67話 逃避行も出来ずじまいに
このまま狩りをしてても良いものだろうかと気が気でなくて、移動するだけでも何というか集中できなかった。その状態で何かするのもなぁと思ってしまったので狩りはやめることにした。取り敢えず何か変わったことはないかと狩場の散策に出た……のだけれども、何か変わった事と言われても変わる前を知らないので違いもくそもないな。
下手に他の人間に伝えたら混乱するだなんだと言ってたが、イドロヴィアの面々くらいには伝えてもいいのではないか……あいや。
駄目だ。まずもって何より信じて貰えないというか……何でそんな事が言えるのか、説明が出来ないからだ。幾らなんでもそのまま女神から言われました! と答える訳にもいかないしな。これに関しては何方かといえば女神に頼む形で伝えて貰う方が良いだろう。
まさか地名がどうのこうの聞くだけのつもりがそんなことどうでも良くなったな。ていうかそれどころじゃないだろうからな。
一先ずはこの森から出ることにした。森に入ってから大した距離を歩いていないので帰り路に関しては問題ない。狩場に戻って人気の多い場所まで歩いてみるとモンスターを狩っているらしい冒険者の姿が遠目にちらほら見える。呑気なもんだな……いや知らされていないのだから当たり前なんだけども。
もやもやとした状態で狩場から更に歩いて町に戻る。
「う、うーん……どうしたものかな……」
ついさっき女神との会話を終えたばかりだし……というか女神に相談しても何にもならない。これからの行動をどうしたものかと悩んでいる。
「と……取り敢えずすぐに行動が出来るように……いるべきか」
お金に関してはまだ余裕があるから今日狩りしなくてもまぁ大丈夫だろう。それに街自体に慣れておいた方が良いだろうから、今日の所はこの港町の散策がメインだ。
普通ならこういうのって旅行気分とかでいれただろうに女神の爆弾発言によって、何かこう……街のどこかに仕掛けられた時限爆弾を探す刑事とかそんな感覚がする。
狩場に関しては明日にでもいけばいいやと思ってギルドの周辺に一度戻るか。それでギルドを中心に散策するとしよう。しかし……女神はあくまで雲行きが怪しい、という発言だったよな。流石に場所は港町付近で確定しているだろうけれども、大災害が起こる可能性もあるのか……? 頭の中のイメージとしてはこう……やばいモンスターが出て来るとかそんなものを想像していたのだけれども、港町という特殊な町構造を考えると……モンスターばかりではなさそうだな。
それに関してはどうやって止めるんだ? 一応テティス曰く俺とイドロヴィアの人達とで何とかなる、という事だったし流石に大災害ではないのかな……?
考えても仕方がないのは分かるのだけれどもそれでも気がかりなのである。
大災害ってことなら雲の状態とか海の状態とか素人目ではあるがそれくらいなら何かしら分かるのではなかろうかと思って港町の中でも外側の海に面した辺りを散策した。
最初来たときは迷ったけれども流石に海がよく見える場所に辿り着くだけならそこまで難しくはない。雑に外側に向かってる橋を選ぶだけだからな。
「空も海も普通に見えるんだよなぁ……」
空に関しては雲こそあれど快晴と呼べるものであるし海に関しても……そんな大きな波があるとかは見えない。ほんとに何か起こるのか? と思わず女神を疑いそうになるほど平和に見える。
町の人達に関しても特に不安気を表したような人というのは無い。笑顔ばかりである。
「ううん……杞憂だと良いんだけどなぁ……」
まぁ町の人に変化が出るレベルだとしたら女神からも何か分かってるはずだもんな。
ある程度町を散策したがまぁ当たり前ながら何もない。完全に無意味だったかな。今一度ギルドに戻って休憩ということにした。女神の魔法のお陰で肉体的疲労というものはかなり感じづらくなっている筈なのだけれども、精神的には結構疲れた。後脳みそも。流石に何かが起こる、という事自体を伝えれなくとも何かしら相談くらいはガレオス達にしたいんだよな……。
いや、ギルドって性質的に俺みたいな人間が休める場所じゃなかったわ。性格が明らかに真反対の人間がたむろしているから寧ろ精神擦り減らされるわ。大人しく俺は別の場所まで歩く事にした。再び海である。港町という呼ばれ方をしている事もあって適当な場所からでも海は見える。まぁ見え方の良し悪しとかはあるけど。
そんなわけで意味もなく海の方向を眺めながら黄昏ていた。出来る限り人と出会わない場所で。出来る限り頭の中を空にせんと、そうしていた。
「……」
暫く海を眺めていたのだけれどもしかしただただぼうっと何もせずにいる、というのも結局落ち着かなかった。誰かに話したいけれども……話せる相手らしい相手はいないし……そもそも信じて貰うという段階で問題がある。意味もなくそこいらを行ったり来たりで繰り返しているうちに時間が経過していた。それで気付けばギルドの前に到着していた。
偶然だろうか運命なのだろうか、同じ頃合いにガレオス達も仕事を終えたらしくてギルドに戻ってきたところだった。俺の姿を見つけて反応する。
「おっサクヤか」
「ん? 顔色悪そうだな?」
「え……あっ」




