第一章 9話 父との約束
「失礼します」
「よおエリド、まぁ座れや」
「は、はい」
「そう固くなるなグリズリーベアじゃないんだから」
ギルドマスターは緊張を解そうと自分が熊のようなことをわかっていてグリズリーベアといっているのだろう。
正直反応に困る。
でも冗談を言えるあたりそこまで堅い人ではないのだろう。
「それ色んな人に言ってませんか?」
「なに?俺の緊張を解す鉄板ネタがバレただと?」
「正直、大半の冒険者は反応に困ると思います」
「そうか…」
今までこれでやってきた故に事実を教えられて少し落ち込んでしまった。
「それでなんで僕は呼ばれたんですか?」
「おぉそうだったな。じゃあ伝えることが2つある」
「2つですか?」
1つはゴブリンの依頼の報酬額のことだろう。
もう1つはなんだ?
「まず1つが報酬のことだが、あの武器を持ったゴブリンを退治してくれたこともありがたいが1番は装備を持って帰ってくれたことだ。 その装備を持っていた冒険者の親がそこそこの商人達でな、なんとしても探し出せとうるさくてな」
「でもすでにいい武器をもったゴブリンがいたのはわかっていましたよね?」
「あぁ、しかしその商人達がそれは違うやつのだ自分の息子達は生きているはずだからもっと捜索範囲を広げろって言ってきやがった」
「なるほどそれで…あ、でも装備全部換金するために渡しちゃいました」
「それでも構わねぇよ。ダンジョンで拾ったものは拾ったもんの物だ。相手方にもそれは伝えている。頑なに生きてるって言ってたがな…」
「それは助かります」
「あのゴブリン達のせいでこっちもなにかと面倒を被ったからな。あの装備はそれなりの値段で商人に売るから値段には期待しとけ。見たら自分の息子達のものだってわかるだろ。それなりの商人なら金はあるだろうし」
「ありがとうございます。 それでもう1つはなんでしょうか?」
「いや、まだ報酬の話は終わってない。 でももう1つ追加の話でもあるか…」
「そういえばゴブリンを多く倒したにしても小金貨3枚は多かったですね」
「それについてだが………すまなかった」
ギルドマスターは16歳のガキに向かって頭を下げた。
「あ、頭を上げてください! どうして謝っているんですか?」
「セッタの件だ」
「あの件と今回がどう関わりが?」
「セッタだが、いろいろ調査をしててなすぐに捕まえることができなくてな、黒とわかったときにはあいつを見つけることができなかったんだ。 それでエリドお前を利用した。セッタは異常にエリドのことを目の敵にしてたからな。その詫びとして報酬額を増やした。」
「なるほど、しかし目の敵にされるほどのことをしましたかね」
「聞いたぞ、酔っ払ったセッタを転がして笑いものにしたそうじゃないか」
「いや、あれだけでそこまでしますか?!」
「そう、そこなんだ…この際あいつのことを徹底的に調べたらどんどん余罪が出てきた。人攫い、窃盗、強姦、殺人まで」
「クソ野郎ですね」
「あぁクソ野郎だそのくせ犯罪の隠蔽や身を隠すのが上手いときた。しかし、そこまでの男がお前を貶めるためにわざわざ目立つようなことをするか?」
「たしかに不自然ですね」
「まぁそこは俺の仕事だ、まだ調べてる最中だからな。そう言った経緯でエリド、すまなかった」
そう言ってギルドマスターは再度頭を下げた
「や、やめてください。それでセッタが捕まったことで俺も過ごしやすくなったんですから、こちらがお礼を言いたいぐらいです」
「そう言ってくれると助かる。ただエイドとの約束を破りかねなかったからな…」
「お父さんが?」
なぜここで父の名前が?
「あぁ、数年前お前の親父さん、エイドに頼まれたんだ」
「なにをですか?」
「エリドをよろしく頼むってな」
「それだけですか?」
「それだけだ」
「大雑把ですね」
「でもエイドらしいといえばエイドらしいがな」
「そうですね。お父さんは戦闘以外は基本雑でしたからね」
そう言って俺は笑った。
「笑った顔は母親似だな、戦ってるときはエイド似だったが」
「え?見てたんですか?」
「あぁ危なくなったらすぐに助けるつもりだったが無駄に終わったけどな」
いや、早く止めてくれよ。約束どこにいったんだ。
「それでだ、頼まれていたからよくエリドのことは聞いていたが、なんであんな動きができた?」
やっぱりギルドマスターのような人では体術を鍛えている、だけでは誤魔化せそうにないな。
「お父さんの知り合いだけじゃなく隠せそうにもないので正直に言いますが、言いふらしたいとも思ってないのでお願いしますね」
「あぁわかった」
それからスキル【レベル還元】のことと冒険者になってこれまでの出来事を伝えた。
「ほぉ…それはなんというか、すごいな」
ギルドマスターも驚いて語彙力がなくなっている。
「はい。僕はこれでいつかお父さんを越えたいと思っています」
「そうか……」
ギルドマスターは俯きながら呟くように言った。
「お父さんを探すのも俺の1つの目標ではありますからね」
「エイド…息子がこんな苦しんでいたのにあいつはどこでなにやってんだか…」
そう俺の父は14歳になったころから会っていない。
父は冒険者のため、たまに依頼を受けに村を出て数週間、もしくは1ヶ月帰ってこないことは度々あった。どんなに長くても2ヶ月で帰ってきたが。しかし14歳になってすぐのとき、村に格式の高そうな服を包んだ人が来て、父と話したあと、父が今回は長くなると言って家を出て行ってしまった。
それから1年たっても帰ってこず、俺は15歳になり、冒険者になった。それから1年たったが噂もなにも聞かない。冒険者が1年も連絡がなければ行方不明扱いとなる。ほとんどが死亡として捉えられている。
母はきっとどこかで生きている。お父さんが死ぬわけがないと信じていたため、俺もそう信じている。実際父に修行してもらっていて、今だからこそわかるが父は恐ろしく強いだろう。といっても全力で戦っている姿を見たことはないが。
「いいんですよ、そういう自由な姿に憧れて冒険者になったんですから」
「憧れか…あいつの自由はちょっと普通の枠じゃ収まらない気がするが…」
そう言ってギルドマスターと父の昔話などで話が盛り上がり色々な話をした。
「お、もうこんな時間か…長いこと付き合ってもらって悪いな」
「いえ、僕も父の若い頃の話が聞けて楽しかったです」
俺は父にこんなところに行ったや、こんなものを食べたと言った話しか聞いておらず、他は殆ど修行だったため父の若い頃を聞いたことがなかった。
「あ、あとできればいいんですがもしゴブリンの依頼があれば斡旋していただいてもいいですか?」
「約束つっても1人の冒険者に肩入れしすぎるのもちょっとな…」
「でもセッタに襲われたとき見てましたよね?あれは約束を破っていたと言ってもおかしくないような?」
俺は笑顔でギルドマスターに言った。
「ハッ!お前も言うようになったじゃねぇか! わかったよ、詫びとしてゴブリンの依頼は置いといてやるよ。といってもあんだけ倒したんだったら数日はないぞ」
「それで構いません。よろしくお願いします」
そう言って俺は部屋を出ようとした。
「あ、ちょっと待て。今思い出した。数年前、エリドを頼まれたときにどこにいくか聞いたが東にいくって言ってたぞ」
「東ですか…ありがとうございます。もっと強くなったら東に行こうと思います」
そう言って部屋を出ていった。
東か…東で有名なものとしたらユーラシア帝国か…。
てか東ってどこまでだよ。雑にも程があるだろ。
まさかギルドマスターが父と知り合いだったとは、どうりで俺の名前を知っていたわけか。
とりあえずキャミーさんのところに行くか。
「すみません、ずいぶん待たせてしまいました」
「いえ、連絡が来ていたので構いません。これが装備を買い取った額です」
そういってキャミーさんは中金貨6枚を取り出した。
「ハハハ、中金貨6枚か…」
期待しておけと言われていたが思わず笑ってしまった。カルアさんの宿が1ヶ月の値段が中金貨2枚と銀貨2枚で考えたら、約3ヶ月分ももらえたこととなる。
「では僕の口座に入れといてもらってもいいですか?これがギルドカードです」
「かしこまりました。入金しておきます」
ギルドはお金の管理もしているため、ギルドカードさえあればどのギルドでも引き落とすことができる。
さて、帰るか。
ギルドマスターと話をして、目標を再確認できたこともあり明日からもっと気合を入れようと意気込みながら歩いていった。
ただカルアさんが心配しない程度にしないと。
ゴブリン退治した結果載せときます。
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エリド
Lv16
HP 560/560
MP 40/40
攻撃力 140
防御力 140
魔力 16
素早さ 132
幸運 6
スキル SP15
【レベル還元】
素早さアップ レベル2
攻撃力アップ レベル2
HPアップ レベル2
防御力アップ レベル2
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