表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/300

22話 古びた本屋より

「っても朝から外食って経験ないんだよな……」

 大体昨日の残り物とかパンとかを家で食っていた記憶しかない。とは言え昼より少し安いくらいと考えて良いだろうからまぁ大体五百円前後くらいだと考えて良いだろうか。

 街の雰囲気だとか昨日奢ってもらった感覚だとかで判断する他無いけれどしかし食文化に関しては多分この世界は問題なく発展していると感じるから、朝食もどこか食べる所とかあると思うが……。

「しかしこの世界じゃ米はないよな、ってなるとパンとかかな」

 無ければ多分何か買うくらいは出来るだろう。と考えながら街を歩く。暫く歩いて昨日奢ってもらった店に辿り着いた。パッと見た所朝からすでにやっている雰囲気があったので入るか考えたのだけれど、入り口に文字によるメニューが書いてあって同時に値段も書かれていた。成程写真技術はないってことでいいのだろうか。値段は読める限りでは500ケルマと書いてある。だとするとこのケルマという単位、日本円とほぼ大差ない可能性があるので通貨の感覚に関して言えばそこまで苦労はしないのかも知れない、と思うと少し有難いな。


 朝食を終えた。取り敢えずパンはこの世界でも普通にあるのでそれで済ませた。元の世界でのパンはと言うと食パンやらアンパンやらバリエーションに富んでいて価格に対してもなかなかの味だったと思う。思いたい。けれどもどうだろうか、この世界のパン、めちゃくちゃに美味い。技術という面で見ると確かに元の世界の方が科学技術だなんだとあったわけだけど、そんなのはどうでも良くなる。……まぁしかしながら昨日教えて貰った店だから、というのがあるのかもしれないな。味もそうだが何より香りがよかった。食感的には元の世界のパンよりは固めだけれど別に食べられ無い程じゃあないしそれこそこの固さで満腹感が増大する、そんな感覚さえした。

 昨日奢ってもらったもののように口にしたことはないし聞いても今一つ想像がつかないものを食すのも良いのかも知れないけれど、異世界にきてまだ二日目であるからそんな気は起きなかった。しかしこのパンと昨日の飯とでこちらの世界の食事情に関してそこまで心配する必要がなさそうではあるから、色々体験してみたい気もするな。

 退店時に500ケルマに相当するのであろう5枚の硬貨を渡した。この辺の通貨感覚にしても早い所知りたいというのはあるな。


「よし、まずは……」

 店を出てすぐに歩き始める。今日に関して言えば狩りも後々するつもりではあるけれどそれ以上に訪れたい場所がある。……まぁこの世界にあるのか分かんないけど、あると信じて探したのは図書館だ。実は昨日の狩りを終えた頃合いの時点で考えていたことだった。ざっくり言えばこの世界の細かい事を知りたい。この世界の通貨にしても文化にしても、そしてモンスター。最初は女神に尋ねようかとおもったのだけれど、狩場を聞いてあんな変な所を教えてきたので今一つ信用度としては微妙であるから、本という情報源を求めたのだ。まぁ女神が駄目なら他の真っ当な人間に聞くという手も考えた。しかし流石に冒険者を名乗っておいて色々聞きまくると自分の素性に関して危ぶまれると判断してやめた。多分その方が本来ならばすぐに終わるとは思うけれど……。まぁ、念には念を、だ。


「図書館……そんな規模の施設あるのかな……最悪古本屋とかでちょっと読んだりできる程度でもいいんだけど……」

 この世界の文明レベルに関してもまだまだ判別できないくらいには知識が浅い。


「うーん……それこそ昨日のうちにロイとかに聞いておけばよかったかな……」

 別に街の中を散策するこの状況自体は嫌いではないのだけれど、それでも買取価格として貰った8500ケルマ、そこから500ケルマ払って残りが8000ケルマ。俺の感覚が正しいのであれば大体8000円相当になるわけだがとなると寝床である宿泊施設の代金まで加味すると今日を凌げるのかは分からない。まぁつまり端的に言うとさっさと調べ毎を終わらせてさっさと狩りもしてしまいたい、とそんな気持ちだ。

「取り敢えずはモンスター、それと余裕があれば文化とかかな」

 高値で尚且つ見つかりやすいモンスターなんてのがあればいいのだけれど、どうだろうか。指折り考え事の数をカウントして歩く。少し上くらい、看板がよく目につく辺りを注視しながら。やはりと言うべきか何というべきかこの世界じゃ嘗ての世界であったように目立つタイプの看板と言うものは無い。具体的に言うと遠目からでもよく分かる太字に目立つ色で縁取りしたタイプの看板、そういったものはない。まぁ図書館如きにそんな看板つけていた所なんてものは知らないが。兎も角こうして元の世界との違いを見て回るだけでもそれはそれで色々と発見があるものだ。

 この世界での看板はまぁシンプルでおしゃれな方向にベクトルが向いてる印象がある。

「この世界にあんのかな……図書館みたいなの……」


 そう言えばギルドで貰った紙は元の世界のものと比べたら結構ごわごわしていた記憶がある。それを考えると製本技術はまだ発展しきってないのだろうか? だとすると少し怪しい。生憎歴史には疎いので図書館という概念がいつから存在していたものなのかは存じ上げないがしかし文字も紙も遥か昔から存在している筈だから、案外存在していてもおかしくないし……。考えるだけ無駄なのだけれど無駄に考えてしまう。


「うーん……あ」

 看板に本の文字が目に入る。本、という書き方であるから本屋の方か? 場所も偶然見つけることが出来た、程度には奥の方の店で路地裏からちらっと看板が見えたのだ。一応繰り返しになるが言っておくと勿論だが本という漢字なんてものはこの世界には存在しないし勿論英語でBookだとかが書かれていたわけでもない。不可思議極まりないが異国の字、異国の言葉であるけれど見ただけでなんと書いてあるかが読めるのだ。

「ふーむ、本屋だな」

 そもそも今になって思い返してみると元の世界の図書館って看板を掲げていたっけか。悲しきかな読む本といえばライトノベルとマンガが中心の人間であったから図書館に訪れる事も稀であったので本当に記憶が薄い。

 まぁともあれ本屋は本屋だ。入るとしようか。図書館と違って金はかかるが以外とこっちの方がモンスター云々に関しては助かるかもしれないし。

 冒険者にとって本の価値ってどのくらいのものなんだろうか。


 分からないけど冒険者ってこうして文字で情報を得なくても誰かから聞いて情報を得たりする方がオーソドックスだったりするのだろうか。

 そんな自分の考えを体現するかのようにその本屋の中に客らしい客は見えない。

「おやぁ、いやっしゃい」

 店の奥からしゃがれた声が聞こえた。

 ひょいと店にある棚から隙間を縫うように奥の方を見ると老輩、おばあさんの姿があった。

「ここって……立ち読みとか大丈夫ですか?」

 ペコリ、と軽く会釈をしてから聞いてみた。


「構わんよぉ、ここにゃ人なんてそうそう訪れないからねぇ……来てくれるだけでも有り難いもんさ」

「そうなんですか?」

 まぁ口にしては失礼なので心の中に留めておくに限るが確かにこう外観からも想像がつくように中もなんというか訪れたくなる雰囲気はそうそう感じれない。店の隅とかちょっと誇りかぶって見えるし。とは言えこの大きな街であるのだし他にそれらしい店も今のところは見ていない印象があるから本屋というのにも需要はあると思ったのだけれど。

「そりゃあ、宮殿に図書館があるからねぇ……そこの方が立地も種類も豊富なのさぁ」

 なんだと。あの宮殿、寝室以外にロクに見て回る事は無かったし多分それこそ女神に聞けばすぐに答えてくれていたと思うから自分の責任という部分もあるけれど、しかし棚から牡丹餅とはこのことを言うのだろうか。わざわざ散策する必要が無かったという事か……。


「だでねぇ、ただの古本屋じゃあ人は訪れんのよ」

「そういうもんなんですね」

 おばあさんには失礼だけれどもしかし図書館の存在を知ることが出来たのは大きいかもしれない。この店のコンセプトだとかもあるのかもしれないけれど、何となく背表紙のタイトルだけを読んでいる感じだとこの世界じゃ流石にマンガとか絵本みたいなものはないらしい。まぁ確かに今のマンガらしいマンガって歴史自体はそこそこ浅かったか。兎も角少なくともここにある本はどうにも文学の物語であったり図鑑であったりが多いらしい。あとは料理の本とか伝記のようなものが何冊か見えたくらいだ。

 しかしこうしてみると製本技術自体はしっかりしているらしい。もっとも大体の本がこう、キレイじゃないというか嵩張っている風に見える。まぁ何はともあれ図鑑さえ読めれば何かモンスターについての手掛かりとかが分かるかもしれないし、今更宮殿に戻るのも面倒だからと少しの間店の中で読ませてもらうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ