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68話 舞い戻る

 俺の顔色を見るなり此方の反応を何も聞かずに俺の服の襟をつかんで持ち上げられた。それでもってギルドの中に連行される。二回目のギルドだがこう……前とむけられる目線が大違いな感覚がする。ギルドの管理室に連れてこられた。どさっと投げられる形で降ろされる。

 イドロヴィアの人々に囲まれる形で問いただされた。軽い恐喝だろこれ。

「んで……テメェどうした?」

「どうした――というのは……」

 はぐらかすなよと叱咤を食らう。

 そうは言っても難しいんだよな、説明が。神様からのお告げがあったとか言って信じるような人たちにはあんまり見えないし……。かといって中二病宜しく「風が泣いていた」みたいな語りだしをするわけにもいかないし。どの道神様のお告げの事をそのまま言わないにしてもヒントを探るために何かこう……相談をしたい、とは思っていたからそれから聞くことにした。


「あの……こう……何か変わった事とかないですか?」

「変わった事だぁ?」

「変わった事って言われてもアバウト過ぎるな」

「ええと……何というかモンスターの様子とか天気とか」

 俺の問いかけに対してイドロヴィアの面々は頭の上にはてなを浮かべているのが表情から分かる。

「何だそりゃ」

「意味わかんねーっす!」

「意味は分かるが理由が分からんな」

「それ」

 イドロヴィアの人達の返答はこんな感じであった。俺が同じような質問をされたら多分何だそれっていう似たような返事をしていた自信しかないな。流石にもっと遠回りに言うべきだったか……? いやでもこれ個人的には遠回りのつもりだが。


「天気ってーと……強いて言えばこの前久々に雨降ったくらいだよな」

「でも雨くらい降る時は降るしなぁ」

 言い方的に俺がここに来る途中に経験したものだよな。これに関してはさして珍しい現象という訳でもないだろうから無関係かな。

「後なんかあるか?」

「無いっすよ」

「モンスターに関してとかは……!? こう……珍しいものがよく出て来るとか……その逆でもいいんですけど」

「うーん……」


 少し悩んでる様子ではあったものの答えらしい答えは出なかった。強いて言えばちょっとだけ小さい魚の買取が減り気味でついでにサイズ大きめの魚を多く見かけるようになった程度らしいのだが、これに関しては定期的に訪れる事らしい。


「ほんとにどうしたんだ?」

「何ていうか……その……」

 夢でお告げが……とか言おうと考えたのだけれども流石にそれは無理があるな。彼等と出会ったのは昼前後くらいだからその間に寝ているというのは矛盾とはいかなくともしっくりこない。

「……予感……みたいなものが」

「予感?」

「予感だぁ? んだよそれ」


「まだ……何も分からないですけど……こう不穏で……雲行きが怪しいと言いますか」

「雲は別に何もねーだろ。快晴も快晴だ」

 そういう事ではないが同じような反応を先程俺もしてたから何とも言えない。女神から中途半端というか二つの意味で触りといって差し支えない程度の情報しか受け取っていないからこれ以上話をしても結局不毛かな……。

「と……取り敢えず変化らしい変化がないなら良いんです! 俺だってまだよくわかってないので……」

 俺だってっていうか女神だってっていうかだけども。一先ずこの場を無理矢理収めた。それでもって何か分かり次第また伝える……という事で済ませた。今一度女神から何かを聞きたいと思っていたのだが、俺の顔色が未だに優れない状態のままであることを見かねてかイドロヴィアの人達はまだ俺に絡んでくる。いやチームというか……主にガレオスが、かな。再び俺の服を掴んで持ち上げられる。俺自身の背丈が平均的でかつひょろっこ事とガレオスが筋骨隆々なこともあってバッグを持ち上げるかのように当たり前の動作であった。


「取り敢えず食わすか」

「出たリーダーの十八番」

「んだとテメェ等」

「まーリーダーの飯は美味いっすからね」


 わははと笑いながら一人だけ持ち上げられる形でギルドの管理室を出てそのままの流れで再び地下室に連れていかれていた。地下食堂に向かっているのである。時間だけで言えば何だかんだと言って六時間とか経過していたから夜ご飯としては適当かな。

 別段飯食ってどうにかなるってものではないけれども気分転換くらいにはなるかな……?


「あれでもリーダー。魚あったっけか?」

「ん……あぁそう言えば昼間のは皆に食わせちまったか」

 未だに服を掴まれたままである。

「保存してる奴ないっすかね?」

「いや、あっけど気分的には新鮮なのが良いな。まだ時間あっから行くか!」

 そう言いながら結局俺を掴んだままガレオスは狩場の方まで歩いていこうとしていたので流石に止めさせて貰った。少なくとも何処かにこのまま出掛けるというならせめて降ろして欲しい。幾らなんでも歩けるからな。

「ああ、まぁそーだな。テメェは取り敢えず食堂のどっかで座ってでもくれりゃいいか」

「っすね」

 と言う訳で再び別行動となった。


 イドロヴィアの面々が狩りに出かけた事で俺も一時の余暇という物を得た。ガレオス等が狩場に向かってそれでもって見えなくなるくらいまで遠ざかったのを確認する。

「……これなら移動してもまぁ大丈夫かな」

 彼らの好意を無下にするという意図は特に無いがけれども黙って呆然と食堂にて待機、なんてしていられない。移動を開始して人気の少ない場所を探した。女神との念話をするだけならさして此処でも問題ないが、これをやるとなると流石にな。


「此処なら……若しくは……」

 人気の少ない所かそれか人の数が膨大な所か。まぁ多い所じゃ何が起こるか分からないしまだこの港町にかんして詳しくないから下手な行動は出来ないが……。

 人気のない場所。具体的には建物の裏っかわで俺みたいなもの好きしかこないだろうなと思う場所だ。


 まず真っ先にこの場所を記憶した。建物の大きさと色とあとは周りの景色と。ここを記憶しなくては始まらない。……よし。


 それでもって今度は記憶でなくて想像だ。イメージするものは見慣れた場所。あの街……の路地裏。

 魔力を全身に巡らせる。それでもって小さく呟いた。

「テレポート」

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