表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第二章 作戦
34/65

第三十三話 残った者達の思いと決意

「河野くん」


「あ、富士宮さん」


「やはり君はこっち側だったんだね」


「まあ。でも、富士宮さんは攻撃とか得意そうですし、選ばれて当然だな」


「いや。自分から志願したんだよ」


「え」


「正確に守るものもなければ、生きる理由もない。それならこれから生き残る国民のために体を張って戦おうかなって。妻も子供も殺されてしまったから仇っていうのもあるけどね」


「そうか。俺と理由は一緒だな」


「河野くんも両親を?」


「あぁ。母親は出現時に死んだ。庭に死骸が転がってて、見るも耐えない姿だった。親父は出現時は生きていたけれど、二日目から連絡が取れなくなったから消息不明。死んでしまっただろう」


「そうか……」


「今、生きている人は家族や親しい人の死を見ても乗り越えて来た人達だ。強い、きっと強い」


「そうだね」


 ここの残っている人は強い。


 心も、体も。


 俺なんかよりも強くて、少なからず何か決意をしている。


 目の前にいる富士宮さんだってそうだ。


 メラメラと瞳の奥が燃えている。仇を取る、体を張って戦おうと決意が出ている。


 なら、俺はどうだ?


 したいこと、仇を取りたいって思っているけれど決意はできてるか?


 死んでもいいって思ってる? 何かを置いて、この世を去れるか?


 きっと……。


「河野くん。一緒にアルファを倒そう」


「おう」


 俺は富士宮さんと別れ、ぼーっと椅子に座り会議が始まるのを待っていた。


「水谷くん」


 すると扉を開け、生見さんが部屋の中に入ってきた。


「早いね。心休まらないのかな?」


「まあ」


 そういえば、生見さんはどうしてこっちに残ったのだろうか。


 俺は生見さんのことを思っている以上に何も知らない。


 知ろうとも、しなかった。


「生見さんは、どうしてここに残ったんだ?」


「……特に意味なんてないよ。ただ、春ちゃん達と一緒に安全な場所に逃げるのは違う気がした。ただそれだけだよ」


「そうか」


「僕は何かを決意することも、何かを守ろうとする思いもないんだよ。薄情な人間で、自分の身が恋しい。誰かのように、水谷くんのように、すぐに決意はできないんだ」


「俺だって、今だに決意が出来ていない。何をしたいかは大体決まっているのに、気持ちが決まらない。本当にこれでいいのか、これが自分の本当の気持ちで間違いないのかずっと確認してる」


「そっか。水谷くんだって人間なんだよね。僕はどこか、水谷くんのことを人ではない何かだと認識していたかもしれないね」


「生見さんよりも生きてる年数が違うから、知ってることだって少ない。世の中知らないことだらけ。それをカバーしてくれたのは生見さんだった。俺からすれば生見さんの方が人ではない何かだったのかもしれないな」


「お互いにお互いの優れた所しか知らないからね。どうしても、そうなっちゃうよ」


 人は弱い。


 脆くて、すぐに壊れてしまう。


 だからこそ、死に抗ってしぶとく生きようとする。


 それが人間の本能かもしれないし、自分の意思かもしれない。


 今の俺は、何が思っていることで何が違うのかよく分かっていない。


 そう、大切なものが離れていったから。


 冷静になる時間が必要なんだ、俺には。


「生見さん。一緒にアルファ、倒そうな」


「うん」


 迎え撃つは大勢の強大な敵。


 隊員は総勢四百名ほど。


 ここから生と死の駆け引きが激しく、激戦になる。





「それでは第三回討伐作戦会議を行います」


 密室には各隊の隊長を任されている人がいた。


 十人ほどで構成された部隊が四十。


 つまりこの部屋には四十人の隊長がいる。


「注意しなければいけない敵は二つ」


 最高司令官である不時さんとその秘書、草壁さんが話を進めていく。


「一つは皆、知っての通り首都に居座っているアルファだ。もう一つは白い羽を生やした女。名を志春という」


「志春の主な武器は刀。素早い突きで心臓を狙い、突き殺そうとしてきます」


「なるほど。羽があるということは空から急にってことも……」


「いや、それはない」


「どうして?」


「夜目が効かないのか知らないが、俺達が下見で遭遇した時は普通に地面を歩いていた。飛べるのであれば地面を歩いているのはおかしいだろ」


「河野君の言う通りだが、念のため注意しておくように!」


「「はっ!」」


「あの……ずっと聞きたかったんですが、その女性? はどなたでしょう……?」


「ああ、河野君と同じ一般の生存者だ。河野君以上に頭が優れるためこちらに残ってもらい作戦について議論することになった。フードをしているのは昔、顔を火傷しているため見られたくないらしい。配慮してやってくれ」


「分かりました」


 小香の設定は俺と同じ生存者で顔を隠している理由としては不時さんの説明通りだ。


 性別のことについては本人の希望で曖昧にしてある。


 不時さんから言われたから誰も何も疑わない。


 疑う要素はあまりないのだ。


「これから対空砲の移動を毎夜行う。トレーニングも怠らぬように」


「「了解!」」


 本格的にアルファ討伐作戦が動き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ