72話 次の日
食事を終えて俺はギルドを出た。これから寝床を探さねばな。ひとまずガレオス達に宿泊施設の場所だけは聞いた。
「ええとこの辺だよな」
橋を渡って移動するというシステムには何かまだ慣れない。とは言えまぁ方向音痴という訳ではないので一応それらしい場所に辿り着けた。何か色々起こりすぎて本当に疲れた。一日に凝縮されていい内容してないだろこれ、ほんとに。身体に関しては女神の魔法があるので別段どうということはないがメンタルに関しては結構ぐちゃぐちゃである。一度収納魔法でもってお金を取り出した。あれから飯に関しては奢られてばかりという事もあって金銭面はまだ大丈夫そうだな……。女神のお告げ的な言葉の所為で気が気でないけれど、流石に明日は狩りに出ないと生活が厳しくなりそうなんだよな……。
ひとまず宿に入って寝床につく。そこで毛布に包まりながら明日以降の動きを考えていた。取り敢えずは金稼ぎの為に狩りに出なくてはいけないんだけど……。女神のことだし流石に何かが起こる直前になったらどうにかこうにか教えてくれる……よな?
信じる他ない……別段女神である彼女を信用していない、という訳ではないのだけれどもそれでもそんな女神たる彼女でも未だに謎らしい悪い予感とやらが気になるというか不安になる。
それこそ俺が言われた言葉ではないが、ただの気のせいだったりしないのかな。今の所根拠らしい根拠は聞かされていない……というか多分女神本人にしてみても分からないのだろう。
「ううん……どうしたもんかな……」
明日の行動を考えるだけでも悩ましい。何かあった時の為に狩場付近とか街にいたいところではあるが、そうなると狩りのペースも落ちるだろうしなぁ。極力森とかのあまり他人を気にしなくていい場所で狩りを行いたいという気持ちがあるんだよなぁ。女神自信もそんなに気にしなくていい、とは言ってくれたが……。
考えても仕方のないことばかりを考えて、そのうちに脳みそが力尽きていたらしくすっかり俺は就寝していた。
次の日である。考え事をし続けていた弊害か寝れたとは言え少し体がだるい。流石にその程度で四の五の言ってられない。ていうか確か本来であればそこまで寝なくても今の俺であればあまり問題ない、という話だっただろうからプラシーボってやつかな。兎も角としてううん、と起き上がって朝ごはんをどうしたものかと考えた。ふと思い出したように魔法でもって収納したものを確認する。まだ食糧が残っていたのだ。そう言う訳で今朝に関しては朝ごはんはこんな感じで雑に済ませた。
「さて……と」
結局のところ昨日、就寝前に色々と考えていたけれども結論は出なかった。なので今から今日以降の行動というものを考えなくてはならないか。
そう言えば釣りしている人とかいたよな……と思い出した。昨日狩場に一人で行った時に見かけた記憶がある。狩りではないけれどもまぁゆったりとした形で得物を狙えるとあれば意外といいかもしれない。流石に港町であるし実際に釣りをする人たちが存在しているのであるから、どこかしらの店で釣り道具くらいは売ってるだろう。何処かは知らないけど。そんな訳で朝食を終えてすぐに狩場ではなくて街へ繰り出した。
繰り出した……ものの時間というものを全く考慮していなかった。この世界に時計という概念が存在しているかどうかは別にしても流石に起きてすぐに開店なんてことはそうそうない。故に閉まっている。
「そりゃ……そう……だよな」
唯一かどうかは分からないけれども開いているのはギルドくらいである。多分コンビニ宜しく二十四時間の体制を築いているのだろうな。地下に食堂がある影響かは分からないが早朝であっても人の数はそこそこある。ギルドの一階は基本的に受付窓口だとか談話用のテーブルが幾つかあるだとかで食事に関しては完全に階を降りなければならないというのに一階ですら人が見受けられる。
「流石にイドロヴィアの人達はいないだろうしな……」
正直な話ギルドに来たところで何も用事が無いというのが現実である。イドロヴィアの人達がいたら少し釣りについて話が聞けるかな、とかその程度の事は考えたが……。一応この町のギルドにもサラシアさんがやっていたように紙によるお知らせとかが壁に貼り付けてある。仕方が無いのでその紙を見つめていた。最初の街と同様に内容としてはレアモンスターの発見の報告だとかが主である。あとは強いて言えば食堂のメニューに関してもちょこっと書いてあるな。
まぁ飯食った後だから別にこれを見ても意味はないのだけれども。しかし、だ。この時間……つまり人々がまだ活動を開始するには早い時間である。その時間であるならば狩場で普通に狩りをしていても許されるかな? とそう思ってギルドを後にした。
思ったとおりに狩場は早朝であるためか人が少ない。とは言え皆無という訳でもないが。一応女神の言っていた雲行きが怪しい、というその言葉を忘れないように最低限の注意だけ払いながら狩りを開始するとしようか。
本当はゆったりと魚釣りでも出来たら良いんだけれども道具を買えるに達していないからなぁ。
さて一先ずは狩場にて相手の迷惑にならないようにサーチの魔法だけ発動させて他の冒険者との距離をとる。魚が獲れたらまぁ港町だしってことで万々歳な感じはするけれども今に関しては別段どうでもいい。取り敢えず何か獲れればいいかな。
「ええと……」
キョロキョロと辺りを見渡す。そう言えば魚は何匹も見たけれど陸上のモンスターってあんまりみた記憶ないな。何がいるんだろうか。っても向こうの狩場と同じで猪とかが基本になるのかな、確かあれ何処にでもよく見かける種らしいし。
「光は……こっちか」
この光の有効範囲というか視認範囲に関しては未だによく分からないのだけれども目に見える範囲にはそれらしいものが存在しないので、サイズが小さいかそれとも相当離れた場所にいるのかのどちらか、という事になる。目線的には少し下に感じるから恐らくは近くにいるだけだと信じたい……が。
本当に予測通り近くにいた。けれどもそれは向こうの街でよく出ると言われたグリーンボアらしくはないな。いや、見た目で言えば完全に猪であるのだがグリーンボアとは色味が違う。つまりは緑色ではないのだ。
サイズに関してもグリーンボアに比べてもっと小さい。グリーンボアも小さかったがアレは膝下くらいまでのサイズがあったのだが目の前にいる種はそれ以上に小さい。足首より少し上とかそのくらいで、なんならリスか何かかと言われたほうが納得できそうだ。
「……これほんとにモンスターか?」
ちょっと確保するのが怖いぞ。なんというかこう……実はモンスターではあるけど狩る事を禁じられてたりしないか?
小さい猪は俺の存在に気づくと一瞬驚いたかのような動きを見せてすすすと逃げようと動いた。サイズの所為だろうか、ちょっとかわいい。
ま、まぁ狩場だから大丈夫だよな、と思って殺すのではなくて保護する……みたいな感じで捕まえた。のだけれども当たり前ながら暴れる。やっぱ殺した方が良い気がしてくるけれども流石に……。いやでもこれ狩りなわけだし解体ってこと考えると殺しておかないとだめだよな……。
「……ごめん!」
魔法でもって一発。軽い音と共に猪はぐったりとした。若干血が滲んでいるのが分かる。あまりまじまじと見てはいけないなと思って仕舞いこんだ。見て見ぬふりというか……そんな感じで……。
今まではここまで躊躇う事も無かったというのに、サイズだけでこうも違うか。……まぁ確かにチワワが象ぐらいのサイズしてたら多分恐怖しか抱いてなかったかも知れない。サイズ感とは偉大だな。
さてなんやかんやで一匹を狩った? という形になっている。流石にこの小さいの一匹じゃ金にならないだろうし時間に関してもまだ店があくには早いだろうなという体感があるのでもう少し狩場にいることにした。
たまに空だったり辺りの風景だったりを見渡すが変化らしいものは無い。天気は問題のない晴れ模様だ。
さぁてもう少し粘らねばな。
今日忙しくて一文字も書いていない事に気づいたけど同時に仮眠で二時間くらい寝てた気もする。




