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46話 仕事の鬼、サラシア

 どうにも仕事なんかで遠出をする際に、ギルドの管理者という立場であれば転移の魔法を使う、と言われた。そこで俺は引っ掛かる事があった。

 特例として、使うという部分。転移の魔法を特例で使うらしい。しかしながら俺という人間はその転移の魔法を使える。それでもってばんばん使ってしまっている……のだけれど? 更に言えば女神も既に俺と出会ってから数回は使ってくれている気がするぞ?

 戸惑っていると勝手にサラシアは俺の状態を解釈したらしく

「ん? ああ、転移の魔法は流石に知らないですよね」

 流石に知っている、と返すわけにもいかず説明を聞いた。しかし聞いてみると意外や意外というか想像していたものとは違う実態がそこにはあった。

「実際には転移の出来る魔法道具ですね。私の様なギルドの管理者等の立場にだけ使用を許されたアイテムなんですよ」

 魔法ではなくて魔法が使える道具、という事らしく俺が普段から魔法を使っているのとはまた少し形が異なるようだが起きる現象としては同じだという事は聞いてて分かった。何でもヴローシィの中でも3つほどしかないアイテムで、国全体での保管がされてるとか。使用はそれこそこういったギルドやらの偉い立場の人とかあとは大富豪だけに限られているらしい。ギルドの管理者だとかは兎も角大富豪も、というのが何とも異世界らしい。しかしながら同時にギルドの管理者にも許されている辺りにこのギルドという存在の大きさが実感させられる。


「ああ、念のために言っておきますけど、ギルドで保管されてるわけではないので持ち出そうとしても無駄ですからね」

 そんなつもりは毛頭なかったのだけれど、釘を刺された。まぁ少しどんなものなのか見てみたい気持ちはあったけれど、転移の魔法、ってことであれば俺も使えるしな。ん、いやでも待て? この転移の魔法ってもしかして人間に使える人いないのか?

「そう言えば……アイテムって事は……その、転移の魔法が使える人って存在しないって事なのですか?」

「? 何か含みのある聞き方ですね」

 言われて少し焦る。確かにこの聞き方、少し変だったか? いやでも……これは聞いておきたい事だったし。

「いや……別に……」

「……まぁ、貴方が悪人ではないのは理解できてますし、別段隠す事でも無いですから良いですけど……。そうですね、正確な数字までは分かりませんが魔法として報告は受けておりますかね。とは言えまだ数件というレベルではありますが……」

 成程、少なくともその魔法が使えるのは女神と俺以外にも存在はしてるらしいが、やはりと言うべきなのか珍しい魔法のようだ。だったらこの魔法に関しては隠し通した方がよさそうだな。

 毎回……とはいってもまだ二回とかであるけれど、女神によってこの魔法が使われるときは何時も路地裏であった。人がいない路地裏。単純に急に道の途中で人が現れたら危ないから、とかそういう理由かと思っていたけれど、下手に俺が転移の魔法を使えると思われたら面倒だから、という意図もあるのだろうか。

 というか今更ながらこうして会話し続けるのも迷惑だよな、と思って

「ああ、えっとすいません。流石にそろそろお暇したほうがいいですよね……忙しそうですし……」

 といった所、不思議な事にサラシアは「いえ? 別に?」という返しをしてきた。いや、忙しくないわけがないと思うのだけれど……。

「いやいや、ほら……こう書類とかで……」

 仕事したことない年齢だから知らんけど。

「ああ、全て終わってますから。まぁ鑑定の仕事が重なればあれですが……」

 めちゃくちゃ仕事ができる人らしかった。いや考えてみれば俺の失態に関する書類も平然と数十分とかで終えてたっけか。


「……というか、鑑定もしているんですか?」

「ああ、はいそうなんです。元々私は冒険者気質ではなく、文官の質でしたからね。今まではグリーンボアばかりでしたら、仕事と呼んでいいのか微妙な所もありまして、鑑定の仕事はたまに程度でしたが、サクヤさんの持ってきてくださるような珍しいモンスターであれば時間が掛かりますからね」

「ははあ……」

 まぁグリーンボアって状態がよくても三桁だったか。確かにそれならぽんぽん値段付けれちゃうのかな。


「まぁそれでも暇なのが現状ですけれどね。ここは初心者の冒険者が多い街ですから……」


 そんなこんなでサラシアさんとの会話を続けていたが、流石にそれでも長居は良くないなと思って退室させて貰った。ギルドの裏口に特に様は無いし、フィレナに頼んだ解体も明日になるのだったか。であれば今日の所は買い物でもするかな。

「えーっと何がいるんだろ……寝袋と……食料と……っていや待て」

 そもそもとして思い出す。転移の魔法でサラシアは移動しているのだよな、だったら俺も転移の魔法を使えば……いや、使えないのか。あの魔法は、少なくとも俺の場合は一度見たことのある場所にしかワープが出来ない。女神からこの世界についての情報こそ貰ったがそこに港町の画像データの様なものは無かったし。……いや、そうか。

「女神に頼めばいいのか」

 そう思って女神と会話をせんとして念じる。港町まで歩いて四日から五日、それ程かかるのであれば最初から女神の魔法で送ってもらえばよいではないか、という話である。俺は港町を知らないが少なくとも女神なら知っている筈だろう。


『いや、せんぞ』


 俺が何か発するよりも先に女神様からの否定が。いや、まだ何も言っていないんですけどね。

『先程の貴様の動向は見ておったし、頭の中も覗いていたからな。私の魔法で港町までワープさせてくれ、とそういうお願いであろう? ならば却下だ。というか何でもかんでも私に頼るな! 私は貴様の母親か!』

「だとしても……時間効率上げた方が良いんじゃないかなと……」

『道中でなんぞ人に出会うかもしれんし、今の貴様なら大して疲れも感じぬのだから、それくらい歩かんか』

「ええ……まぁ……確かに俺が面倒だからってだけだけど……」

 まぁテティスの言い分にも納得できる部分はあるし俺のこの提案というかお願いに関しては面倒くらいから、が理由であるから至極真っ当な結果かもしれない。

『それだけなら切るぞ』

「あ、いやちょっと待ってください」

『なんだ、まだなんかあるのか?』

「いや……さっきギルドで転移の魔法道具について教えて貰って」

『そのようだな。それがどうした?』

 女神に聞いてみた。単純に推測の域を出ないけれども、転移の魔法道具という存在があって女神や俺同様に転移の魔法を使えるものが存在して、となると俺を異世界から連れて来る……みたいな、そんな魔法ってあってもそこまで不思議ではない……のでは? とそんな疑問である。


『ふむ、私が言える限りではありえんと思うぞ』

「あり得ないんです……か?」

 あんまり記憶にないけれど、ワープって確か仕組みとしては空間同士を繋ぎ合わせる……みたいなそんなんだった気がするから決してあり得ないとは言い切れなさそうなんだけどな。


『貴様の場合は完全に異なる世界だからな。私が使う魔法にせよあの道具にせよ空間を移動するものではあるがあくまで距離で表せる範囲なのだ。貴様のいた世界の場合はそうではないからな。考え方的には一秒かけて目的の場所に走って辿りつく……とでも思っておけばいい』

「完全に隔絶されてるって事……ですか」

『詳しい事は知らん。今確実に言えることは少なくともそんじょそこらの道具じゃかなわんという事だな。女神と言えども何でもかんでも知ってるわけではない事は心得ておけ』

「そう……ですか」

 若干の糸口というか、希望の様なものをもったつもりでいたけれど、無意味だったという事か。俺の反応を見た女神は『用がないならばきるからな』と告げて此方の言葉も聞かずにぶつり、と念話を終わらせてきた。


「まぁ……転移の魔法で戻ったりできなかったからなぁ……」

 実際に一度試したことがあったのだけれど、まぁ結果としては勿論俺がここにまだ存在している事が答えである。

 仕方がないかと気持ちを切り替えて港町への旅に向けての買い物を開始した。

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