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95話 ロイの元へ

 此方の街、サラシアがいる俺が最初に訪れる事となったこの街。此方で向かうべきもう一つの場所。ロイの一家が営んでいる薬草売りの店である。今現在夕方から段々と夜に近づいているといった時間帯だ。確かこの位の時間帯だと客足が段々と減っていてロイ一人で店番をしているとかそんなくらいじゃなかったっけかな。

 取り敢えず慣れた気がしてくるギルドからの道のりを進んで彼女の店までたどり着く。

 まだ明かりがついているのが伺える。恐らくまだ店じまい前だろうと判断して入った。俺の予想通りにそこにはロイがいて店番をしていた。

「!!」

 俺の存在に気づくなり彼女は顔を此方に向ける別段元々が暗い表情をしていたという訳ではないのだけれども一層明るい顔に変化する。

「サクヤさん!! お帰りなさい!!」

「ああ、うん。ただいま」

 ここが俺の家ではないのだけれども、彼女のその言葉に普通に返した。彼女のこうしたテンションと言うか立ち振る舞いも何となく慣れた感じがする。

「しかし……どうしたんですか? 確か今港町にいる筈では……?」

「港町で色々あったから……ちょっとね、こっちのギルドに相談というか何というか。それでついでに顔見せだけでも、と思って……」

「わ……わざわざ私の所にですかっ!?」

 驚くような顔をするロイ。わざわざも何もロイ自体にはお世話になってるしそもそもギルド関係者以外に殆ど誰とも知り合ってないっていう理由もあるんだけれども。


「さ……サクヤさん、宜しければ……夕食が御済みでなければ召し上がって行ってください!」

「え……いや悪いよ……」

 確かに時間帯的には正直丁度いい。なんかこの時間に訪ねることにさしたる意図は無かったのだけれども食事を他借りに来てるみたいに見えて申し訳なくなる。しかしながら彼女の性格的にはまぁ……絶対そう言うの気にしないからなぁ、そういう所もこう、好意に付け込んでいるって感じがする。そういう理由で取り敢えず断るのだけれども、彼女はそんな俺の言葉に対して「そんな事言わずに!」と迫ってくる。その後も二、三度断ったのだけれども引かない彼女に負けて食事だけは頂くことにした。途端に彼女の表情の明るさにさらなる磨きがかかる。ふふん、と嬉し気だった。

 しかしながら夕飯にするにはまだ店を閉めていないしそもそも時間帯としてももう少し後になるだろうか。

 流石に家の中にお邪魔して時間を潰すなんてのは今更どの口がいうのかという話ではあるけれどもしかし申し訳ないというか厚かましい感じがする。

 って事で店を閉める時間までは外で時間を潰すことにした。っても外で何かすることがあるかと問われたら別にないんだけれども。取り敢えず女神と連絡を取るべきか。サラシアの予測に対して意見を聞いた方が良いだろう。個人的には成程な、と思わされることばかりだったが女神視点から考えたらどうなのだろうか。


 てことで何時もの如く路地裏。誰もいない事を確認して女神に念を送った。

『私とて何時でも暇という訳でもないのだがな』

 そう言いながらも返事をくれるテティスであった。可能ならばそれこそサラシアの話を聞いている段階で何かしら意見とか聞けたら良かったのだけれども、その時点で念を送っていないのは単純な俺のミスというやつだ。サラシアと会話をしている時に既に聞いているのであれば此方からの説明も最低限で済むんだけどどうだろうか。

『ああ、あの管理者か。あやつの話であれば聞いておったぞ』

 此方の思考を既に読んでいたらしいく、更にはサラシアとの会話も聞いていたようだ。円滑で助かる。

「見ているっていうのであれば話が早くて助かります。それで、女神の視点から聞いてどうでした?」

『そうさな、概ね納得は出来た。だが港町の狩り場を狙ったというソレに関しては恐らく、さほど深い意味は無かろう。狙ったらあの場所で大きくなったという程度だと考える』

「偶然……って事ですか?」

『そういう事だ』

 そう言うと女神は若干気怠そうに或いは嫌そうにその女神の性質を語る。しかしながらその声音はそれでも嬉し気というかこう……人の嫌味をつついてにやけている感じがする。

『あやつがそんな緻密な計算等出来る訳なかろうが』

 無かろうが、と言われてもテティス以外の女神に関しては全く会話したことないわけでヘスティアーにしてみたってこのテティスから話を聞いただけであるので知らないんだがな。

『セルモクラシアに行けばその内接触する事があろうから、何れ知る事にはなろうよ。女神であるからな、最低限の頭はあるがそれのみであって基本的に莫迦だからな』

「莫迦って……」

『私たち女神は実態として存在こそしているが基本的に民からの印象は女神であると同時に偶像としての対象だ。故に莫迦だろうとその逆であろうとさして問題は無い』


 しかしながらそんな女神に俺の存在に対してカマかけられたのではなかったか? それを考えるのであればこう、自頭は良さそうに思えるというか……教養はないけど知性はあるというか……。

『単に勘と運がいいだけだあやつは。勿論貴様の言う通り先日の私に対するカマかけのような事もあるが……基本的には何となくで動く奴だ。それこそそこの管理者のような理詰めで導き出したりはせん……というか出来ん』

 言いたい放題だなこの女神。何となくこの言葉の裏に別の何かを感じる……。

『話を戻すが、女神であればサラシアが推測していたような魔力の調節こそ容易である。それこそ巨大化にせよ縮小化にせよ問題なく行使は可能だが、港町でその魔法が解除されるだどうだといった事は考えておらんだろうな』

 そもそもそんな細かな調整、私ですら難しいだろうからな、とテティスが言った。確かに難しそうであるし彼女の話だと逐一マザーホエールの様子を見てない限りは難しいんだろうな。多分逐一様子を見ていたとしたら俺が討伐した時点で何かしら動きがあって然るべきだろう。


『ま、どれもこれもヘスティアーの仕業である、と断定した上での話にはなるがな』

 そんな結論で良いのかとは思うが、つまりは南の女神の性質上で判断しているという事か。それに言葉尻から察するにまだヘスティアーに対してマザーホエールの一件を問うてはいないようだ。何だかんだで〇一日経ってるんだけど、そんな連絡付かない物なのかな。

『あやつが応答せんからこうなっておるだけであって私の怠慢等ではない』

 俺の思考に対して食い気味にテティスは言う。信徒の言葉に対しても殆ど応答しないと言っていたし、女神同士でも可能って事か。


『だがまぁ無視を続けるのも時間の問題であろうな』

 時間の問題? ずっと無視を決め込めばいいだけではないのか。

『何れ女神同士での話し合いの場があるのだ』

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