35話 不思議な木
暫く歩いて光の方向に到着した。困ったことにこの光、方向こそ示してくれるのだけれど、何メートル先なのかは分からないので困る。動物系モンスターであるとか、一目見て気づくことが出来れば楽なんだけれども植物となると擬態するのか分からないけれどそうはいかない様子である。というのもモンスターらしいモンスターが見えないのだ。
光りの方向には木ぐらいしか見えない。
「こういう時に一度魔法で牽制すべきなのか……?」
もうちょっと魔法を改良したい……。兎に角見つからない以上は虱潰しという事になるか。気張った状態で、モンスターの動きを警戒しながら歩く。光の方向へと……は?
「あれ?」
光りの位置が変わった。変わった、というかある一点を指しているかのようだ。端的に言うと俺の左前程を指していた光だったのだけれどその方向に進んでいくと不思議なことに段々と光は視界左端に消えていった。それでもってその状態で左を向いてみるとそこには木しか見えなかったのだ。
「いや……マンイーターの件もあったから……一度攻撃してみるか」
木に水魔法が効果あるのか分からないけどマンイーターにも効いたし大丈夫かな。
「アクアボール!」
木に対して水の魔法を放つ。当たり前ながらそれはコントロールもなにもなくそのまま木に対してクリティカルヒットした。
「Vvrry」
不思議なうめき声が聞こえた。さっきのフォレストディアーの時とは違って雰囲気を感じるというか……こう、ホラーの感覚を覚える。これ本当に木に対して反応していたとみて良いのか。もう一度木に対してアクアボールをぶっぱなす。当然ながらヒットし、再び呻き声がした。
「なんだこれ……」
木の形をしたモンスターとみて間違いないことは分かったけれどもどうやって対処したものか。流石に幹が太いからダガーで切り刻むのも出来ないし。……だとすれば、あれか。グリーンボアの時に失敗したナイフの代わりになればと放った魔法。けれども今回はどうやって放ったものか。
「いや中心部に放てば取り敢えず倒せるのかな」
ものは試しだ、と少々残酷な気もしたけれどもまぁ木に対して思い入れも何も無いしとエアライズ。地面から突き出るように放たれるそれは木の中心部にずどん、と突き刺さるような音と同時に「Vwrrrau!!!」と奇天烈なうめき声をあげた。
ちょっと声が怖い。暫くすると呻き声の残響すらも聞こえなくなる。これで完全に死んだって事で良いのかな。
「ってもこれ……モンスターだとしても意味が分からんぞ」
何も攻撃らしい攻撃はしてこなかったし、そもそもこれ利用価値あるのかな。木だから建物の素材にでもなるのかな……? 分からないことだらけだが取り敢えず買取にだしてしまえば何とかなるだろう。その為にもこのモンスターを地面から剥がす必要がありそうだ。
そう思って身を低くして目の前で仁王立ちが如しな状態のモンスターの根っこ部分を確かめた。
不思議なことかモンスターだからなのかどうにも繋がっていないように見える。根っこがまるで複数ある足のようでそれぞれが地面に軽く突き刺さってる様子が伺えた。これ引っ張れば簡単に抜けそうではある。しかしながらここは森であって目の前に佇むこれをそのまま持ち上げてしまうにはスペースが足りないよな。
他の冒険者がどうしているのかは分からないけれど取り敢えず何個かに分ける必要はありそうだ。ダガーでちょっとでも削れないかな、と考えてから取り出し、取り敢えず落とせそうな木の枝から落とした。これは流石に切れるらしいからやはり問題は太い幹という事になるな。力強くとりあえず突き刺してみた。入りはするがそれで切れるかと聞かれたらNOと答える他無い感覚がある。
「斬撃……斬撃な様な魔法なら……」
エアライズを出した時の様な感覚でイメージをするこう、手から空気の斬撃みたいなものをだす、そんな想像だ。しかしながら威力の調整を間違えると周りの木も一気に斬りかねないので上手くやる必要があるな。
「それなら手に力を纏って……」
斬撃が怪しいならそのまま手をそれこそ刀か斧かのようにしてかかれば切れるんじゃないか? どんな風にしたらいいか分からないけど取り敢えず魔力籠めたらワンチャン切れると願って一先ず集中して魔力をためる。
「えーっと……ブレイド!」
横一閃。手刀のように構えた右手に魔力を籠めて雑な言葉と共に木に向かって振りかぶる。木の幹に右手が当たるとそのまま止まる事は無くずばっと切れた。凄い楽だった。切れた後の木がそのまま付近の木に当たらないようにだけ気を付けながら手に持ってもう少しだけ細かくしておこうと更に半分くらいずつに分けてから収納の魔法でもってしまっていく。
「……」
仕舞う途中で色々とその木の状態を見ていたのだけれどどうにも俺が見えてたのとは反対の方に顔のように見える木の模様があった。しかしながら既に倒した後なのでそう見えるだけの可能性もあるけれど流石にどこかに顔っぽいものがあっていいだろ、モンスターなんだし。そんな下らぬ事を考えながら仕舞い終える。




