第二十二話 第一回討伐作戦会議
「部屋はここだ」
「どうも」
不時さんと不時さんの秘書、草壁さんと作戦会議がある部屋に来た。
中に入るまだ薄暗く、誰もいなかった。
「一番か。座布団に座って待とう。草壁」
「はっ」
「草壁さんは、会議に出ないのか?」
「あー、秘書と言っても今は名ばかりだ。書記も専門がいるから草壁はここでの仕事がない」
「なるほど」
「僕は行燈をつければ仕事は終わりだ。付け終わり次第ここを出て行く」
「そうか」
手燭に乗っている蝋燭で沢山の行燈に火が燈ってゆく。
「おぉ。早いな、不時」
「えぇ。そちらも」
ふくよかな体をスーツで上手く隠しているようだが隠れていない男がやってきた。
後ろにも数人男や女がいた。
「誰だ?」
「君か。今回の会議で話す作戦の立案者、河野水谷くんは」
「……そう」
「私は門松剛三。この建物やアルファにかかる費用などを全て負担した、大会社の社長だ!」
「あー」
見るからに傲慢。
口元は笑っているけれど目元は全く笑っていない。
冷たい瞳で座っている俺を見下している。
「門松くん、早く座りなさい。後ろが詰まっている」
「あぁ。それは悪いな」
後ろには軍服を着た男。
門松さんと同じようにスーツを纏っている男。
門松さんの背後に控えている女以外に異性はいなかった。
少しすると用意してあった座布団が全て埋まった。
ということは、これで全員ということなんだろう。
「それでは、第一回討伐作戦会議を始めます」
進行者が会議を進めてゆく。
一人、一人の自己紹介。顔と名前が一致するからこれは有難い。
「……最後に作戦立案者、河野水谷くん」
「河野水谷、十七歳。高校二年生」
――パチパチ。
門松さんと同じように口元は笑っているのに目元は笑っていない人が多数。
俺のことを疑っているような人が数人。
この会議は圧倒的に俺が不利な状況。
ほとんど身内のような人達ばかりだろうし、俺は高校生。
大人からよく舐められる存在であると同時に疑われる存在。
だけど、ここで全員の意見をひれ伏せて納得させるのがアルファや女王を倒す上で必ず必要になる。
絶対にここでやってみせる。
「それでは、俺の、俺達の考えた作戦の内容を説明します」
対空砲を使った実験を行い、アルファがどれほど硬いのか調べる。
その後、ライフルや戦闘機で乗り込み、銃撃戦を。
一人ずつじゃなくても、確実に回数を重ねて研究する。
「たしかに対空砲を使うことには賛成だが、あれを動かすのには時間が」
「時間なんてどうにでもなる。死ぬ気でやれば」
「数人ずつで試すということは、被害者を作るということか?」
「アルファが日本に出現した時点で国民は皆、被害者だ」
質問は予想通りだった。回答はすでに考えてある。
「戦闘機やライフルは一般人には扱えん。そなた達から“死んでいくべき”では?」
「へー。国民を守るはずの軍人が一般人に死ね、と? 良い心がけだな」
ある意味。
「扱えなくても撃つことはできる。戦闘機やライフルなんて使っていなく、余っているだろう。いくら消費しても構わないはずだ」
「だが、ここにいるのはたった五百人ほど。五百人でどうにかなる問題では……」
「それをどうにかしないと死ぬだけだ。死を望むなら話は別だが」
今更、小心者みたいなことを言うんじゃねぇ。
途中で投げ出すなら話に口出しするな、参加するな。
その辺で飢えて死んでおけ。
「さ、どうする? やるからには最後まで。途中で投げ出すことは許さない」
「た、ただが小僧如きに決められる話ではない!」
「へぇ」
これは焦ってる。
冷や汗かいてるし、顔色も悪い。
最初に見た余裕そうな顔は全くなかった。
「軍人なのに逃げ出すんだ。一般人が、未成年が体と頭を使って頑張ってるのに恥ずかしい」
「国民の恥だ」。そう付け加えればもう何も言えなくなっていた。
「これじゃ、国民は絶滅して終わりだな」
「っ」
チェックメイト。
これでお前達は俺に何も言い返せない。
「ははっ、これはお見事だな。河野くん」
「たしかに。ここまでだとは私も思っていなかったよ」
「どうも」
今まで口を挟んでこなかった不時さん、門松さんがついにここで口を挟んできた。
「よくやったよ。河野君」
「別に。これから俺が口を出す上で必要なことだから」
「そうかそうか」
俺はこの二人。いや、不時さんに試されていたのだ。
俺の能力と腕力が認められたんだろう。
こちらを見て、笑っている。
「では、俺はここで」
「河野君」
「何だ」
「一つ聞きたいことがあるんだが、良いか?」
「どうぞ」
「何故、そこまでしてアルファを倒したいと望む」
「理由なんて簡単。敵討ち、未練を晴らす。なんて薄っぺらい言葉じゃ片付けられないぐらいアルファに怒りと憎しみを感じている」
仇討ち。
「それと今を生きている人に輝かしい未来があることを願って、まだ小さな体で生きようとしている灯火を消さないように。ただ必死になってるだけだ」
「そうか」
俺は俺自身の自己満足のためにやっている、とも言えるけどな。
「本当に失礼する」
「あぁ」
「河野くん、アルファを倒せたあかつきには是非、家の会社で働いてくれ給え!」
「え。俺学生ですし、嫌」
「ちょ、門松様になんてことを!」
「知らねぇ」
俺は靴を履き、扉を開けた。
門松さん、今後出ない……




