第一章 1話スキルの真髄
「ふぅ…今日はこのくらいにするか」
おれは軽く息を整えててから、手に待っている刀を腰にぶら下がっている鞘にしまった。
周りには緑色の肌をしたゴブリン三体が倒れている。
ゴブリンは青い粒子となって消滅していく。
すると頭の中でいつぶりかのトランペットのようなリズミカルな音が流れる。
「お!レベル上がったか!」
久しく聞くレベルアップした音に心を躍らせる。
「ステータスオープン!」
そう俺が言うと目の前に青色の板が映し出される。
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エリド
レベル20
HP 150/200
MP 50/50
攻撃力 50
防御力 50
魔力 20
素早さ 50
幸運 10
スキル SP10
【レベル還元】
素早さアップ レベル1
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レベル20
多くの冒険者がいるこの世の中でこの数字は恐ろしく低く、冒険者になって少したてば辿り着ける。
「レベルが上がった音聞くのはいつぶりだろ」
本来このLvなど冒険者となれば2ヶ月でなることができる。
実際のところ、冒険者となり、基礎的なことを学ぶため講習など先輩冒険者たちに付き添ってもらいノウハウを教えてもらうため時間がかかるのであって、その講習を抜きにしたら一ヶ月もかからない。
ではなぜ俺がこんなレベルにいるのかって?
それはこいつのせいだ。
【レベル還元】
レベルを還元するかわりにスキルレベルを上げることができる。
必要経験値が10倍となる。
最初このスキルを手に入れた時は驚きのあまり体が震えた。
レベルを上げることよりもスキルレベルを上げることが非常に大変であるからだ。
1レベル上がるごとにSPが1ポイントしかもらえず、スキル取得に10ポイントも使い、さらにスキルレベルを1から2に上げるだけで50ポイントも消費するからである。
スキルの取得はそれほど大変ではないがスキルレベル1ではどのスキルも恩恵が少ないためスキルレベルを上げることが大事になってくる。
しかし、この必要経験値10倍、こいつが俺がこの一年頑張ってきたのに20レベルしか上がらない原因だ。
レベル1からレベル2に上がるのにスライムをだいたい5体倒せば上がるがこいつのせいでおれは50体倒さなければいけない。
パーティーを組むと経験値が分散されてしまうがやはり安全にかつ人数もいるため効率的にレベリングが可能になる。
だが、この必要経験値10倍のせいで周りが上がっていく中で俺一人だけ圧倒的にレベルが上がらなくなる。
冒険者になりたてのころパーティーを組んでいたが、俺以外が上がり、俺だけレベルが上がらない状況になった。
パーティーを組んでいた奴らは性格のいい奴らだったから手伝ってくれたが低ランクの魔物を倒したところで貰える経験値もほとんど少なくかつ経験値も分散される、しかも手伝ってもらっているおれはレベルが全然上がらないという悪循環に陥ってしまった。
それでも俺がレベル2になるまで付き合ってくれた。
本当に絶望したのはそれからだった。
ここまで苦労してレベル2になりレベル還元を使いスキル【レベル還元】のスキルレベルを上げればなにか変化があるのではと思い、スキルを使った。
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エリド
レベル1
HP 10/10
MP 0/0
攻撃力 5
防御力 5
魔力 1
素早さ 2
幸運 1
スキル SP1
【レベル還元】
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「なっ……なんでだよ!」
おれは思わずステータスを見て叫んでしまった。
パーティーの仲間がおれのステータスを見たときの顔は今でも覚えている。
そのあとパーティーの仲間に励まされてた気がする。
おれは唯一の希望でもあったため、あまりにも残酷な結果に絶望していた。
そのため、周りの声はあまり耳に入ってこなかった。
おれの落ち込み具合に同情したのかパーティーのみんなが手伝ってくれると言っていたが、あまりのショックとここまで頑張って手伝ってくれたパーティーのみんなに申し訳ない気持ちで断った。
それから何日かそのパーティーには誘われたが
足を引っ張るから断ったが、それでも誘ってきた。
逆にその優しさがおれの心を締め付けた。
おれも憧れていた冒険者となったが、憧れ、ずっと夢に見ていたからこそパーティーに入って足を引っ張り続ける現実を受け入れがたかった。
それ以来おれはずっとソロで活動している。
「あいつらは今頃はそこそこにレベル上げて頑張ってるんだろうな…」
羨ましい気持ちと半分と応援する気持ち半分で独り言を呟いた。
「とりあえず帰るか」
スキルを取得することを楽しみにしながら帰ることにした。
「さて、スキル取得するか!」
宿につき体を拭き食事を終わらせた後、ステータスを表示しスキル取得欄を開いた。
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HPアップ・MPアップ・魔力アップ・攻撃力アップ・防御力アップ・素早さアップ・火属性魔法・風属性魔法………
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スキル取得欄には多くのスキルが表示されている。
レベルが低いうちは基礎的なものしかなく。
レベルが上がればさらに強いスキルが表示されるようになる。
中には条件を満たさない限り表示されないものもあるらしい。
レベルの低いおれには確認のしようがないことのため考えないでおく。
その多くあるスキルの中からおれは迷わずに攻撃力アップのスキルを選び取得する。
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[攻撃力アップ]
攻撃力が10上がる
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レベルが上がりにくい俺は、スキルを取得できるようになったら何を取ろうかと未来のことを想像することにより、レベルがなかなか上がらない中でもレベリングするモチベーションを維持していた。
そして、ソロで活動するため、どうしても危険がつきまとう。
慎重に行動しなければいけないため敵を倒すことよりも、極力攻撃に当たらないことを念頭に置いた。
そのせいもあり、一回の戦闘に時間がかかってしまうが死んでしまえば何も意味がないためレベルが10のときに攻撃力アップよりも先に素早さアップを取得した。
え?レベル1あがればSP1だから10レベルじゃおかしいって?
初めて【レベル還元】のスキルを使ったときにショックのあまり軽く鬱になって引きこもってたときに、なんとなくステータスを見たんだよ。
よく見たら…
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エリド
レベル1
HP 10/10
MP 0/0
攻撃力 5
防御力 5
魔力 1
素早さ 2
幸運 1
スキル SP1
【スキル還元】
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「あれ?SP1…?」
そのときに気づいたんだよ
たしかに苦労してレベルを上げて1に戻ってしまったがレベルが上がればSPをもらえていることに。
思っていたスタートをきれなかったがもしかしたらなんとかなるんじゃないか?って思った。
ショックで鬱になっていたこともあったがやっぱりずっと憧れてた冒険者の夢を捨てきれずにいた俺にはたったそのSP1が希望だった。
そこでレベル10になったときに素早さアップを取得した。
SPがあることに気づいてからのおれの行動は早かった。
レベル10までソロで上げるのは時間がかかったがそれでも歯を食いしばって頑張った。
「ここまで長かったな…、レベル10ときにもっと早く気づいてたらここまでかからなかったんだろうな」
そう、レベル9のときに攻撃力アップを取得していれば、【レベル還元】をして攻撃力のステータスを上昇させた状態でレベル1になればすぐに敵を倒しレベルアップしてSPも稼げたんじゃないか?そうすれば時間はかかってもスキルだけ強くなっていきゆくゆくはもっと効率よく強くなれるんじゃないか?と。
たしかに全く考えなかったわけではないが、それでもまたレベルを上げるのに時間がかかるのもあるし、もしもスキルもなくなったらまたあの虚無感を味わんじゃないのかと思ったら怖くて出来なかった。
しかし、レベル20になるまでに約一年もかかってしまった。
このままではいつまでたってもおれはこの底辺から抜け出せないと思い、攻撃力アップを取得したらまた【レベル還元】をしようと心に決めていた。
「ふぅぅぅ……………よし!」
おれは深呼吸するように息を吐き気持ちを落ち着かせ腹を括った。
もしもこれで、スキルもなくなりレベル1になったら…
いや、リスクを恐れてなにもしなくてもおれは底辺にずっと居続けるだけだ!
もう低ランクダンジョンにずっと居続け周りに抜かされていく日々とはおさらばだ!
おれは【レベル還元】のスキルを押した。
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レベルを還元しますか?
はい/いいえ
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そして、震える手で〔はい〕という文字を押した。
『レベルの還元を行います。
レベル19を還元しました。
エリドはレベル1になりました。
レベル20還元しているため、スキルレベル
をあげることができます。』
頭の中で女性の機械的な声が聞こえる
「ん?!スキルレベル?!えっ?!」
前回使ったときとは違う内容であったため、変な声を出してしまった。
『どのスキルのレベルを上げますか?』
おれの驚きなどお構いなしに声は聞いてくる。
驚きながらステータス画面を見る。
スキルの[素早さアップ]と[攻撃力アップ]が点滅していた。
そこから[攻撃力アップ]に触れた。
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[攻撃力アップ]をレベル2にしますか?
はい/いいえ
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おれは迷わずに〔はい〕という文字を押した。
『スキル[攻撃力アップ]をレベル2にします。
完了しました。
スキルレベルをあげることができます。
どのスキルレベルを上げますか?』
「え?!まだ上げれるの?」
おれはまだスキルレベルを上げれることに驚きながら質問した。
しかし、機械的な声からは何も返ってこない。
「ま、まぁとりあえずあげれるならあげるか」
そしておれはもう一度ステータスを見た。
先程[素早さアップ]と[攻撃力アップ]のどちらも点滅していたが[攻撃力アップ]は点滅していなかった。
触れても反応しないため、[素早さアップ]に触れた。
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[素早さアップ]をレベル2にしますか?
はい/いいえ
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また〔はい〕という文字を押した。
『スキル[素早さアップ]をレベル2にします。
完了しました。』
それからは何も聞こえなくなった。
「な、なんで急にスキルレベルを上げれるようになったんだ…」
驚きながらもおれはステータスを表示した。
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主人公
レベル1
HP 10/10
MP 0/0
攻撃力 105
防御力 5
魔力 1
素早さ 102
幸運 1
スキル SP0
【スキル還元】
素早さアップ レベル2
攻撃力アップ レベル2
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「攻撃力105?! 素早さ102?!」
見たことのない数字に見間違いかと思いもう一度見るが、ステータスは先程と同じくはっきりと三桁になっている。
「いや、なんでこんなに上がってるんだよ!
はっ!もしや!」
おれはスキルの[攻撃力アップ]に触れた
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攻撃力アップ レベル2
攻撃力が100上がる
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スキルレベル1から2に上がっただけなのに10倍になっていた。
「こ、こんなに変わるのかよ…」
スキルレベルを2にあげるのにSPが50必要となる。
ということはスキル取得とスキルレベルをあげるのにSPが60いる。
攻撃力アップレベル2にするまでに61レベルにならなければならない。
単純計算ではあるが
20レベルで攻撃力5から50に上がっているということはレベル61の時には攻撃力は152ぐらいになっている。
さらにこのスキルがつくことにより攻撃力252となる。
「す、すごいな40レベル分も攻撃力が上がるのか…」
その代わりに61レベルまで上げたと考えるのであればまぁ納得できなくもない数字である。
「でも攻撃力だけ上がってもバランス悪くないか?………いや……パーティーを組めばいいのか…」
パーティーを組んでパーティー内でどのスキルをとるか話し合い役割分担をすればパーティーの平均レベルが低くてもスキルによって平均レベルよりも高いダンジョンに挑むことが可能になる。そうなればさらにレベルも早く上がりさらにスキルを取得するのいう流れになる。
「なんだよそれ…パーティー組むこと前提じゃねぇか…」
ソロで活動してるおれにはかなりきつい世の中だと感じた。
「でも、今回でわかった。【スキル還元】があれば俺はソロでも冒険者を続けれるし、これでもっと上を目指せるじゃねーか!」
と思ったがそもそもこのスキルがなければソロになることもなかったなと思い思わず苦笑いしてしまった。
いろいろと考えたいこともあったが疲れたため今は寝ることにした。
明日のことは明日の俺に任せよう。
やる気があれば更新します。