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29話 ギルド、裏口にて

 一度街に入ってから、フィレナにあの狩ってそのまま解体して貰ったフォレストディアーを渡そうとしたけれど、すぐに止められた。

「このまま私ギルド戻るから、一緒に来なよ。纏めて精算するから、そのまま持ってて」

 要するに面倒くさいから持っていけとそういう事か。とは言え纏めて精算して貰えば恐らく意外と優先的に買取してもらえるんじゃないか? と思ったし別にここで彼女と別れたとて遅かれ早かれギルドに寄って精算してもらう必要はあったから良しとしよう。

 この街はどうにも冒険者が多いようでそれこそ実は街を歩く、というだけでも意外とよけたり何なりがあって時間が掛かったりしたのだけれど、彼女がこの街に詳しいからなのかそれとも人の視線に鋭いから避ける事に長けているのか分からないけれど予想より早く着いた。

 売り物に関しては鹿のみであるしそもそも彼女がギルドの裏口に直行するようなので、それについていくことにした。


 ギルドの裏口につくと昨日見たのとはまた違うおっちゃんが簡易受付にいた。彼女、フィレナの帰還と共に後ろに俺がいることに少しの驚きを見せた。

「おい、フィレナ、珍しいな。誰かと行動してるなんてよ」

「ちょっとね。一緒に狩りしてたのよ」

「あ? てめーが男と狩りだと?」

 目を丸くしている。彼女自身の口でも語られたが、男の目線という所で色々あったらしいが、だからと言って男と狩りをしているだけでこんな反応をされるものなのか。

 どれだけの事があったのやらと思わず想像してしまう。

「別に良いでしょ、私男性恐怖症とかじゃないんだし」

「だとしてもだぜ! 何だあれか? とうとう出来たのか?」

「あんたを捌いてもいいのよ」

 こうして見てみると、男性からの目線という所で色々とあったようだけれど、ギルドの解体所の人との会話を聞くとこう……何というか違和感ではないけれど、意外という印象はある。確かにここまでのやり取りの時点である程度は分かっていたけどもっと職人気質と言うか寡黙なのを想像していた。


「ったく、冗談だっての。で、何狩ってきたんだ? 偉く身軽に見えるし、グリーンボアか?」

「フォレストディアー。あっちが魔法でもってきてくれたから身軽なだけよ」

 指をさされながら説明されたので、出して良いかなと思って魔法でもって隠していたフォレストディアー……の解体後のソレを幾つか取り出す。流石にその場にぼん、と全部置くわけにはいかないので小出し状態だ。

「解体後じゃねぇか」

「そりゃあ私がやったからね」

「ったく折角レアモンスター捌けるかと思ったのによ」

 解体業者的にはレアなモンスターを捌くって事は喜ばしい事なのか。おっさんの方が少しガッカリしているようだし。

「捌き終わってるから鑑定の人に回しても大丈夫でしょ?」

「え? ああ、今なら他に解体終わったものねぇからいけんじゃねぇかな」

「有料になるっけこの場合」

「知らねぇけど解体手数料とでトントンくらいにはなるだろ」

「分かった。じゃあ先に鑑定だけ頼んでから仕事戻るわ」

 彼女はそう言うと俺を放置したままギルドの裏口からすすっと入って行って消えた。

 彼女の姿が見えなくなったのを確認したかと思うとひっそりと此方に何か尋ねてきた。


「おめぇ……どうやって彼奴を落としたんだ?」

「え……あいや……」

 彼女に秘密にしてくれ、とわざわざ頼んだサーチの魔法に関して言う訳にはいかないのでどうやってぼやかしたものか。

「狩りでちょっとやらかした所を助けて貰って……」

 ひとまず最初の邂逅の所だけを話すことにした。とは言え流石にと言うべきかこれだけでは納得できなかったようで、

「んなだけで彼奴と狩りなんか出来っかよ!」

 と速攻で誤魔化してる事について小突かれた。けれども最初の邂逅とその後の会話の印象から仕事に関しては寡黙そうには見えていたけれどもそれでも会話する分にはそこまで人と何かをする……というか同じ仕事場の人にこんな反応をされるとは思わなかった。

 そこまで気難しい人ではないと思うのだけれどな。


 しかしながらダル絡み以外の何物でもないので早い所解放してほしいのだけれどこの手の中年男性はとなるとそんな我々若者のそういった思考とは徹底的に乖離するものである。つまり反りが合う事は無い。

 するとそんな俺の思考を読み取ったか如くフィレナが戻ってきてひょい、と顔を出した。同時に俺に絡んでいるおっさんに対してゴツン、と頭を叩いていた。

「カラボス、あんた何やってんだ」

「ってぇなぁおい」

「あんたの方がガタイ良いくせに何言ってんだか。それよりサクヤ、ディアーの素材持ってくよ。面倒だから一回中入って」

「ああ、はい」

「わっはっは、使いっぱしりみてえだな」

 カラボスと呼ばれたおっさんが笑って俺の事を揶揄う。


 既に出した物は一度しまおうか考えたけれど手に持てる量だったので別にいいか、と直で持つことにした。

 意外と裏口から入って初めてみたギルド解体所の中なのだが、冒険者の街ということにもあってか広さは物凄い。そして幾つか作業台のような木製のテーブル何かが見えてそれぞれで作業しているのが遠目でも見える。それと獣臭と共に当然ながら血の匂いが漂っていた。

「私の所のテーブル、あそこだからあそこに広げちゃって」

 案内されたテーブルについてから魔法でもって収納していたソレを取り出す。角に皮に頭部にそれから幾つもある肉それとしっぽ。

 それをまじまじと見つめる男の姿。この人が鑑定の人という事か。


「フォレストディアーとはまた変わったもん狩ってきたな。これ森の奴だろ」

「そう。彼とちょっと狩りをしてね。それでたまたま」

 たまたまと書いてチート魔法と読むそれで狩りをしました。とは言え彼女には予めお願いしてあるのでその辺りはぼかして説明してくれている。


「これ、フィレナが捌いたのね。じゃ鑑定すっかな」

 そう言って男はまたも眺めている。時間が掛かるのかな、と思ったのだけれどプロと言う事なのか少し……それこそほんの数秒程度見たかと思うと「これは800」「ここなら2500かな」とぽんぽんと値付けをしていく。同時にさっさっと紙に数字を書いて切り分けた部位ごとに置いていっている。

「頭部はちょっと売りに出してみないと分からないな。角とっちゃってるから」

「フォレストディアーの角なんだし流石にこれは単体で売りでしょ」

 流石に二日目の人間には何となくも分かりそうにない会話だったので横で聞いてるに留めた。

「頭部なんて悪趣味な貴族の買い物なんだし」

「それを言うなって、一応貴族の羽振りの良さにも助けられてるんだからな」

 只管何も反応すらもせず聞き耳を立てるだけである。それでもって座る椅子だとかも無いのでただただ立って待つ。

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