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93話 推論の続き

 サラシアに話を聞きに行った。そして現時点で、彼は俺の話を聞いた上での推察だけで自然発生ではない、という理屈に辿り着いた。しかしながら同時に彼の推論は納得できるものではあったのだがしかし同時にテティスが語っていたヘスティアーの線すらも疑問に思えてしまう物だった。まぁヘスティアーの仕業というのはテティスが言っているに過ぎない、根拠らしい根拠のないものであるから覆る可能性は勿論あるが。


「まず話を整理しましょうか。私の推測では自然発生による、ただの突然変異種の可能性はまぁないと見て良いものです。それこそ万が一程度です。であれば可能性は別のものになります」

「別のモノ――」

 彼は既に真に受けるなという旨の発言をしていたが恐らく予測はつく。

「即ち誰かの仕業という話ですね」

 やはり、か。けれども狩場に出現した事への疑問は解決していない。それを今から話す、という事らしいが。


「魔法でもってマザーホエールに何かした、というのが私の考えですね。方法によってはこれで狩場に出現した事の理屈も説明できます」

 サイズを変える魔法だとかが存在するのであればそれで自由自在には操れるだろう。しかしこの方法だとヘスティアーがどうのこうのっていうのは考えにくくなるが……。

 直接操っていたというのはまぁ女神たちは何処でも見渡せるらしいので可能だろうけれども……。

「直接操っているって事は無いんですか?」

「直接操るとなると、魔法が届く範囲に己が存在している必要があります。港町の狩場であれば実際に狩場の中でも出現場所の付近にいなくては難しいでしょう流石にそれはリスキーであると言わざるを得ません」

 被害自体は俺が即座に仕留めた事もあって大したことはないのだけれどもそれはあくまで結果論である。俺がいなければもしかしたら被害は甚大であったかもしれず、自らが被害を受けている可能性も十二分に在りうる話だと考えるならばリスキーという事も納得できるか。


「魔法の効果は永続ではありません。例えば港町に続く道には結界が貼られているのですが、貼ったらば放置していようが延々と続くわけではありません。時間経過、内外からの行動等、様々な物事によって摩耗し効果は薄れれいるのです。故にあの道は通りかかる冒険者から僅かにですが魔力を貰っているのですよね」

 さらりと述べているのだが、記憶半分だが結界が貼られている事実を知っているのってホントに一握りでは無かったか? 確か結界を展開したのが百年単位で前の話だったような気がするんだけど、嫌でもサラシアならこの辺の話も勝手に気づいてもまぁ……不思議ではないか。


「魔法は効果を維持するだけで魔力を消費します。そして魔法の中にため込んだ魔力が全て尽きればその時点で消滅します。この仕組みを使う事で恐らくですがサクヤさんが出会ったというマザーホエールの件も説明出来るかなとは」


 自然消滅するというその話、女神から聞いた記憶はないのだけれども、単純に不必要だから教えてないってだけだろうか。しかし魔法って自然消滅するのか。だとすると俺にかかってる女神からのバフも遅かれ早かれ消えるのか……? 収納魔法だとかもよく分からないが開閉の時に毎回魔力を籠めているから何となくその度に更新されている感じがしないでもないけど……。

 それともテティスが実はこまめに更新してたりするのかな……? 後で聞いてみるか……? 一先ず今はサラシアの話を聞かねばな。


「例えば……強化魔法という物が存在します。これが時間制限の分かりやすい例ですかね。魔力によって効果量や効果時間が変化する、というものですね。同じように例えばマザーホエールに巨大化の魔法をかけたとしてもそれは永続ではありません。ある程度の時間が経過したらば効果が切れて小さくなります」

 強化魔法と言われると何となくイメージが付きやすかった。それこそゲームでもまぁバランス調整の意味合いも当然あるけれどバフデバフって大体効果ターンや時間が決められてるもんな。


「そこで港町の件ですが……例えば巨大化の魔法をかけてその後時間をおいてから縮小の魔法をかけます。基本的に魔法は上書きではなくて其々の効果が反映されますから、両方の魔法がかかった場合、元の大きさに近いものになるでしょうね。そして時間を置いた場合、巨大化の魔法の効果が切れたらば縮小だけが残ります。意識すれば時間調整もある程度は操作が可能でしょうから、この場合は縮小の方の時間を削ったという所でしょうかね」

 成程、そういう事か……。一度巨大化させたものを極々小さくして狩場に一度潜り込ませる。その縮小の魔法だけ効果時間を短くさせて短い間に狩場の下に潜り込んでいれば完成という事になるな。


「流石に何者の仕業なのか、までは断定できませんが」

 そう前置きをしながらサラシアは席を立ち何かを探している。そうして持ってきたものは地図のようであった。それを広げて此方に見せて来る。ヴローシィ全体の地図のようで、ヴローシィと共に周辺の国が少しだけ描かれているのが分かる。女神からもらった地図の情報と照らし合わせてみるが地図として割と精巧に見えるので測量に関しては割としっかりしてるのか。いや、女神とか魔法とかの概念がある訳だしそこの力だったりするのかな。

 サラシアはその地図の中から港町に相当する場所を指さした。

「此処が港町でして此方が港町の海という見方なのですが……」

 すすす、と指を動かして何かを示す。海の上を指がスライドしている。何か軌道を描いているように見えた。

「マザーホエールの生息地自体は広い海であれば希少ですが何処でも基本的に生息します。勿論移動もしますが、ある程度決まりはあります」

 決まり? 先程描いていた軌道がソレだってことなのだろうか?

「海には水流が存在してまして、大体こう……南側からの流れが存在しているんですよね。なのでマザーホエールに限らず多くの魚はこの水の流れにそって動く事が多いんですよね」

 南側……彼が指さしているその軌道はセルモクラシアの方向からだ。所謂潮流ってやつだろうそれが南側から港町に向かって発生しているって事だろう。

 彼は真に受けるなという旨の発言こそしていたがしかし女神が南側の仕業だと睨んでいたのでただただ証拠というか理由付けが強固なものになるだけだ。

 サラシアの推論はこれで終わる。

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