第二十四話 星が輝く夜空
「あれ? 衣月くんどこ行ったの?」
「衣月なら、星を見に行くって張り切ってたぞ。今頃ウキウキで星を見てるだろうな」
「凄い度胸……」
「だろうな。言われた時、俺もビビッた」
笑顔で「星を見に行ってくる!」って報告された俺の身にもなってほしい。
本当に、驚いた。
「水谷くんも行ってくればよかったのに。春ちゃんなら僕が面倒見てるし」
「いや、いいよ。星を見に行くってタイプでもねぇし」
静かに星を見つめたのなんて、小さい頃両親と一緒にキャンプに行った時以来。
暗い夜に映える輝く星。
俺にはその想像だけで良い代物だ。
プルルルル
「嫌な予感がする……」
着信音が鳴り響いた。
相手は勿論、衣月だった。
「もしもし」
「水谷見て見て! 星が綺麗だぞ!」
「いや、こっちからは見えないって」
「だから外来いって! 大丈夫だから!」
「えー」
予想的中。俺を誘う電話だった。
「衣月くんから?」
「あぁ。外に来て星を見ないかって」
「行ってきなよ。さっきも言った通り春ちゃんなら僕が見てるから。ね?」
「……分かった」
俺は衣月にも同じように返事をした。
「いえーい! いっちばん上で待ってるから!」
「はいよ」
俺は電話を切り、生見さんの方を見た。
「行ってらっしゃい。楽しんできてね」
「あぁ」
ぐっすり寝ている春を横目に、俺は靴を履き手燭の蝋燭に火をつけた。
「よし」
扉を開け、暗闇に包まれている通路を歩き地上へ出た。
上へ繋がっている階段を探し、一番上に着くと扉があった。
少し重いその扉を開けると……。
「すげぇ」
沢山の星星が輝いていた。
「お、水谷。こっちこっち!」
「おう」
こちらに向かって手を振っている衣月の方へ歩いた。
「どうだ! 綺麗だろ!?」
「そうだな。すげぇ綺麗だ」
町には灯り一つなく、星が映えるには絶好の場。
いつもビルの光や家から漏れる光が多い東京では見れない景色が広がっていた。
「俺達が住んでた町も綺麗だったけど、ここも綺麗だな」
「そうだな!」
衣月の隣に座り、手燭を近くへ置いた。
「でも、少し複雑だな」
「どうして?」
「アルファが来なきゃこの景色は見られなかった。だけど、アルファのせいでなくなった命がある。どうしても、純粋な気持ちで楽しめないんだよな」
「……そうか。水谷はいつでも優しかったよな」
「は?」
「あの時、覚えてる? 五年前の修学旅行で交わした約束」
「覚えてるよ」
あの時。あの場で交わした決意と約束。
忘れることなき、思い出。
「あの約束をさ、水谷はずっと守ってるよな。水谷はさ、どうしてそこまで優しくて、強くなれるんだ?」
「分からない。だけど、守りたいものがあるんだ」
人を。町を。
何かを守りたくて強くなる。
何かを守りたくて、涙を流し心を痛めてでも戦うのには理由がある。
守りたいから。仇を討ちたいから。
理由はひとそれぞれだけど、思う気持ちが自身を強くする。
「俺はアイツを守りたいんだよ。ずっと心の中にいるアイツを、な」
今、どこにいるかも分からない思い人。
アイツから預かったものを守り通して、お前も探し出す。
自分の力じゃ無理だけどな。
「水谷ってさ……」
プルルルル
衣月が何かを言っている途中で電話が鳴った。
「悪い、出るな」
「うん」
「もしもし?」
「お兄ちゃん、春です!」
電話をかけてきたのは春だった。
「春か。どうかしたのか?」
「起きたらお兄ちゃんと衣月ちゃんがいなくて、生見さんに電話借りたの! どこにいるの?」
「屋上で星を見てるんだ。衣月も一緒にな」
「いいなー! 春も行っちゃ駄目?」
「勿論いいぞ。生見さんと一緒に来い」
「うん!」
「春ちゃん来るって?」
「おう。それで話の途中だったけど、何だった?」
「……何でもねぇよ!」
「そうか?」
「そうだって! ほら、春ちゃん途中まで迎えに行こ!」
「あぁ」
手燭を持ち、途中まで春を迎えに行った。
道中、何かを考えているような衣月の顔が頭に残っていた。
「うわー!!」
扉を開けた春はその星の綺麗さに感動していた。
目が輝いており、純粋に何かを楽しむ子供の目をしていた。
「すごーい! お星様、キレー!」
「だろ? 俺が見つけたんだ!」
「衣月ちゃん、凄い!」
「本当に凄いね、これは」
「あぁ」
少し遅れて来た生見さんもその星を見て歓喜を漏らしていた。
「凄い、凄いよー!!」
キラキラ輝く笑顔は星の輝きに負けていない。
「春ちゃん、連れてきてよかったね」
「そうだな」
「春ちゃん。あの星をあの星、それとあの星を繋げると夏の第三角形って星座ができるんだよ」
「ほんとだ! 三角ー!」
生見さんと話す春は下にアルファがいることも忘れ、楽しんでいた。
彼女の表情を見ていると日本崩壊前に戻ったように感じた。
「お兄ちゃん! 衣月ちゃん!」
「「どうした?」」
「えへへへ」
「どうした? 春」
「なんでもなーい!」
「そんな顔してたら気になるじゃんか!」
「へっへーん!」
「きっと星を見て、テンションが上がったんだね」
「うん!」
春と出会ったのはアルファが日本に来てから。
だからその前の春の行動や笑顔は知らない。
だけど今の春の笑顔からは出会う前はこんな笑顔をしていたんだ。こんなキラキラした目をしていたんだと前の春を想像することができた。
どこか大人っぽさを感じる表情や言動からは春はあまり子供っぽくないと思っていたけれどそれは間違いだった
春はただ、我慢して自分を隠していただけなんだ。
俺はこの日、初めて年相応の春を見れた気がした。
「生見さん。あのお星様のどれかにお父さんやお母さん、お祖母ちゃんがなってるの?」
「そうだね」
俺の両親も星になっているだろうか。
「俺の親も星になってっかなー?」
「きっとなってるよ、衣月ちゃん! だって春の家族がそうだもん!」
「そうだ。きっと俺達のことを見守ってくれてるはずだ」
「そうだね」
俺は空を見上げた。
輝く星。光る月。
何も考えずに済むほど、綺麗だった。
「星が、綺麗ですね」
「!」
「そうだね!」
「そうだな」
衣月の口からぽろっと零れた言葉はどこか寂しげだった。
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