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33話 今度はうまく出来るかな?

 ダガーと呼ばれるナイフのようなものとそれに対応した革製の鞘を購入した。ついでにそれをベルト型で装備できるアイテムも進められたが、留め金による特殊加工やらなんやらで結構高くつきそうだったので断った。流石に金がないからな。昼飯の分もあるので残金が危うい。

 買うものだけ買ったので店を後にした。店主は退店時にも「また来てくれよ」と言ってくれた。ガタイに似合わず凄い気さくな感じの人だったな。

「さて……」

 他に買いたいものこそあるけれど予算の都合というものがある。なので即座に狩りに向かう事としようか。


 と、いうわけで、既に森に到着し、魔法を発動させて捜索を開始している。……のだが、現時点で目に映っている光は二つだった。一つは動きが小さく見えるから先程捕まえたフォレストディアーかそれに類似の種族かな。いやでも珍しい種だと出現自体が低いから連日狩る事すら稀なのだったかな? 兎も角、一つはそんなゆったりとした動きのように見え、もう一つは完全に停止しているように見える。

 動かない光、となると……最初に襲われた植物が記憶として残っている。あれ本当に欠片で500ケルマとかで売れていたよな。グリーンボアが状態が良くて100とか200とかって言われた記憶があるから、あの植物も相当に高いと見える。それが狩れるのも良いのかも知れない。襲われなければの話だが。


「最初に行くとしたら……フォレストディアーかな」

 何も鹿と決まっちゃいないけど。特に深い理由は無いが動かない方が前戦った植物であるマンイーターとやらだった場合、普通に面倒極まりない。というかあれ何もない所から唐突に出現したのでトラウマと言う訳ではないが苦手意識があるのだ。もう一つの方がフォレストディアーとは限らないけれどそれで合った場合、確か大人しめのモンスターと聞いたから、多分狩りも楽なのではないか、という望みだ。

 という事で微妙に動いている光、そちらに焦点を当てて進んでいくことにした。


 光りを見失わないように進む。買ったばかりのダガーを手にする。所謂投げナイフとか言われるアイテムではあるけれど草や木の枝を切って進んだり途中途中で木の幹に目印をつけたりすることは容易だ。寧ろ何か使い勝手がいいというかこんな経験中々ないからかテンションが上がっている気すらする。

「これほんとに良い奴だな」

 まぁ剣で戦う冒険者となれば剣で事足りるのだろうしそうでなくともダガーを求める客は少ないという事なのかな。


「ええと……移動速度に変化はない……か」


 光りの移動は尚も続いているから流石に動物系のモンスターで良いだろう。あとはそれが何か、という話になる。

 度々立ち止まって光の様子を確認したり、辺りで草木を掻き分けるような音がしないかなどを細かくチェックする。

 フィレナが先程して見せたようにこう、水の弾丸のようなものを放てばもっと楽になるのかも知れないけれど……また魔力の調整を失敗しそうで中々出来ない。特にこんな場所だと下手したら木々やらが倒れてきたりしてもおかしくはないだろうし。ていうかそもそもちゃんと当たるのかどうかとか、色々問題点が多い感じがするな。それを考えると彼女の行動中々ギャンブラーだよな。


 再びとまって様子を探る。風の音だろうか、近くで草が揺れたような音が聞こえる。方向的には恐らく光の場所と同じに見えるか。

「何か見えるな……」

 少し身を屈めて光の方向に目をやるとうっすらと木や草の色とはまた違う色がちらりと見えた気がした。

「あの色は……」

 さっきの鹿の毛皮の色に似ている気がする。という事はフォレストディアーか? しかしながらどうやって狩りをしようか。今俺が使える魔法となると水のエネルギー波のようなものを出すものとナイフ代わりにしようとして失敗したあの天までのぼるエネルギー波の様なアレだ。

「水……だな」

 流石に一度失敗したものを使うのは怖いし、投げナイフとは言えレアモンスターに通用するとは思えないからダガーも無しだ。使い慣れた方にしよう。この距離まで来たならコントロールという点でも大丈夫だろうから一発放って腹部に当てるのが楽だろうか。ならばもう少し、見える範囲まで近づいて放つとするか。気づかれないようにダガーを魔法で一度しまう。がさがさ、と草木を掻き分けてほんの少しだけ近づいた。身を小さくして隠れるように動く。

 そこまで近づくと殆どモンスターの姿がみえるようになって二回目のフォレストディアーであるとこが判明した。これは運がいいか。

 フィレナの真似をして人差し指だけを前に向ける。子供の時散々やった銃みたいな形。それでもって指先に力を集中させてイメージを固める。本当に子供の時のごっこ遊びの感覚すらあるな。


「……ショット!」


 ピュン、と水が一直線に、そして弾丸のように飛んでいく。しかしながら狙いが悪かったかその魔法はフォレストディアーの腹部には当たらず角を少し掠った程度になったか。それによって流石にと言うべきか鹿は気づきあ足りを見渡していた。二回目の不意打ちが通じるかは分からないから鹿が完全に後ろを向いたらだな。再び指先に力を込めて、何時でも放てるように用意だけは万全にしておく。


「……ふぅ……」

 息を吐いて落ち着かせる。

 それから鹿が後ろを向いたのを確認してからもう一度はなった。

 ……のだが、なんという事かその刹那、フォレストディアーはこちらに一瞬にして振り返りバシン、と角でもって弾いた。

「はっ……はぁ!?」

 瞬発力とか反射神経とかで片付かないだろあれ。俺の目で捉えられる範囲だとしても、弾丸程のスピードがある訳ではないけれど、それでも不意打ちのつもりだったんだがな。考えられる事としては釣り戦法だったとでもいのか。

 俺だってゲームの中でも数える程しかやったことないぞそんなの……。

「一介のモンスターがする戦い方かよこれ……」


 雲行きが怪しくなりそうだ。

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