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31話 情報共有に関する意外な事実

 寝室についた。ワープして到着した時の視界で見慣れた気分になってしまう自分がいた。

 空中浮遊状態でその寝室に落とされるが、予め分かっていたので綺麗に着地が出来る。

「しかし貴様ホントにここに来るのに、躊躇い無さすぎではないか」

 確かに自分の中でこう、躊躇らしいものはない。それこそこの世界の人間が家に帰るかの如くな軽やかさというか当たり前感を伴っている気がする。まぁ最初に落とされた場所がここであるからあながち間違ってない……のかも知れない。いや流石に間違いか?

「で、貴様具体的に何の情報が欲しいというのだ?」

「えっと……そこら辺の冒険者なら知ってて当たり前の知識と言いますか……」

 具体的に言えば狩場における暗黙の了解とか立ち振る舞いとか、それからモンスターの買取価格に関しての高い安いなどもあると嬉しいかな。この事をほぼそのまま伝えたのだけれど女神はどうにも躊躇いの表情を見せる。

「ふむ……渡せなくは無い……が、如何せん女神たる私の知識を与える行為となるからな」

「いや……女神視点でも……必要なものさえあれば……」

「貴様は神でもなんでもない、異世界の一人間に過ぎんことを忘れてはおらんか?」

「え?」


 どうにも女神が言うには、ただただ単純な話で、パンクし得るから、という事だそうだ。そもそも情報共有という魔法はただの人間であっても魔力さえあれば使えるのだという。魔力に情報を載せて相手に伝播させるという……何だか通信機器の様だな、と思える仕組みだがしかしその情報共有というのも精々強いモンスター数体の情報を共有とかそのレベルらしい。情報量が多くなるほど消費魔力が大きくなるため、出来る限りその辺りで効率を求めている、という事と何より相手に一瞬にして情報共有という形を介して脳みそに視覚データや文字列のデータを埋め込むという。量が少なければ兎も角情報量が多くなると脳みその処理が追い付かなくなって死にこそしないが場合によっては脳に障害が発生するのだとか。魔法が便利だと思っていたのだけれど別段そうでもないな、と異世界に来てから何度か既に思わされているがこれはその真骨頂に当たりそうだな。

「私の加護と魔法を受けたとは言えそれでも私が有する情報をそのまま送っては貴様も耐えきれぬと思うぞ」

 じゃあ最初に、初日にこの場で女神から数多の情報を受け取った記憶があるのだけれど、それはどう説明をつけるつもりなのだろう? あれも結構な情報量だったと思うのだけれど……。


「でも最初にも情報を魔法でくれたじゃないですか……」

「あれに関しては本当に表面的なものを取捨選択したからな。貴様あれの時点で大分狼狽えていたではないか、そんな輩に更に情報を送ったらどうなるやら分かったものではないわ」

「え……俺が求めてる情報ってそんなに量がある……と?」

「モンスターについてのあれこれだけで相当な情報量になるぞ」

 マジか、と思ったけれどこの街の本屋で見つけた図鑑。あれをそのまま情報としてぶち込まれると考えたら確かに結構な量かも知れないし、なんならアレ以上のモンスターもい得る可能性を考えるとなるほど、と思えてきた。

 身震いの様なものが起こる。


「こう……前みたく情報のピックアップをして送ってもらう……とか」

「出来なくは無いが貴様の求めてる情報だけを選択するのが手間だ。というかそれでも結構な情報になると思うぞ」

 モンスターの名前、大体の姿、出現場所や出現頻度、それと売値。絞っても最低限それくらいは欲しいという気持ちはあるのだがつまりこの世界のモンスターって1000、2000じゃすまない数でも存在しているのか?

「あの……女神様……」

「何だ? 諦めたのか」

「いや……えっとこの世界ってモンスターの種類だとどれくらいいるんですかね……」

「種類か、私が知る限りでの話にはなるが細かく分類で別れるとなると確か万は超えていただろうか」

「ま……万」

 成程、想像を余裕で越えてきてくれた。

「それこそ貴様が何度か見たボア、と言うのでも20程の種類が存在するからな」

 これは女神が躊躇った理由も何となく頷けてしまう。しかしながらそうなってくると話が面倒くさくなるというか、どうしたものかと考え込んでしまうな。


「モンスターの数を絞るなりすれば多少はマシになろうがな」

 モンスターの数を絞る……か、とは言えそもそも何がいるのかも知らないから此方から絞りたくてもなぁ。

「絞る……か」

 ボア限定に絞る? だとしてもボア以外が出てきた時に困るよな、じゃあ出現頻度の高いモンスターとかもありか?いや……それならば……。


「こう……街ごとにとかってできないですか……?」

「街ごと?」

「例えばこの街付近の狩場とかに出て来るモンスターだけ……とか」

「……それならば不可能ではないな。であればこの街のモンスターに絞るか?」

「あ、いや……他にも見てみたい所がありまして……この世界って魚もいるんですよね」

「? おるな。特にここヴローシィであれば魚は有名であるぞ」

 ああ、そうかこの女神様水の女神だもんな。水といえばそりゃあ海やら川やらが有名になるのは自然な流れと言えるだろうか。

「じゃあ魚系で……こう近場に何か無いですかね」

「魚か……であれば港町にでも向かえばどうだ?」

 女神からの提案を受けた。

「港町……?」

 港町、というと真っ先に思い浮かぶイメージとしては魚市場みたいな光景だった。まぁ俺自身がかつて行ったことなんてのは無いけれど。

 川を見つけた時にそう言えば記憶をたどって思い返したか、確かブローシィの南か南東かその辺りに海が広がっていた記憶がある。彼女が言っているのはそこの事だろうか。

「港町だ。まぁ抑止力の件を考えても別段悪い場所だとは思わん」

「え? どういう事ですかそれ」

 抑止力の件、と聞くと力を誇示するというのがざっくりとした使命であったはずだ。彼女のその言葉から推測するとつまり港町だとめちゃくちゃ厄介なモンスターか冒険者かが存在する、とでも言うのか?


「行けば分かる」

「行けば分かるって……んな雑な」

「そもそも貴様が魚に興味がある等と抜かしたのだろうが。今更待ったは無しだぞ」

 そう言うと有無を言わさず女神は俺に対して右手を翳す。それから小さく呪文を呟いた。

「sendin」

 彼女の言葉と共にその右手が揺らぐような感覚が起こる。そして俺の頭の中に幾つもの情報が駆け巡る。昨日の今日でこうも身を削るような思いをするとは思わなんだ。前回のように少しバグりそうな思いこそすれどそれでも意識は保っていられた。

「どうだ?港町の中でも情報量は抑えたつもりなのだがな」

「結構危ない気がしましたけど……まぁ何とか……?」

 頭の中にきちんと魚系モンスターについての知識が入っているのが分かる。とは言え、俺の注文したのは名前とか売値とかその程度の事であったからどれが食える食えないとかそういうのは全く情報としてない。まぁそれくらいなら現地で色々探れば良しとするか。

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