16
いつもお読みいただきありがとうございます!
「おい、騎士達だァ。人数が多いから逃げるぞォ」
テンションが上がってるアタクチに水を差すんじゃないわよ。今、アタクチはモーレツに楽しんでいるのよ。
「何言ってんの。人間相手に高貴なるアタクチが尻尾巻いて逃げるなんて許さなくってよ。たとえ神が許そうとこのアタクチが許さないわ!」
「おぉいィ!? そーいうとこだぞォ! この傲慢ネコォォォ!!」
ゼノンの叫びと共に部屋に強い風が吹いて、落ちた枕の羽根が舞い上がる。
「なんで今ァ!?」
外からかかっていた鍵を壊して騎士達が部屋になだれ込むと、そこにはカァカァ狂ったように叫ぶカラスと……尻尾の数が12の大きなネコがいた。第一オージは巻き起こった風により蹲ってせき込んでいる。
「でかいネコ?」
「いや、神獣様だろ」
「え、ほんとに? やばくね?」
騎士達が顔を見合わせて相談し、再度前を向いたところで眼前にはフサフサの尻尾が迫っていた。騎士達は一人を残してなす術もなく吹っ飛ぶ。
「思ったより吹っ飛んだわね~。大きい体も便利ね」
尻尾をばっさばっさと振る。
自由自在だわ~。視界にアタクチのフサフサ尻尾が何本も映るっていいわね。
あ、忘れてたわ。アタクチはわざと残した騎士に命令する。
「あんた、突っ立ってないでコクオーとオーヒを呼んできなさい。こいつのセーゾーセキニンシャよ」
「コクオーは無理かもなァ」
「なんならどっちかで良いわよ。というかこの姿になると人間にも言葉が通じるのね」
「いや、この姿って……順応しすぎだろォ。ちょっとは疑問持てよォ」
「高貴で美しいアタクチは変身もできるのよ!」
「そんなご都合主義あるわけないだろうガァ! ふざけんなァ!」
騎士が戻るまで待っている間、暇なのでベッドの上で跳ねる。う~ん、やっぱりアタクチこんな硬さのベッドは嫌だわ。ムカつくからベッド引っ掻いとこ。
というか第一オージ、いつまでせき込んでくしゃみ止まらなくて鼻水ズルズルなのよ。汚いわね。アタクチに菓子折りでも出しなさい。
「一体どういうことなの!?」
おえー、なんかケバイ女が来たわ。ケバ過ぎてうっかり吐きそうになったわ。
年齢考えて化粧なさいよ。塗ればいいってもんじゃないわ。これがオーヒね。
「ケヴィンのところにはまたハチが来ているし! どうしたのよ、この部屋は!」
ケヴィンって誰よ。あぁ、第二オージね。蜂にだけはモテて良かったじゃないの。
ちなみに第一オージの部屋はカーテンがボロボロ、枕とベッドの中身が飛び出し、調度品は床に割れ散り、本は散乱している。アタクチの運動会の成果である。
「イヴァン! それに何? 私はもっと小さくて白くて美しいネコを連れてこいと言ったはずよ!? こんなに大きくて不気味な尻尾のネコなら要らないわ。大体、神獣なんてただの迷信でしょう!? カラスを従えたネコなんて余計不気味よ!」
ハァー? このババア、この美しいアタクチのことをなんつった? 大きさが変わろうと、尻尾の数が増えようとアタクチの美しさは変わらないわよ! シンジューとか関係ないわ! あと、カラスを従えて何が問題なのよ!
オーヒがおそらく第一オージの名前を呼びながら部屋に入ってこようとしたところで―
見事にすっ転んだ。それはもう見事に顔からいった。
第一章もそろそろ終わりです~。




