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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第三章 感情
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第四十話 志春の最期

「最高神様」


「あら、ガーべラじゃないの」


 目の前には私よりも多くの羽を持つ、天使と神の頂点に君臨する最高神様がいた。


 私よりも真っ白で美しい髪を持ち、私よりも美しいお顔の神様。


 そこには威厳も存在感もあり、時にそれは天使を怖がらせた。


「お久しぶりでございます。最高神様」


「貴方、天使を殺した証の血はどうしたの?」


「ある人により、消していただきました」


「へぇ。その人間、興味深いわね」


「ここへは叶えてほしい願いを持ち、やって参りました」


「急ね。知っているでしょ? ガーべラ。天使ではない、ましては堕ちた天使である貴方の願いは叶えられないわ。残念だけれど」


「私の願いではありません。人間の願いです」


「!」


「私の願いではなく、人の願いなら最高神様は叶えてくださるでしょう。私はその願いを伝えにのみやって参りました」


「人の願いなら聞き入れ、叶えましょう」


「ありがとうございます。願いを叶えてもらいたい者の名は河野水谷。第二の世界で死に、第一の世界へ戻された人です」


「あの世界の子、ね。あの世界はどこで生きていても繰り返される運命に抗うことはできない。そう、死んでも元に戻るのだから」


「あの子は、最初から始めるよりも仲間と一緒に今ある過酷を乗り越えたいと願っております。ですので、彼を第二の世界へ戻してあげてください。これが彼の叶えたい願いです」


「……世界から世界へ人を動かすには天使や神の命が必要よ。貴方にはその覚悟があるのかしら」


「もとよりそのつもりでございます。最高神様」


「ふふ。ガーべラは水谷に出会い、変わったようね。下界へ堕としてよかったわ」


「はい。最高神様のすべきことは全て正しいことでした」


「えぇ。さあ、始めましょう」


 最高神様は大きな羽を羽ばたかせながら立ち上がった。


 その立ち振る舞いは堕ちる前と何一つ変わっていなかった。





「これより、人間、河野水谷の願いを聞き入れよう」


 私の周りに紫色の大きな円が出現した。


 すると……。


「うわぁああああ!」


 堕ちてからなくなり続けている天使の力がその円に吸われ、奪われていく。


 目の前がチカチカして、最高神様が見えない。


「ガーべラ。天使の死は何を意味するか知っているか?」


「……い、え」


「天使の死はその力を失い、人に戻ることだ」


「人に」


「天使の力を失えば、じきにここにいられなくなる。何か残しておきたいことはあるか」


 苦しいけれど、言葉が話せないわけじゃない。


 私は精一杯、自分の言いたいことを話すことにした。


「千年以上前、最高神様はどうして、私の我儘を聞き入れ天使にしてくださったのですかっ」


「前任がそうすべきと私に言ったからよ。前任の言う通り、ガーべラは天使として堕ちたかもしれないけれど最期はこうして、天使の仕事を真っ当した。立派だったわよ」


「はいっ」


「ガーべラがどの世界に生まれ変わるかは分からない。だが、もう第一から第五の世界に生まれ変わらないように私が手配しよう。あの世界は、どこよりも過酷だ」


「ありがとうございます。最初から、最後まで……」


「良いのだ。さ、輪廻の輪に戻れ。志春」


「はい、今までお世話になりました。最高神様!」



 涙が零れた。


 これで私は人間に戻れる。後悔が、これで晴れるんだ。



「さらば」


 その言葉と同時に完全に力が吸われ、地面に大きな穴が空いた。


 私はその穴に落ちた。


「綺麗」


 落ちた先には大きく、ゆっくり回る輪廻の輪が見えた。


 その下には祭りのように騒がしい町が。その町はどこか、私の故郷に似ていた。


「水谷様……」


 私は愛する人を思い浮かべながら、抗えない輪廻の輪の吸引力で輪廻の輪に吸われた。




 来世の私は、どんな私かな。

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