81話 女神からの報告
その後もアステールからの質問が幾つか続いた。しかしながら殆どの質問というかマザーホエール云々に関してはガレオスが答えていたから俺個人に対する質問が多めであった。
それこそ俺が何処から何のために港町に来たのか、とかそもそも魔法云々に関してとかそういう物だった。
今回は悪目立ちってわけじゃないから、名前を出されてもさして問題は無いんだけれども……。
「あの……これってギルドに張り出されるんです……かね?」
「当たり前だろ」
俺の質問に対してガレオスが言う。
「今回の一件はこのギルドだけじゃねぇ。他のギルドや場合によっては他国への報告スラ必要になってくるレベルだ」
何となく察してはいたが随分と大事になるな……。まぁ実際問題イドロヴィアの人達だけでどうにかなった気がしないからなぁ……。
「テメェはそれでもって町の英雄だ。良いことづくめじゃねぇか」
「それは……まぁそうですけど」
ホントに名前出して良いモノなのか? だって俺は偶然この力を手に入れただけである。それにやった事って言ったってただただ雑に最大火力をぶつけただけなんだよな。やったことと言えば即ち固定砲台だ。
うーん、うーんと一人唸っているとアステールが優しく此方に向かって
「なるほどね。それなら私が綺麗に整えて書いておくわ」
そう発言してくる。こんな感じで報告書に関しては概ね終了という事になったらしい。後は現地調査とかだそうな。流石にこれに関してもばりばりの当事者なのでついていくことにした。というよりは俺がそう言いだすよりも先にガレオスが
「サクヤも一応ついて来い」
というので従う形になっている。当然と言えば当然かアステールも同行するらしい。
ギルドから出てガレオス、アステールと共に狩場へと移動した。それで狩場のあの川付近に到着する。既に大量の冒険者たちがイドロヴィアの指示の下清掃を行っている。肉塊の除去であったり血を洗い流したり。なのでまぁ殆ど片付いてしまっている。
「来たか、リーダー」
「リーダー! こっちは殆ど片付いてるっすよ!」
「あとは事後調査か?」
イドロヴィアの面々がそれぞれガレオスに対して声を掛けている。それでもってそのガレオスの後ろからすっとアステールが姿を見せるとまたも同様に三名は挨拶をした。
「アステールの姐御!」
「お疲れ様です!!」
「ご苦労さんです」
「ふふ。お疲れ様」
!?
三名の反応が何というか意外性に富み過ぎていて声こそ出さなかったが何事かとハテナが浮かぶ。何だこの対応というか……姐御って……。そんな感じで話しかけられたアステールはというと依然として喋り方等には特に変化はなく平然とした態度で対応している。
さて事後調査という事で一緒に来いという形でついてきたのだけれども……。必要あったかこれ? 先程から度々思ってしまう。
事後調査という事で何を行うのやらと思っていたのだが基本的には何処から出現してきたのか、被害の程度、討伐の場所などを実際の現場たる狩場にて調べていくという物らしい。なんか現場検証みたいだな。
イドロヴィアの面々は残り、普通の冒険者たちに関しては何か情報を知ってるものだけが残る形となって解散である。
まぁ現場検証とか言ってもそんな元の世界にあったような現場検証程しっかりしたものは行っていない。というか当たり前であるけれど行えない。そんな技術に関しても概念的な知識にしても存在していないからである。
被害範囲に関してざっくりと片づけをしていた面々が飛沫や血しぶき、あとは散らばった肉片の話をしつつ発見当時の状況なんかも話していた。流石に討伐時の状況なんかも聞かれて、その時はそこまではっきりとした事がというか上手に喋れはしなかったが俺も多少は話をした。それを見た他の冒険者たちは多少怪訝な様子であったのだが、そんな目線を送る度にガレオスがきっと睨んだ。これじゃアステールに誤魔化しを入れて貰ったとて認知されてしまう形になっているからあんまり意味ない気がする……。
そして他の残っていた一部の冒険者はどの辺りにいてマザーホエールが見えたか否かみたいな話をしている。
アステールはイドロヴィア+俺+その他冒険者の話を延々とにこにこした表情を貫いて聞き続けている。眉一つ動いていない気がする……。
「うん、これくらいあれば大丈夫よ。皆お疲れ様」
彼女がそういったことによって事後調査とやらは終了となった。片付け自体も終了しているので皆でギルドに戻るという事に。
ギルドへと戻る道中でガレオスが突然に「祝杯だな」なんて言い出すと周りにいたイドロヴィアの人達は勿論のことその後ろ位をついてきていた他の冒険者に関しても目を輝かせているのが分かった。
「そう言えば忘れてたがマザーホエールが出てくる前は狩りで何匹か確保してたよな」
ガレオスの発言に対して思い出したようにオルカが言った。確かに俺も忘れていたが収納魔法でもって仕舞っていたっけか。これだけは彼らに渡さねばなるまい。それを終わらせてから聞きそびれていた女神の報告とやらの続きを聞くとしようか。
そんな訳で今日何度目かのギルドであり二度目の解体所である。当然ながら今回の使用目的はシャワールームではないが。アステールだけは解体所に同行せずに管理室の方に向かった。まぁ報告書とか纏めたりするんだろうな。なんというか……お疲れ様です……。解体所にてガレオス等に件の魚だけを渡した。
あんだけの騒動があった直前に捉えた獲物であるが、流石魔法というべきか当然ながら埃なんてないし新鮮である。
「よし、捌くから待ってろよ」
「俺はちょっと……すぐ戻りますんで!」
「?」
そうとだけ告げて一度ギルドを出た。結構なダッシュである。そしてギルドからそこまで離れてはいないけれども物陰に隠れる事が叶う場所というのを探した。
見つけ次第ちょっと身を屈める。何となく、人が通りかかった時の為……みたいな。そして女神に念を送った。
『漸く……か。女神を待たせおって』
「色々事後調査だなんだとあったので……」
『まぁ主に解決に当たったのは貴様であるからな、この位は許そう。さて……報告の続きだったな』
続きとは言っても殆ど告げる事が出来ずに打ち切りになった記憶がある。だから殆ど最初からの状態といって良いだろう。けどマザーホエールに関する事だとかそういう物であれば、アステールに伝えた方が良いだろうか?
『あの女に伝えるか否かは貴様の判断に任せるが……しかし貴様の口から説明したとして理由付けをどうするつもりだ?』
「あっ……そうか」
『左程重きを置くべき事柄でなかろうから、気にする程ではない。さて、長くなってしまったが件のマザーホエールに関して、だ』
そうして女神から告げられたことには、あのマザーホエールは変異種、即ち通常のマザーホエールが何かしらの要因でもってあそこまで体躯を大きくした姿であることに違いこそないとのこと。しかしながら要因というものが予測の範疇というかまだ「怪しい」程度の断崖であるのだが思い当たる節があるらしい。
『その節というのが、他国だ』
「他……国?」
『そう。他国。このヴローシィ以外の国であるな。……サクヤ、貴様はこのヴローシィという国の構造……即ち全体的な地形自治は私の魔法でもって知っておるな?』
ああ、女神から確かに情報として地図のような形でもらったな。……!
『気づいたか』
文字列だけでの表現が出来ないのだけれども、しかしそれでも頑張って説明させていただくとすると、まずヴローシィという国は勿論有限の土地に存在する。それが女神から受け取った情報としてこの国の地形を見れば一目瞭然である。で、だ。港町。港町はヴローシィという国の中でも割と南に寄った場所に位置している。だからこそ海という物が存在しており港町という名称が生まれたのだからまぁ当然と言えば当然である。そして肝心なのがその海だ。
海とは何もこのヴローシィの国にのみ存在している訳ではない。この海とは一部に過ぎず、俺の中に画像的な形で存在している地図の中の海というのは、あくまで此処までを記したという形に過ぎない。つまり何が言いたいのかというとこの海は他の国とも当然につながりを持っているのだ。
女神が言いたいのは海を介して他の国が刺客のように放った、とそう言う話だろう。
『ま、今のところ状況だけで言えば確定的ではあるが……証拠としては確定的ではない。あまり関係ないと思って無視しておったのだが少し前に奇天烈な事があってな……』




