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58話 狩場で出会った男

 港町にきて真っ先に行う、というか向かう先が狩場と明記するとまぁそれはそれは冒険者然とした立ち振る舞いで、と思ってしまうけれども仕方がない。道のり的には橋を渡っていくのと時間的な違いはそこまで無さそうであるし道のりという所で明瞭なのは此方だろう。

「っても海に近いとは言え陸だもんな……何がいるんだろ……」

 魚は……海に面してる辺りなら何かしら存在するのかな?とは言えその狩場、陸とは言え途中を川で区切られているらしく橋が描かれていたので若しかしたら川で何かできるのかな? 兎にも角にも川を渡るには橋を渡るほかないのは確定である。


 狩場についた。サーチの魔法で以て何か狩っても良いけれども他の人の獲物を捕る羽目になったりしては良くないしそもそも今真っ先にしたい事が狩りではないので、発動はしないでおいた。冒険者が当たりに見えるその地を冒険者でありながら狩りをしない目的で進んでいく。

 ちらりと他の冒険者達の様子を見ているが当然ながら得物を探す者もいるし雑談っぽいものをしてる冒険者も見える。遠目に何かモンスターっぽいものも見えたけれど少なくもこの距離から判別できる限りではボアっぽいな。やっぱりここでもちゃんと存在はするのか。


「橋……橋……」

 案内看板として描かれていた地図に関しては当たり前であるが大分サイズを小さくしているし更に言えば的確なこう……比率とかがきっちりとした状態で描かれている訳ではないのである程度の狂いが存在している。簡単に言うと地図で見た雰囲気に比べて陸の道意外と長く感じる。


 まぁ狩場だから大きいに越したことはないけれども。ついでに言えば川に関しても想像と違った。大きさも勿論ながら相当あるのだけれど、、地面と同じ高さでまぁつまりは入る事が可能になっていた。

 何人か入ってる冒険者の姿も見える。……とは言え水浴びだとかではなくて普通に獲物を探している様子だが。見る限りでは膝上くらいまでの高さのようだ。

「何か狩りっていうか……銛っていうか……」

 そんな光景が広がっていた。何人かは手にそれらしい、槍状の物を構えているのが見える。

 橋は狩場に二カ所あって川の真ん中あたりと所と川上側にもう一つある。海に近しい所には存在しないようだ。海側に作ればいいのにとも思うんだがな。橋が近いのは当然に川の中央にある橋にはなるのだけれども海の状態が気になったので其方も見てみることにした。


 海が近い川の付近では冒険者らしい人達が何故だか少なかった。そっちに近づいていく俺の方を何故だか冒険者たちは不思議そうな目で見てきていた。どういう事なんだろう。港町だし狩場だし、で結構魚とかみんな捕えたがらないのかな?

 浅瀬であるはずなのだけれど、不思議と波が荒れてるように感じる。橋の上から川を見下ろした時とはまた違って何というか川が揺れている……というか。警戒をする意味合いで少しだけ右手に魔力を籠めておく。いざという時の為に何かしら魔法を発動出来るように準備した。

 するとどうだろうか、一気に波が高くなる。まるで津波というほどに。ごう、ごう、と波の音が強くなったかと思うと川に大きな水面が出来上がる。

「!」

 ざばぁと音を上げて川の中から何かが出てきた。太陽の逆行でその姿はきちんとした形では見えないがそれでもフォルムと出てきた場所から魚であろう。

「うっうわぁ!!?」

 大きさは多分俺の何倍も大きい。それこそ下手したら象とかのサイズくらいありそうな巨体をしている。見た途端に絶叫し右手の魔力をそのまま我武者羅にぶつけた。


 どおんと大きな音がして川から這い上がって宙を跳躍したその魚は俺の魔法を受けて更に上へと持ち上げられた。水しぶきが辺り一面に飛んだ。

 それと同時にどこからともなく大きな声が響いてくる。


「おい危ねぇぞ、テメェ!! 避けろ!!!」


「えっ」


 しかしその声に気付いた時には遅かった。俺の目の前には視界いっぱいの水のエネルギー。それを顔面からもろに食らった。

「ばっ……か野郎!! オレァ手前を殺す気なんて無かったってのによぉ!! ……あん?」

「いってぇ……」

 鈍痛。そんな痛みが顔を中心に残ってる。魔法否定のアレが無かったら死んでたんじゃないのかアレ

「……テメェ、何で生きてやがる!!?」

「え、あ……いや」

 対岸から大声を張る男の姿があった。随分とガタイがいいのが遠目からでも分かる。どうにも魔法をぶつけてきた張本人らしい。


 男は足に力を入れたかと思うとぴょんと跳躍して結構な幅があろうはずの川をジャンプ一つで飛び越えて見せた。とても当たり前の様子でやってのけたのだ。唖然としてしまい、ぽかんと口が開く。けれども男はお構い無しに此方に歩み寄って声を掛けてきた。

「おい、大丈夫か!!?」

「えっ……あっ……」

 声を掛けられた事で茫然としていた意識が取り戻されてちぐはぐな反応を返してしまう。

「ええと……まぁはい、大丈夫……です」

「でもテメェ、確かにオレの攻撃モロで食らってなかったか!?」

「えっ……いやほらでも無事なので……」

 依然として状況が今一つ飲み込めなくて言葉がつっかえてしまう。

「まぁ見た所怪我らしい怪我とかは無さそうだが、明らかに服襤褸くなってねぇか?」

 確かに俺の体自体は魔法でもって丈夫になったが身に着けている衣服に関してはそんな耐久力上昇みたいな効果は当然ながらついていない。故に服はダメージを負っていた。いやまぁここまで来る途中途中でたまに解れとかあったけれどもしかしながら今さっき食らった魔法がその服に重傷を負わせた事に間違いはない。誤魔化しはきかないか……。

「まぁ……そのちょっとした魔法みたいなものでして……」

「あ? 魔法だぁ? オレの魔法を全部消すってか!?」

 声大きいし近くで見るとよくわかるのだが、この男三白眼で目つきが鋭く何というか威圧感がある。それこそ雨宿りの時に出会ったあの男ともどこか近しい雰囲気を感じなくもない。


「そ……それはそういう魔法としか説明できないと言いますか……」

 魔法否定に関して言えば完全に俺の口というか俺の知識の範囲内での回答は出来ないので本当にそう答えるしかない。更に言えば彼の威圧感で只管に心臓がびくついてる部分もある。これでも目を見て一応返事が出来ているから女神の力というかでメンタルも一応アップしているのだなとは思う。

 男はちらりと何処かを見たかと思うと自らのこめかみをぐぐ、と指で押すという独特な動きを見せた。それからふぅ、と息を吐く。

「んだそれ。……ああ、いや、そうだったな。すまねぇ、真っ先に謝るべき何だがテメェがぴんぴんしてる事実に引っ張られちまったよ」

 言いながら男は頭を下げた。結構律義というか教育というかはしっかりしているのだろうか……。兎にも角にも冷静になったらしい。


「服も襤褸になっちまっただろ、弁償する」

「え、ああ、いやでもそこまでして貰わなくても……」

「俺の気が済まねぇんだよ。アンタ今から時間あるか? それとも狩りの途中だったか?」

 全く狩りの途中のつもりは無かったが場所が狩場だからそう思われるのが自然の流れか……?

「いや……ちょっと狩場見ながらギルド付近を尋ねようかな……と」

「成程な。なら丁度いいな」

「?」


「港町にあるギルドの管理者は俺だよ」

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