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83話 ヘスティアーとテティス

 そんな話の一抹を聞かされた。なんというか……女神も大変なんだな、というのが俺の感想である。

 しかし話の全容を聞く限りでは本当にそのヘスティアーとかいう女神の仕業なのだろうか? 先に女神も証拠がないとは言っていたが……。

『まぁ貴様の事だからな、知らないのは無理も無い話だ。あの女神の性根を知れば貴様もすぐさま得心がいくだろう』

 この女神がそこまで言うとは……まぁ理由というか……毛嫌いしている訳っていうのは想像つくけれど。

「っても女神とは言えそんな……マザーホエールを放つっていう真似、出来るんですかね?」

『不可能ではないだろう。それこそ貴様に力を与えたりあのガレオスという人間にも遠くから一時とは言え力を与える事が出来るのだからな。それをモンスターに対して与えるという話なのだから理屈としての理解はまぁ出来ようよ』

 ふむふむ確かに可能性としては全然あるのか。それこそテティスが感じ取っていたものっていうのは、最初はというか今の今まで女神の権能的な何かかと勝手に思っていたのだけれども話から推測出来る一つの可能性としては本当に女神の感じ取った悪い予感というものが文字通りに予感に過ぎなくてあの日、あの場所でそのヘスティアーとかいう女神が意図的にこう……マザーホエールに対して何か行ったとか……そう言ったケースも考えられるのか?


『いやそれでは魚の件の説明がつかぬ。最もあの女神が本当に行ったのか、という事から確定はしておらぬしマザーホエールのあのサイズが正しく発生という形で生まれた突然変異の類の可能性だって残っている』

「あっそうか……」


 魚、特に小さい魚の捕獲が最近下がっているという話を聞いていた。マザーホエールを見た瞬間のガレオス達の反応や言葉からもその理由というか原因は正しくあのモンスターであることはほぼほぼ確定的であろう。

 それに結構忘れがちな事であるのだけれどもこの世界は何とも奇天烈な事にモンスターに関しては自然発生、ゲームのように勝手にスポーンするのだ。だからこそ唐突に先程のマザーホエールのようなものがポンと海中に現れたとしても不思議ではない。なので女神がサイズではなくて気性みたいな部分だけ弄った可能性もあるのか。

『まぁあやつの意図というのが今一つ分からんがな。しかしわざわざ他の国を覗いて力を与えて……というのはあまり考え辛い。私の思索の限りでは自らの土地にいたモンスターを港町に放ったとみておるが……』


 確かにテティスは最初に海であるという話をしていたもんな。けれどもモンスターに直接バフを送れるのであればわざわざ自らの土地から行って送るっていう行為もなんというか可笑しく感じるというか、こうちゃんとテティスの土地に向かう保証がない気がするんだけれども。

『そんなもの、理由は単純だ。下手に此方の土地に魔法であろうともちょっかいをかけようものなら私が気づく。モンスターに直接魔法をかけるなど、私が他事に更けぬ限りは気づくであろう』


「うーん……なるほど……でもっていうか……あの……」

『どうした?』

 女神の感じた悪い予感というものがコレであったとしてそれが他の女神によるものであったとするのであれば……その女神の言う悪い予感というのがまだ続く可能性ってあるのではなかろうか、とそう思ったのだ。テティス曰く性根が腐っているらしいし嫌がらせの範疇を軽く超えているけれどもまぁ一先ず嫌がらせと形容させてもらうが、それをまた繰り返す可能性はありそうに思うが。

『そう言う事か。それはさして問題無かろうよ』

「そうですか……?」


『全て私の想像通りであれば……という話になるが故に保証は出来ぬが……。自らの国から放ったモンスターであるからな。幾らなんでも信徒でもないモンスター一匹の同行を延々と探っている訳は無かろう。あやつの仕掛けた物事が何時成功して何時失敗したかもまぁそこまではっきりとは分からん筈であるから恐らくは暫くは様子見を続けるであろう。それに女神同士は一応平和的であると同時に裏では領土拡大だなんだと狙っている者ばかりだが……別段ヘスティアーは私ばかりを狙っている訳ではない』

 つまりは、他の国にも何かしら睨みを聞かせている、とそういう事……か?

『概ねそういう理解で問題なかろう。少なくとも表立って仕掛けるという真似は出来ぬしこれ以上此方で不可解な事が起これば私が他の女神に言えば良いだけの話だ』

「既に裏で手を組んでいる可能性は?」

『既に他の女神たちが徒党を手を組んでおるならばこのような面倒な策を弄す必要などない。真正面から信徒の兵をあげて戦争をしかければ容易にこの国は終わる。その上戦争を仕掛けた事について糾弾できる立場の者はおらん』


 何か世界史とかでやった戦争の話と考えている事が似てるような気がしてくる。……別に詳しい訳じゃないけど。

『それに今回の一件で万が一私の国が陥落したとしてもそれは他国三つの共有や分割などではなくヘスティアーがほぼ独占する形になる。仕留めたのがあやつだからな。それは他の女神は避けたいであろうから、流石に容認はしておらんだろう……ま、推測の域を出ないが』

「何か……この世界ってハードですね」

『貴様は私の魔法でもって強化しておるのだから問題あるまいよ。それにそんな女神たちへの対抗策が貴様の持つ“魔法否定”という不可思議な力なのだ』

「……責任重大だ……」

『そう気負わずとも良い。一先ずヘスティアーに対しては改めて此方から問い質す。暫くは私の警戒も高めるが故、ヘスティアーもそれくらいは予想出来ているであろうから、下手に何か仕掛ける事は無いだろうよ。というかそれならもっと前から仕掛けて然るべきだしな』


「成程……」

『長くなって済まないな。取り敢えず今後の話などは明日以降でも構わん。貴様はあれだろう、祝杯とやらに参加するのではなかったのか』

「あっ……」


 女神からの話を聞くのに夢中になりすぎていた。結構時間が経過してしまっている……。

『急ぐというのであれば、これで終いだな。何もないのであれば早う迎え』

「は、はい!」

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