96話 女神の話し合いの場とやら
「話し合いの場……?」
女神から告げられた“話し合いの場”という言葉に反応する。
『うむ。定期的に行っておるのだ』
詳しく聞いてみると最初の最初、それこそ俺がこの世界に落とされた時にテティスから伝えられた事として今現在女神同士は表面上では和平を結んでいるのだが、その一つがこの話し合いの場だとか。
お互いに国の近況報告などをして敵対者がいない事を確認するのだとか。ヘスティアーが今回マザーホエールをけしかけてきたというのがテティスの読みであるのだが、例えばマザーホエールの話と先程サラシアが推測していた南側の話をすれば自然と他の国の女神、つまり北と西の女神はヘスティアーに対して疑念を抱くことになる。こうなると和平を結んでいるとは言え三対一が形成されることとなる。
どこの国というか女神も本来はこう……つまりは三対一の一たる側にならないように動くので水面下でも極力平和が保たれているのだそうな。
『ま、場とはいってもそれぞれの宮殿から念話を用いただけのものだがな』
それ通話会議じゃねぇか……。
『それは知らぬが……この話し合いの場であれば流石に参加せんわけにはいかん。それこそ先のマザーホエールのような緊急事態でも起こらぬ限りはな』
参加しないだけで何か後ろめたい事があるから、と勝手に判断されるらしい。まぁよっぽどのことがない限りは参加自体は出来るもんな。
『この場でマザーホエールについては報告し、管理者の推論を借りる形にはなるが南側の話も軽くであるが言っておく。流石にこれで無視は出来ん』
しかしそうなると、その話し合いとやらの間は此方から女神に対してのコンタクトは控えた方が良いんだろうか? こう、盗聴じゃないけれど俺が女神に対して気安く林欠ける事で他の女神たちに何か気取られる可能性だとかも考えられるし。
『信徒が同じように常に何かしらの言葉を送っておるから別段問題は無い……がまぁ貴様の場合はその方が良いやもしれんな。貴様だけは実際問題私が特別視している故、此方からも何か間違って反応しかねん』
念話となると今まさに俺がしているような、頭の中の考えというのも自然と相手に伝わるから例えテティス自身が口に、言葉に発さずとも俺が話しかける事で脳のどこかに俺に対する思考が発生しかねない、とそういう話のようである。
「その話し合い? っていつなんですか」
この世界に日付の概念があるのかは分からないけれども流石に何日後って概念は明日だ昨日だといった言葉で判明しているから、あると信じたい。けどこれ一月後とかになると具体的に何日経過したか把握しなきゃならなくなるか。
『近い日取りであれば、明後日であったかな』
直近も直近だった。
『その日の昼頃であるが、別段話し合いの終了時間を決めている訳ではないから一先ず此方から知らせた方が良いだろうな』
「分かりました。一先ず明後日は連絡送らないようにはします」
『ああ、頼む。先程も言ったが昨日のマザーホエールのような事態があった場合は流石に即刻連絡しても構わぬからな。こればかりは無視する方が問題視されるし私自身も無視できぬ』
「流石に……そう何度も起こらない……ですよね?」
『念のためという話だ。勿論何もないに越したことはないがな』
まぁマザーホエールに関しても意図的なものだと見て良いだろうし大丈夫だとは俺も思っているが。
一先ずこれで女神との念話を終える事となった。ちょっと長くなってしまったので急ぎめでロイの方に戻らねば。
▼
ロイの店に戻る。てっきりもう店じまいの時間であるため、店先ではなくて家の方に戻っているのかと思ったのだけれど彼女は店の方でわざわざ俺を出迎えるために待ってくれていた。俺を見つけるなり彼女は元気に声を発する。
「あっ、サクヤさん! お帰りなさい!!」
「わざわざこっちで待ってたの?」
「はい。サクヤさんをお出迎えしたいな、と……」
「そこまでしなくても……」
只管に申し訳なくなるのだが、彼女はそれでも心底嬉しそうな表情であった。
「いえ、私が好きでやってるだけですから!!」
「そうかもしれないけど……」
「それは兎も角、サクヤさん、早く夕食に致しましょう!」
そう言いながら彼女は俺の腕を掴んで、引っ張っていく。
そんな訳でこの世界にて何度目かのロイの家での食事である。彼女の両親たちも連日といいう訳ではないというのに俺がいるというその光景に慣れ親しんでいるかのような表情をしていた。親よ、良いのかそれで。ロイの父親に対して港町にいくという事を告げていたのもあって、何で戻ってきたのかを聞かれたので取り敢えず誤魔化した。まぁ誤魔化したと言ってもサラシアに用事があるという部分は事実であるから、そこを述べたのだが。
食事の後、何となく想像出来ていたんだけれどロイから只管に「泊って行ってください!」と強めの語気で説得してくる。けれどもまぁそう何度もお世話になるのは忍びないし、そもそも港町に戻っておきたいので適当な言い訳で以て逃れさせて貰った。
ちゃんと予め考えていた、港町に早く向かうから云々というものだ。
彼女には申し訳ないが、正直迫られ過ぎると本当にこっちの理性も危ういし許して欲しい。
しかしながら今更だが、明日はどの道サラシアから話を聞く予定であったからそう無理に断らなくても良かったのだろうか……?
いや、港町のギルドに買取をお願いしているしどの道取りに行かねばならないから大丈夫かな。
折角だし今日はこっちの街にとどまって宿もこっちで探すとしようか。




