51話 旅立ち前によった場所
店を出てそこから何をしようかな、と考えたけれど特に思い浮かばないしと暇つぶしのような感覚でギルドを訪れることにした。
流石に裏口の解体所に行っても本当に冷やかしにしかならないから表入り口である。いやまぁ表でも若しかしたら冷やかしと思われる可能性はあるけれどもまぁ、兎も角として。
正面からギルドに入ると裏口と比べて一目瞭然な差で冒険者が多い。基本的にはちょっとした溜まり場のようになっているらしく、テーブルでもって談笑をしていたりパーティー勧誘をしていたりあとはギルド内の掲示板にあるお知らせ何かを確認している輩も多い。それから二階は宿泊施設があるようだが、今のところは訪れた記憶が無いんだよな。そもそも他の冒険者ってなんだか複数人で一チームみたいなのが多くて何というか一人でとまるのが憚られる感覚がある。
掲示板ではレアリティの高いモンスターの報告やらギルドからのお知らせやらが貼ってあってちょこっと覗いてみると先程サラシア似見せて貰った俺の失態についての事も書いてあった。
俺の格好は兎も角それ以外で注目らしい注目を受けないのも見る限り取り敢えず俺が犯人であることはちゃんと伝わっていないようで安心した。更に言えば他の冒険者とは違って俺の場合は魔法で捉えた獲物に関しても仕舞ってここまで運べるとあってそういったレアモンスターを狩ってきた人、みたいな見られ方もしていないらしい。
というかレアモンスターの情報の幾つかは俺が買取にだしたものであるのが分かる。やはり森で狩る事が出来たあのモンスター達は珍しいようである。まぁ売値高かったから当たり前か。
それでもってその張り紙と共に売値の相場のようなものが書かれている……が今の所森に入って行く冒険者は俺以外に見ていないからどうなんだろうか。ああ、あとは蛮勇にもロイが突っ込んでいっていたかな……。横やら後ろやらでも森のモンスターについての会話がちらほら聞こえてる。
「ヒュージボアだってよ。やべーな」
「めっちゃ高値つくじゃんん。行こうぜ」
「いや無理だろ、あれ森モンスターだろ」
「やっぱヴァインスネーク見つかってんじゃん」
「言っただろ、あそこの森には出るぞって」
「いやーやっぱ森は駄目だな」
「最近レアモンスターの報告多いよな」
「でも大概森のスポーンじゃん」
「誰か物好きがいんのかよ」
やっぱり森で狩りをするのはセオリーから外れているらしい。まぁだからと言って森で狩りをやめるつもりは……ないが、明日明後日には港町に向かう事になるからもしかしたら今日限りかも知れないが。
他にもテーブルで談笑している冒険者たちに聞き耳を立ててみても不思議な事に心当たりがあるような話が聞こえてる。
「お前フィレナちゃんみたの」
「見た見た。草原のさ、奥の方でそれっぽい人影がいたんだよ」
「え、それ何時だよ」
「一昨日。ほら、あれ……あの光が昇ってたってやつの時」
「え、マジか!!」
完全に俺がやらかした奴だな。もう少し居着こうかと思ったのだけれどそういった話を聞いていたらそのうち襤褸が出てしまうんじゃないかと若干の不安を覚えたのでこの辺りで見切りをつけてギルドは出ていった。去り際の俺には誰も目をくれないようで何よりである。
気付けば段々と夜になっている事に気づいたので夕食を済ませてから本日の宿へと向かった。食事処とは違って何となく此方に冠しては冒険する気力が湧かなかったので昨日と同じ宿に泊まらせてもらった。空いてて何よりだ。宿の店員に聞いてみる限り、この街は冒険者の出入りも多いがそれ以上にここが生まれ故郷という人が多いらしくてまぁ端的に言うとここに持ち家があるということらしい。つまり宿に泊まる必要がないという事なのだとか。
「さて……と……ほんとに物は……大丈夫だよな?」
改めて収納魔法の中身を確認する。そこには旅の為に購入した食料が数多く存在していて、それからナイフやらあとは昨日からぶちこんであった枝もある。凍った枝に変化らしい変化は見られない。本格的に時間経過が起こってないとみて良いだろうな。
それから必要なものが揃っているか、という確認をなんだかんだで二、三回くらいしてから就寝した。此方の世界に来てから若干生活習慣に関しては良くなったんじゃないだろうか。やる事が無くて尚且つ明かりという文化に関しての発展もあって夜に出歩くというのが中々危険であるのだ。取り分け夜に狩りとなるとモンスターやらの右往左往に気づきにくくなるし普通に森とか草木が邪魔過ぎてはかどらないだろうな。
という事で寝る。明日はようやく……旅……に出てる筈だ。
そうして次の日になる。
中世ヨーロッパの文化というか生活様式がどんなものかは知らないけれども少なからずこの世界の寝具は結構しっかりとしている、という印象がある。鳥系のモンスターも結構数存在している、という事なのかは分からないけれどもベッドはふかふかだった。
昨日と同じ通りに宿を後にして、朝食を終える。それからギルドの裏口に真っ先に向かった。朝早くから解体所では多くの人が何やら作業してたり談笑してたりで、何ともご苦労な事である。俺は受付に紙を渡してそれから作業テーブルの方に案内された。
「ほらよ、今回の買取金額。ええと価格がだな――」
一通りの説明を受けて麻袋を受け取る。またもお金が増えたので有難い限りだ。これだけあればまぁ大丈夫だろう。とは言え行く前に流石に挨拶しておきたい人がいるから、そちらに向かった。
挨拶をしておきたい人物、となるとまぁ他にもいるけれど今のところは一人だ。ロイである。彼女の親にこそ伝えはしたがしかしながら彼女自身には何も言っていないのである。まぁ親から伝わっている可能性もあるだろうけれど、多分彼女の事なので挨拶くらいはしておかないと再びあった時にどうなることやら、という思いがあるが故の行動である。




