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76話 予感

 俺の申し出に対して勿論のことながらカラマリは喜んだ。それで後ろで保護者みたいな佇まいというかのオルカとクテイスも先程の会話を考えたらまぁ当たり前だけれども無事に許可をくれた。


 そんな訳で共に行動を開始する。すぐさま俺はイドロヴィアの面々に尋ねた。

「あの……今だと大きい魚しか獲れないって聞きまして」

「まぁオンリーってわけでもねぇが傾向としてはそうだな」

「でもやっぱ最近は大きい得物が多いっすよね」

「それで……そういった魚の獲り方だとかを教えて貰いたいなぁ……と」

「成程! そういう事でしたら俺が教えてあげるっすよ!」

「お前じゃ無理だろ」

「ソロで狩り出来てから言え」

 やはり散々な言われようである。まぁでも流石に俺よりは知識あるだろうし……大丈夫だと思うけど。そんな訳でイドロヴィアの面々と共に行動する事になった。それでもって彼等の狩場にて教えて貰う運びに。


「獲り方っても、サクヤさん一回ゲットしたんだろ?」

「はは……まぁ運が良かったと言いますか……」

 実際の所がどうかは知らないけれど勘だけでやって成功してしまった節もあるからな。プロセス自体を知っていてもコツとかそういうものは全く知らないわけだし運と言ってもまぁ問題ない範囲だろう……多分。

「ふーんま、いいか。俺等の場合はチームだからな。基本的にはそれぞれで役割分担してんだ」

「役割分担……」

「一人が追い込んで一人が水の中から引き揚げて一人が仕留めて……みたいな感じだな」

「ソロだとこれ全部一人でやるんすよね。だから大きい得物ってなると結構大変なんすよ」

 やっぱりそういう物か。基本的に今後も一人で狩りを続けることになりそうだから……魚ってなると大変か。逆に言えばソロでばしばし狩りが出来てるこの人たちが凄いってことにはなるのか。

 取り敢えずは今教わった事をそのままイドロヴィアの面々が目の前で実践してくれた。魚を探す段階に関しては結構勘らしいのだが、基本的には餌を蒔いて少し待ってから魔法でもって追い込むというのが彼らのやり方のようである。確かに魚釣りにしたって餌つけることあるし……無くてもルアーとか工夫するしそういった小細工無しでってなると無茶な話だったのかな。本当に運が良いのではなかろうかこれ。

「よしカラマリこっちに誘導頼むぞ!」

「ハイっす!」

 昨日行った模擬戦闘だと肉弾戦というかほぼほぼ掌底打ちばっかりだったけれどもやっぱり魔法は使えるのか。魔法でやってくれてたらもっと楽だったかもしれないのになぁ。

 先程は結構カラマリに対して辛辣なコメントをしてこそいたが流石チームというべきだろうか、少なくとも俺の目からしたら凄い動けているしカラマリがそこまで弄られる程にも見えないんだけど。多分俺はこれくらい動ける気がしないし。

「ぃよし、オルカ後頼んだぜ!」

「オーケー!」

 クテイスに言われ、オルカが叫ぶ。それでもって右手に構えていた槍状のものを強く握りしめて投げる準備をしていた。ざばぁと大きな音をあげながら空中に魚が舞う。水飛沫を伴いながら。

「おぅらっ!!」

 ずあっと投げられたソレが綺麗に魚の腹を貫いた。そして槍を投げた勢いがそのまま魚にも伝わり空中に、上に跳んでいたソレは槍と同じベクトルに飛んでいく。しかしながらその方向はというと海であるのだが……何という事だろうか大ジャンプでもってカラマリが海の方向に跳んで行った。魚自体をその勢いでもって手にすることは出来たが……そのまま落ちないのか?

 そんな俺の杞憂を嘲笑うかのようにカラマリが何事か分からないが引っ張られるようにして陸地に戻っていた。

「……!?」

 目を凝らしてよく見てみると彼の腕に紐らしいものが括られていた。成程な、あれでもって跳躍して行ったカラマリを引っ張って陸地に戻してるってことか……。まぁまぁ大掛かりな事してるんだな。


 と言う訳でそうそうに一匹を確保していた。

「おお……」

「まぁこんな感じかな」

 この世界じゃあクーラーボックスなんてものは存在してないから面倒臭そうだなぁとか考えていたのだけれど、よくよく考えたら俺の収納魔法がアレか、クーラーボックスみたいなものだったな。

「あっ……俺の魔法で仕舞っておきましょう……か? 時間経過しないっぽいので」

「おお、それは助かるな」

 という事で受け取って収納。あーだこーだとしている内に結構時間が経過していたのだろうか、のそのそとガレオスがやってきていた。遠目からでもガタイの良さと目つきとで何となく判別が利く。


「? ああ、なんだサクヤか」

「おっリーダー! やっときたっすね」

「おう。普段はアステールに殆どやらせてるが……そうもいかん書類だったからな」

 アステールという聞きなれない言葉が出てきた……がまぁ文脈から推察するに以前言っていたあれか、ギルド管理者としての事務仕事の大体をやってるとかなんとか……っていう。ギルドの書類系統の仕事を肩代わりって大変そうだなほんとに。

「カラマリの提案でな、一緒に狩りをしてたんだ」

「ほー成程な。何か獲れたか?」

「サクヤさんの魔法で仕舞ってるが……やっぱデケェのばっかだな。マジェスティートラウトとかその辺」

「ほー」

 さっきの魚こそがあれだったのか。噂……と言っていいのかは分からないがここに来る途中で教えられたマジェスティートラウトとかいう魚だったのか。勧められたものだしな、食べる事が出来たらいいな、流石に興味がある。

 呑気な事を考えながらガレオスも合流した形で狩りを再開することにした。現在時刻は知らないが体感的に十時とか十一時とかその辺だろうからもう少し借りを続けたら昼って流れになるかな。


 狩りをしている最中に頭の中に何かが聞こえてきた。何事かと注意して聞いてみる。女神の声だった。

 こっちから話しかける事が殆どだったから少し吃驚してしまい、行動を共にしていたイドロヴィアの人達に「?」と怪訝な目を向けられた。

 顔に出さないように脳内で女神と会話をする。

『サクヤ、今すぐそこから離れよ!!』

「?」

『早くっ!!』

 切羽詰まったかのゆおな女神の言葉が響いたのも束の間である。何やら地響きのようなものが発生し、俺はバランスを崩した。同じようにイドロヴィアの人達も倒れたりはしていないが何があったと辺りを見て確認している。

 地響きの所為だろうか水面が大きく揺れて更には泡が出てきている。

『……間に合わんかったか』

 女神が項垂れるように呟いた。


『グォォォッ!!』

 大きな鳴き声を伴いながら水中から何かが這い上がってきていたのだ。

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