43話 ロイ
そろそろ更新頻度が下がるんじゃないかなと思います。しかしそういうと大体変わらない気もする
店の前に辿り着く。ロイは俺がこの店を後にする直前に、呼び止めはしなかった。それでも店を開けておく、とそれだけを伝えていた。時刻こそ分からないがすっかりと夜は更けている。それでも家の中のみならず、店先の明かりすらついてるように見える。即ち彼女は本当に待っている……という事なのか。
店の前まで来る。店内ではロイの姿が見えた。この時間だというのに、きちんと立った状態で、俺を待っていた。
「やっぱり、帰ってきてくれましたね」
「……」
彼女は此方に笑顔を向ける。対して俺はどんな顔をすればいいのか分からない。ただ何となく気まずいような感覚がして少なくとも笑顔にはなれず半端な顔になる。
『貴様の本音を言えばいい。間違ってると思うなら、それを言った方が己が為だ。それだけだ。あとは見んでおいてやるからな』
脳内に聞こえる女神の声、記憶でも何でもなく俺の様子を寝室から見ていたらしい。
「サクヤさん……?」
テティスの言葉に顔には出さなかったが驚いてそちらの方に考え事を集中させていた俺を不思議がってロイがそう言葉を放った。
「いや……やっぱ、ロイは俺の事知らないから善人だって思えるんだよ。さっきも言ったけど、ボアの時だって俺が危なかったからああしただけだし……」
掠れたような小さい声でロイにそういう。しかしながら彼女は首をぶんぶんと横に振った。
「私はサクヤさんのお陰で今、こうして命があります。これは大袈裟でも何でもありません」
真っすぐな目。それでもって俺を見つめる。固い意志を感じる。
「……」
「それにサクヤさんはその後だって採取、手伝ってくれたじゃないですか。御皿洗いだって手伝ってくれようとしました。私の傷を見て、ヒールまで使ってくれました」
「それは……」
「少なくとも私はサクヤさんが悪い人だとは思いません。いいえ、どころか私は良い人だと……そう思ってます。それに何より、私はちゃんとサクヤさんに、助けて貰った事も、その後の事に関しても恩返し出来てないんです」
彼女はどうしても折れる事は無いらしい。
「……分かった。恩返しって事なら一泊だけお邪魔するよ……」
「! ……ほんとですか!?」
とは言え当たり前といえば当たり前か彼女とは別の部屋にして貰おうと願った。しかしながら部屋数に限りがあるとのことだったので、俺はそのまま半ば無理矢理居間で寝させてもらうことにした。ロイにしてもロイの両親にしても俺のこの行動に関してはどうしても止めたかったらしいけれど、ここだけは頑なに貫かせて頂いた。何か事を起こすつもりはないけどロイと同じ部屋とかその理性が保てるか怪しいし、何より丸め込まれるというか……向こう側からも何か仕掛けられそうというか……。
兎も角として毛布だけ用意してもらって俺は居間で雑魚寝状態で一夜を過ごした。流石に異世界であるから床は土足である。から一言断りを入れて椅子を使わせてもらった。硬いけどまぁマシだろう。
翌日になる。硬い床であったので正直な所寝付けなかった感覚はあるがまぁ神様のバフのお陰でそれなりに元気ではある。
早朝にこの家のもの、ロイに起こされるという朝を迎えた。女の子からそうしたことをされるという経験は初めてである。昨日は色々と感情がぐちゃぐちゃになっていたけれど改めて考えてしまえばまぁ悪くは無い気もする……。
兎も角として、そのままの流れでロイの家で朝食だけご馳走になった。
「ご馳走様、いやぁ……何か申し訳ないな」
「いえ、私としてはサクヤさんに食べて貰えるのなら、光栄ですから!」
「そっか」
とは言え未だに彼女のノリというかこの感覚は慣れ切れていない。まだ恥ずかしさというかそう言った感情は残っている。兎にも角にも子の家に居候するつもりはないので彼女には狩りに出かける旨を告げて店を出ようとした。しかしながらロイは俺の言葉に対してまた帰ってくるという意図を感じ取ったらしく、
「ではお帰りは何時頃に?」
と呑気な返しをしてくる。
「いや……昨日はああなった手前お邪魔しただけで……」
「えっ……」
そもそもが俺は冒険者であるしついでに言えば女神からの指名とやらもあるので遅かれ早かれこの街は出ていくことになる。次なる目的地自体は決めているし。
「流石に俺冒険者だから宿とか使ってみたいし……それにもう少しお金貯めたらこの街出る……よ?」
「なっ……!? で、でもお金を貯めるんなら私の所泊まりましょうよ!? 安上がりですよ」
「いや俺が只管気を使っちゃうから……」
そう言うと彼女は分かりやすく落ち込んでいる。表情が秒で曇った。
「……実は昨日はお父さんにもお母さんにも怒られちゃいました」
「え……?」
「サクヤさんを強引に引き止めたら可哀想だ、って。なので……サクヤさんが嫌だというならもう引き止めませんから……」
そう言うと結局また彼女はしゅんとしてしまった。
「ま、まぁちょくちょく顔は出すつもりでいるけど!」
そういってフォロ―を入れると少しだけ期限を取り戻したようであった。とは言え若干まだ落ち込んでこそいるが。しかしながら正直な所ロイに何時までも構っているわけにもいかないので、それだけを告げて狩りに出かけた。




