57話 港町の橋事情
雨宿りを共にしたガタイのいい男と別れた後は少し早歩きで進んだ。これは単純に雨宿りでくらった足止め分を取り返そうとする動きであるとともに二日半、と言われたので其処に関しても急ぎたくての行動だ。ついでに言えば女神のお陰で疲れが殆ど感じないのだ。だからこうして多少体力を削る動きをしてもまぁ大丈夫であろうという判断である。
雨が止んだとはいえ地面は濡れており土が見えてる部分なんてのはぐちゃあ、とした泥の状態なので踏みたくない。そのすぐ横の草の上を只管歩いていた。
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あれからまた二日程の日が巡った。段々と港町に近づいてる事が冒険者にすれ違う数の多さで理解できた。あからさまに増えておりその数が増える事で一人で尚且つバッグすらないラフな格好の俺を冒険者共は怪訝な目で見る……かと思いきや一瞥程度であった。単純に冒険者として理解されていないのだろうか。
途中で悪路が続いたがここまで来ると完全に道が整備され出しているようで、幾つかに枝分かれした道に関してもご丁寧に案内看板が立ててあるし、土の道ではなくて石畳の道が今はまだ無いが遠くにソレが確認される。
「おお、ようやく近づいてきたのか……」
石畳だけで走り出してしまいそうになる。というか実際問題走り出していた。港町、というだけあって潮の香りが気持ち程度に感じる。まぁ俺がそう思いたいだけなのかもしれなくて実際にはそんな匂い無いのかも知れないけれど。
兎も角として目的地である港が近い。冒険者の数もそうなのだが同時に川が近くに見えており、それが道と並行して伸びているのが分かる。川と言っても小川ではなくて反対側に渡るには橋が必要になってくるくらいには大きな川であるしそれもよくある自分より低い位置に存在している所謂草原の坂の下に出来ている川だ。
「落ちたら死にそうだな……」
どっどっどっ、と川の音が聞こえる。流石に危険だからであろうか、草原の坂に関しては入れないように木の柵が建てられている。ので心もとない感じもするが一応は対策がなされているらしい。
川の途中にあった大きな橋を渡る。これまた雄大という印象を受ける。
「うおお……」
橋から下を見下ろすがやはり雄大というか、強烈である。その川には少なくとも魚とかいるようには見えない、その位には川の流れに勢いがあるのだ。ここまで来たなら恐らくあと少しで港町の中心部につくであろう。
流石に大差ないだろうと思って橋を渡り切ってから対岸の道を進むことにした。取り敢えずで向かう大まかな方向としては中心部であるがそこで具体的にどこに向かうかを決めてはいない。
「……お腹すいたな……」
取り敢えず食堂が最優先になるだろうか。
道を進んでいくと段々と川の比率が大きくなるというか陸地が少なくて港町だからだろうか飛び地のような場所が多く見受けられた。それらを橋で繋いでいるのが見える。ここまで来ると川ではなくて海と呼んで差し支えないだろうか、流石港町である。
「これなら大きな飛び地の島が中心部かな」
多分大きな島の方が一か所に重要そうな建物とか収集し易そうだし。そう言う訳で飛び地にかかる橋を迷路かのように渡り歩きながら進むことにした。
「あ……れ?」
橋を渡っていたのだけれども気づけば行き止まりというか渡ってきた橋以外の橋がない島に辿り着いた。飛び地とはいっても最低限の大きさは存在しておりそれこそ家やらちょっとした店やらがその一島で存在はしている。
「ありゃ……こっちじゃないのか」
思いつつ島から広大に広がる海を見た。
遠くの方に同じような島が見えるがしかし橋が架かっているように見えないし何より木々が見えても建物が見えないのであそこは開拓されていない地ということになるのだろうか。確かにここから見える限りの情報にはなるが結構遠くに見える。
「……戻るか」
どれくらい戻ればいいのかは分からないので一度完全に……それこそこの大量の橋を渡るよりも前の所まで戻ることにした。
そういう訳で一度冷静になるために来た道を戻ってから辺りを見渡す。中心部がどの辺りか、先程自分が通った道のりはどうであったか、を思い出しつつルート選定するのだ。
「いや、そもそももっと簡単に辿り着けるかもしれないな」
中心部に辿り着くだけなら自分の勘なんか宛にしてはいけないのは当然であったが、それはそれとして最適な方法があった。それ即ち冒険者である。簡単に言うと冒険者がどこからやってきたのかを探れば基本的には中心部に辿り着けるのではなかろうか、という判断だ。方法としては先程から実はすれ違ってる冒険者たちを遠目から探して彼等が行く方向とは逆の来た道を辿れば良い、というものである。勿論この方法で確実とはいかなくともそれでも高い確率で辿り着くことが出来るのではなかろうか。
と思ったのも矢先。
案内看板があった。
「……あんのかい」
見てみた所、きちんと港町全体とその周辺が大きく書かれており現在地からどう橋を渡ればギルドまでたどり着ける科に関しては線でご丁寧に描かれている。
「意外とギルドまでは遠いか……お」
ギルドまでたどり着くには結構な距離をまた歩くことになりそうだ。サラシアも港町に入るだけなら~みたいな若干濁したかのような言い回しをしていた記憶があるがこういう理由だろうか。代わりにという訳ではないが近くに狩場があるらしい。更に言えばこの地だと海という事もあって釣りスポットであるとか少し歩いた所だと水浴びが出来る場所も存在しているらしい。海の良いとこ取りか。
「ま、兎に角ご飯だな、うん」
とは言え何処が良いのやら分からないしこの地図に関して言えば食事処なんかが書いてあるわけではないので自分の足で探す他ないのか。
「ん……?」
よくよく見てみるとここから近くにある狩場は陸続きの場所にあって、カーブを描いてるような形をしており狩場の反対側はギルドのある島と橋で繋がっているのが見える。
「んーこれなら狩場から歩いた方が分かりやすいかな?」
多分ギルドの付近なら選べる食事処に種類も出て来るだろうから……そこの方が楽な気がするんだよな。
そんな結論を片手に俺は狩場まで歩くことにした。ついでにこの地のモンスターに出会えればいいけど。




