30話 買取とそれからの事
「サクヤ」
暫くして買取金額についてまとまったようで此方に話しかけられた。暫くぼーっとしていたのでちょっと反応が遅れる。
「えっ……あっはい!?」
「買取の方、お前とフィレナで同額って彼女言ってるけど、それで大丈夫か?」
「えっ……ああ別に問題ないです……けど」
というかこの場所、この状況でもっと分けろとか言える気がしないし、そもそも狩って解体したのは彼女なので何も文句などは無い。
「じゃあ金庫から買取分取り出してくるから。フィレナはどうする? 結構な額だけどいつも通り?」
「ああ、給料つけといて」
「オーケー」
そう言って鑑定していた男はどこかに行った。フォレストディアーはサイズこそ小さかったけれど狩った時の状態が良かったことが功を奏したのかシンプルに前のヒュージボアの時がひどすぎたのか分からないけれど、前の買取金額を超える額であることは告げられた。とは言え二人での値段であったので即ち半分になる為、結局自分がもらえる額は別段前のボアを超えるとはならないが。ついでに言うとヒュージボアの件に関しても今の男の人には伝わっていたらしい。やはりレアなモンスターが買取に出されたとなると多少なりとも皆耳に入るのかな。いやでも受付のおっさんは特に俺に対して反応は示さなかったような?
「まぁ金が入るならいいか」
これでざっくりと15000ケルマに少し足りないくらいにはなってるから今日の分の食費と寝床とを賄うには十分だろう。まぁこの世界で寝床たる宿が高かったら話は変わるが流石にこの資金を平然と食い尽くす程ではないと信じたい。
暫く考え事をしながら待っていると鑑定の人が袋片手に戻ってきた。
「ほら、今回の買取分、7000ケルマ」
袋の中を覗く。中には硬貨が70枚入っていた。手にそのまま持っていたら当然ながら重くはなるけれど此方にはとても便利な収納の魔法がある。これでもって重さは無くなる。とは言えこれこのペースで増え続けたら100ケルマ分と思われるこの硬貨、普通の冒険者なら持てなくなりそうなのだけれど大丈夫か。確認のために、と十枚ずつに分けて見せられ、そうしてからもう一度袋の中に戻して改めて渡された。
「じゃ、これで買取は終わりだな。また何か珍しいもん狩ったら持ってきてくれよ」
そうしてギルドを後にした。珍しいものを、と求められても今の所15000ケルマを手にしているので狩りをするのは一度休憩したい。取り敢えず飯だな飯。
今日の昼に関しては元の世界でも食べたことのないものにした。とは言え材料とかはそれなりに似たものを食べたことがあるが。なんなら付け合わせにマッシュポテトであろうものがついていたし。
飯を終えてから夜辺りまでどうしたものか、と考える。本屋のおばあさんが言っていた女神の宮殿にあるという図書館に向かうのもあるし、また狩りをして資金に余裕を持たせるのも手だが……。
こういう場面に関して言えばだれかと行動していないというのは痛手だ。それこそ先程のフィレナのような冒険者と一緒に行動出来ていればそれこそ図書館にいく必要もそこまでない。とは言え誰かと組むつもりもないが。流石にパーティーだとかを組んだらぼろが出まくると思うし。
「まぁこの世界の文献って所なら興味があるし……行ってみるか」
ついでに女神に連絡を取りたいところでもある。特に深い理由は無くて単純になんで図書館なんてものがあるのか、を聞きたい。そう言う訳で店を出てから適当な路地裏に入り、そこに誰もいないことを確認する。
「テティス……! ……あれ? テティス様!?」
敬称略に反応しないのだろうか? と思って取り敢えず雑に様をつけておいた。するとどうだろうか反応が返ってくる。
『ふん、もっと敬え貴様! 私の事女神だと忘れてはおらんか!?』
忘れてはいません、女神だと理解した上でこの態度をとっているにすぎません。っとそんな話をしたい訳ではない。
『そんな話とはなんだ!? 貴様ふざけるのも大概にしろ!?』
「ふざけてはおりませんし、それよりもお話が……」
『……くだらん頼みなら即刻貴様を無視するからな』
「いや……街の人から宮殿に図書館があると聞いたんで……」
そう尋ねると当たり前だろう、と神様からの一声がある。どうにもこの街、というかこのヴローシィにおいては図書館という存在は馴染みの存在らしい。
『私は水の女神であるが、一応学問の女神でもあるからな』
「えっ……!?」
この女神が学問の女神、だと? とても知能が高いようには見えない……いや別に子供の見目をしているからとかではなくて、それこそまだ二日であるがその中のやりとりで垣間見えた子供らしさというか、そういった言動からとてもじゃないが知性を感じられなかったのだけれど。
『たわけたことを抜かすなよ。……とは言え、別段私は本来的には学問の神などではないわ』
本来的には違う、という言葉には流石に引っ掛かりを覚えたのでどういうことかを尋ねてみると、どうにも人間たち、信徒の側が勝手に学問の神でもある、と祀り上げたのだとか。信徒が勝手に「テティス様を信仰すれば学力があがる!」とかそんなことを言い出したらしい。変な話だと笑い飛ばしたいところだが、元の世界でも同じような事があったように思える。まぁ宗教関係詳しくないから分からないけど。
『それで知らぬ間に新しい神に祀り上げられただけだ。故に私の宮殿に図書館が建設されたのだ』
「でも信仰しても学力上がる事は無いんですよね?」
『ならんわ。流石に女神と言えど民の知性を操るなんてことは出来ん』
精神を軽く操っていた記憶はあるが、知性の操作は出来ないのか。いや、出来たとしても積極的にやりたくないというのもあるかもしれない。俺に超絶バフの魔法を与えた時に何か言っていた記憶がある。
『というか貴様、そんな文献に何の用があるというんだ?』
「いや……国というかこの世界についてもう少し詳しくなっておきたいなと……」
『そういう事であれば、私自らが与えた方が早くはないのか? というか最初に与えたと思ったが』
「いや、こうもっと冒険者目線の情報と言うか……モンスターのあれこれとか……」
『だとしたら図書館等行かずに冒険者と交流すれば良かろうか』
「それでボロが出たらこう……困るので……」
『ぬっ……』
思わず女神も口を噤んだ。この反応からどうにも俺の今朝の行動もある程度見ていたと考えて良さそうだろうか。まぁ冒険者目線、とは言え一応女神から情報がもらえるのであればそれはそれで有難いか。
「まぁでも女神様も情報与えてくれるというなら、貰いたいんですけど……」
『都合が良いやつだな。まぁ先程のようなへまをして貰っては困るというのはあるからな……良い、一先ずこちらに飛んで来い。与えるか否かは兎も角相談くらいには乗れよう』
言われて一度女神との念話をストップしてあの魔法を発動せんと念じる。思い浮かべるのはあの寝室。そこにワープせんとする魔法だ。
目を瞑り、息を吸い込む。
「テレポートっ!」
そう言う訳で何度目かの寝室へ。




