91話 サラシアとの話
久々に戻ってきた……という事は無い。一昨日だったかにサラシアに相談したくて一度戻ってきている。なので一昨日ぶりということになり、当たり前だが久しぶりという実感は皆無である。まぁ一週間でもそもそも久しぶりと言っていいのか謎なんだけれども……。日付的には港町についてから三日四日と経過しているので、徒歩で戻ってきていたということにしてもある程度言い逃れは出来ると思う。それを考えるならもっと時間置いて、それこそ出発直前とかでも良かったのかも知れないけれどもまぁ善は急げ、という事で。即座に此方に戻ってくることにした。不思議とギルド関係者とのパイプが出来上がってるんだよなとか考えつつ取り敢えずどこに向かおうかと考える。
「先に……ギルドの方かな」
ロイの方に先に行った方が彼女の為にはなりそうだけれども拘束時間が読めないからちょっとね。特にサラシアに関しては前に訪ねようとしたときに忙しいっていう事があったからもし今無理でも後でなら……って感じで余裕を持っておきたい。
けれども個人的な理由でサラシアの所尋ねて大丈夫かな……? ガレオスに関しては寧ろ向こうが買ってくれている筈だし思考というか立ち回りというか冒険者然とした振る舞いであるから多分サラシアよりはまぁ別に……って感じだが、サラシアは管理者っていうかこうお偉いさんって感じが凄い雰囲気として漂ってくるから少し心配である。……がまぁ彼も彼で俺を買ってくれている節みたいなものを感じるから多分……大丈夫。
最悪森で何か狩って献上すれば許されたりしないかな。
兎も角、ギルドに到着する。此方に関しては別段名が知られている訳ではないので安心感がある。っても……アポイントメントとかないけど直接管理室に訪れても大丈夫か? 流石に一度受付で何かしら言った方が良い筈だよな。ってなわけで一先ず受付に向かう。
「如何なさいましたか?」
受付のお姉さんが問いかける。
「ええと……サラシアさんに用事があるんですけれど……大丈夫ですかね……?」
「お名前の方は」
流石に名がっていうか顔が知られてる訳じゃないから尋ねられるな。
「ええとサクヤです……何度かサラシアさんにお会いしたことあるので向こうも覚えてるかなと思うのですけれど……」
「分かりました。少々お待ち下さい」
そうして待たされる事となる。その間に気分だけの行動ではあるけれど、ギルドの掲示板に貼ってある報告書だとかを読んでいた。マザーホエール討伐の話が遅かれ早かれ此方というか各地のギルドに報告として配られるらしいのだが、若しかしたら既に届いており貼られてたりするかな、とかそのくらいの気持ちだったがまぁ昨日の今日なので当然と言えば当然か特にそれらしいものは存在していなかった。
確かギルド管理者とかの偉い立場になった場合には転移の為の魔道具が使用可能だと聞いたのでこうした他ギルドに向けた報告書もそういった形で伝達されるかな?と考えていたんだけれども実際の所はどうなんだろう。折角だからその辺のこともサラシアに尋ねてみようかな。
そんなことをしていると受付の方から声がかかった。きちんと向こうが俺の事を覚えてくれていたらしく割とスムーズに会わせて貰える事になった。
受付の人の後ろをついていく形で管理室に案内される。勿論場所に関してはちゃんと覚えているのだが向こうの形式的なものらしいのでそれに従う。
通された管理室ではサラシアが座りながら何か書類を制作しているのが入ってすぐにも分かった。しかし俺の存在に気づくとその手を止めてくるりと此方を向いて反応する。
「おお、サクヤさん。わざわざお訪ね頂き光栄です。ひとまずはお座りください」
言われて椅子に座ると早速と言わんばかりにサラシアから話を始める。
「私に用事があるという件だけは聞き及んでおりますが、わざわざ私なんかに用事とは如何なされましたか?」
「ああええと……」
少し待てよ、これ港町の次の目的地の話、そのまましても良いのだろうか? 瞬間言葉がつまり、そして話そうとした口も踏みとどまった。これから話そうというか尋ねようとした事は主にはセルモクラシアの内部事情というか簡単にどんな国なのかとかを尋ねようというものなのだけれども、俺は元々サラシアに港町にいくという事を伝えていた。そして旅程というか徒歩時間で大凡四日前後という話も聞かされており、旅だった日から大体今日で一週間前後という事になる。つまりは行って帰ってをするなまぁ可能という時間であるのだが、そんな状態で次の目的地っていうとちょっと変だよな。港町にいくと行っていたのに初日で戻ってきたっていうのは違和感が発生してしまう。
いや……でもセルモクラシアの話だけなら誤魔化しようもあるか?
「如何なさいました?」
言葉に詰まっている俺に対してサラシアが尋ねる。ちょっと流石に早まりすぎたか? 下手に嘘をつくとサラシア相手であれば即座にバレて最終的にテティスとの繋がりみたいなものも察してしまうのではなかろうか……?
こういう時にというかこういった相手に嘘をつくのは少なからず得策ではないので、上手にセルモクラシアの事を聞くのであれば嘘ではなくて隠し事の方が良いか。
「……サラシアさんは……港町の方から昨日今日の間に何か報告などは受けませんでしたか?」
「報告――ですか?」
「いえ、ついぞ最近港町にてマザーホエールが出現したのですが」
「ええと? 別に港町なのですから珍しい部類ではあっても報告書を頂く程の事ではないと考えますが……?」
彼の反応からしてこれはまだ報告書が届いていないと考えて良いな。サラシアという人間、聡明に間違いはないが狡猾と言われると若干違う気がする。彼は少なくとも俺に対してというかこの盤面でそんな行為をする人間ではない筈だ。故に先程の返信はカマをかけているとかそういう物ではなくて本音であり本当の言葉だろう。
「通常のサイズじゃないらしくてですね……少なくとも通常よりも一回りか二回りは大きかったです。それも、狩場で。ガレオスさんもその場にいたので……」
「ふ……二回りも大きいサイズが……狩場で……!?」




