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47話 水魔法便利かもしれん

 港町に向けての旅に向けての買い物として真っ先に寝袋になりそうなものを購入した。転移の魔法でこの街やらに行ったり来たりする方法も考えたのだけれどもどうにも俺の魔法は場所の記憶が曖昧過ぎると不可能らしい。一度路地裏から森の中まで一気にとべないかと試みたのだが駄目だった。流石に街から街へとなると人の道でないところも通ることになるだろうし、今のうちに慣れておく必要もあるだろうという事での購入だ。

 ちょっと丈が長めの服がそれこそ寝る時の掛布団の代わりになりそうだったのでそれを選択した。敷布団はないけど……まぁ最悪クッションか何か買うかな。あるのか知らないけど。

 置いてあった。色々と使い道はあるだろうから購入はしてよいだろう。あとは……ナイフは買ったし食料周りとかかな。あとは飲み水とか……あと食器も買うべきかな……。

「買いだめって言ってもどうなんだろ」

 持ち運び、という事で言えば俺には収納の魔法がある。上限は分からないけれど今までの感覚からしてそれこそ五日分の食料を入れるのは余裕だろう。しかし五日分の食料が入ったからと言ってそれで全て解決ではなくて、食料はクッションやら服やらナイフやらとは異なって鮮度という物が存在する。まぁつまり、収納の魔法に入れてた場合食料はその魔法の中で時間経過していくのかどうか、という問題だ。ついでに言えばこの魔法の中、温度の状態も謎だ。今の所は狩った得物やらなんやらしか入れてないから分からないのだけれど、例えば氷とか入れていた場合は溶けるのだろうか……。


「いや、待てよ」

 少なくともこの時点で可能性として一つある。今までの経験から確信して言えるのは……というかまぁ当然といえば当然なのだが、取りだしたアイテムは全く冷えたりしていない。元々常温だからである。とするならばこの魔法は少なくとも冷蔵なんてものは備わっていない。まぁ備わってたらそれはそれで困るが、兎も角としてであるならば例えば氷を入れてみて時間経過で溶けていれば少なくともこの収納の魔法の中でも時間経過が存在する、という事になる。その逆に溶けなかったら時間経過は存在しないとみて良いのではないか?


「実験がてら氷が欲しい所だな」

 しかしながら氷ってこの世界で買えるのか? いやでも流石にこんだけ食事事情が発展しているのなら置いてあるかもしれないな。多分冷蔵庫の代わりの概念とかもあるだろうから……。

「っても何処で買えばいいんだ?」

 元の世界でも氷なんてまぁまぁ特殊なもの、家の冷蔵庫で作るかスーパーで買うか位なもんだった気がする。生憎とこの世界にスーパーなんてものは存在しない。野菜を売る店ならば既に見つけたけれどどっちかといえば八百屋みたいな感じがする。


「最悪氷の魔法とか使ってみればいいのかな」

 したことないし、使えるかも分からないけど。そもそも水の魔法にしたってそうなのだが、あれこの世界の普通の水と同じなのか、イマイチ分からない。それこそ水の塊を普通に当てただけでは起こり得ないような威力だし……。

「それも含めて実験したほうが良いかな……」

 食糧の調達に関しては後々になるから色々と魔法で何が出来るかを確認したほうが良いかな。


 そいういう訳で街から一度出て草原……には行けないので相も変わらず森である。どこぞの少年たちの空き地レベルで出入りしている自負がある。

 適当にそこそこ開けた場所を探し、辿り着いてから手を握って開いてをして見つめる。それからイメージを固めだす。まずは水の魔法である。いつもなら攻撃として生み出して目の前にぶつけるけれども今回は飲み水に出来ないか、という検証であるのでもっと柔らかな想像をしてみる。

「もっと……こう……水をだすだけのものを……」

 イメージしていくと最終的にRPGとかでレベル10とかで習得しそうなものが浮かんでくるが今はまぁそれでいいだろう。あれだな、最初に森に来た時に目印として使っていたあの水を下に落としていたアレ、アレを更に威力を弱めたみたいな感じで。

「ウォーター!!」

 これ以上何かをつけるとイメージが攻撃に寄り過ぎてしまう気がしたのでここで打ち止めにする。水の玉が右手の平の上にぷかぷかと浮かんでいる。見た目は……アクアボールと叫んでいる平時と変わらないように見えるな。試しに左手の指でつんつんしてみるが特に痛みはなく、指はそのまま水の玉の内部にまで普通に入った。

 一度指を取り出したところ指先に雫が滴っており試しに指を加えてみた。……よく考えたら水なので味らしい味は無いが、同時に無害そうなのも分かった。少なくとも飲める……気がする。

「ええっと……何かシュールだな……」

 そのままゆっくりと口を近づける。舌先を僅かに触れてみる。特にしびれなどは起こらない。強いて言えば舌が攣りそうではあるかな。取り敢えず問題が無さそうなので今度は一口程飲んでみた。

「……水道水……というよりはミネラルウォーターの方が近そうだな」

 よく考えたら水道水ってなんか処理されてからきてるんだっけか? 兎も角飲んでも大丈夫なように思えるから一先ずその水は飲みほした。


「普通に美味いな……何かシュールだから人前では出来ないけど……」

 少なくとも上手に水筒の様なものにでも入れることが出来たら問題ないだろうな。多分それなら流石に売ってるだろうし、追加で買っておこうか。あとは……氷か。

「氷ねぇ……」

 風の魔法と水の魔法と後色々と。使える魔法がかなり広いのは理解しているがはたしてどうだろうか。まずは分かりやすく手から氷のビームを放つイメージで手を構えて、取り敢えずどこに向かって打つかだけ迷ったので地面にした。下手に木に放った時、ちょっと失敗すると思うと怖い。

「ア……アイスビーム!」

 小学生でももう少しまともなネーミングをするだろうが何にせよ手の先からはビームが現れて地面に当たり、そのまま凍っている。出来る限り威力を弱めたつもりで放ったが、どうにか上手くいってくれたようだ。

 触ってみた所、非常に冷たくて下手に触り過ぎたら凍傷になりそうなのでやめた。雪ではなくて凍っている状態で、こんこんと手で叩いて分かるが結構固い。周りの地面毎掘れば剥がれはするだろうが。それをするくらいならシンプルにもう一度出した方がいいだろう、と今度はそこいらの木から伸びている枝に向かって放った。威力を下げた事もあって枝付近だけが綺麗に凍ったのを確認してからぽきっと折る。それからその木を取り敢えず手に持って森を出た。単純に開けているとはいっても陽の光がイマイチなので、もう少し直射日光に当てておこう、というソレだ。

「……おお……」

 時間はちょっとかかった気がするが、完全にではないけれど僅かに溶け始めているのがわかる。体感で大体一時間か二時間程だろうか。僅かに溶けてる雫が見える。

「取り敢えず溶けるなら実験価値はあるかな……?」

 でも日に当ててこれって長くないか? 収納の魔法の中で時間経過が存在しているかどうかは分からないが少なくとも日が当たるとは思えない。それこそ今から入れて明日になるまで待つくらいしなくてはならないだろうか。

「長いな……」

 雫が付き始めた枝を軽く振るってその雫を落としてから収納の魔法でもって入れた。雫は消えたのでこれで次ぎだす時に雫があったならば溶けている、即ち時間経過が存在する、という事になる……筈だ。


「結構時間食ったな」

 夕方が近づいているのが空の赤みで分かる。流石に狩りをするつもりは元々無かったし時間も時間だから軽く買い物をするなり夜ご飯にありつくなりすればいいかな。

 そうした考え通りに取り敢えずで追加購入として皮で出来た水筒である。それから使うかどうかは分からないが二~三枚程、木製の大きめの食器を購入した。買い物も一通り済ませて、完全なる夜である。食事処を探すとしようか。

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