こえる。アタクチには関係ないけど。
「うるっさいわね!! アタクチ、あんた達みたいなネコに尻尾振るほど安いネコじゃないのよ!!」
あまりの鳴き声にアタクチは塀の向こうに叫ぶ。
たまに塀に登ってアタクチにアプローチしてくるオスネコもいて本当にうざったい。
ハリネズミはそんなネコ達に向かってやり投げよろしく針を投げ、カラスやモモンガは物を落として嫌がらせをし、観客のネズミ達は野次を飛ばす。アタクチの屋敷の庭はそんなカオスな状況であった。
ちなみにモモンガはオーヒのペット時代に撫でられまくったストレスで喋れないらしい。ああいう人間ってペット飼ったら駄目よね。
そして屋敷の中は――
鏡の前でソワソワソワソワ。髪を撫でつけたり、1回転してみたりと下僕が挙動不審である。
「あんた、さっきから何百回鏡をみてるのよ」
「だ、だって……これからお義兄さまとデートだから」
イスに座ったと思えばすぐに鏡の前で自分の姿をチェックする下僕に呆れ、アタクチは声をかける。
「いつまでオニータマなんて呼んでんの! もうコンヤクシャでしょうが! 名前で呼びなさいよ!」
屋敷の中でも外でも恋の季節である。
「慣れなくて……」
「シャラップ! そんだけ部屋の空気を桃色にしといて何言ってんの! 第一オージの時はそんなに鏡も見てなかったでしょ! 結婚式も控えてるんだし落ち着きなさいよ!」
「う、うん。ジョゼフィーヌ、ありがとう」
「いいこと、アタクチの下僕。あんたはこの高貴なるアタクチの下僕なのよ。この前のパーチィで何言われたのか知らないけど、自信のなさそうな真似だけは許さないわ」
とあるパーチィから帰って来た下僕の様子が何となくおかしかったことから、アタクチはお見通しなのだ。どうせ第一オージにコンニャクハキされたこととか言われたんでしょーよ。
全く、美しくない女ほど過去を引っ張り出すのよね。過去に縋るんだったかしら。あら、このセリフどこかで聞いたわ。どこだったかしら?
下僕は驚いたように目を瞬かせる。
「ジョゼフィーヌは色んなところに目があるの?」
「ふふん。高貴なるアタクチに分からないことはないのよ」
下僕2番が迎えに来て二人はデートへと出かけて行った。下僕達って同じ屋敷に住んでるのに、下僕2番はわざわざ迎えに来るとか律儀よね。
アタクチは欠伸をしてから思いっきり伸びをする。最近よく夢を見る。起きたら夢の内容は覚えていない。そのせいでなんだか寝不足だ。
「ゼノン、下僕達が帰ってきたら起こしなさい」
「お前ェ、オレを目覚ましにするとはいい度胸だァ」
「いいじゃない。眠いのよ」
ふわぁとアタクチはまた欠伸をして、お気に入りのふかふかクッションの上に丸くなる。
「ったくゥ。この傲慢ネコォ」
ゼノンはブツブツと窓の側で文句を垂れていたが、アタクチはすぐ眠ってしまった。




