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19話 女神の現在を聞いたので

 ホトギと名乗った男と別れた。より的確に言えば唐突に乖離した、とでも言えばいいのだろうか。一瞬にしてそれこそワープでもしたのかというように姿を消したのだ。それが人込みに紛れたとか俺の瞬きだとかそういったただの偶然が重なった結果という事も考えられるのだけど。


「……! いや今は寝床か」

 ホトギと名乗った男の話では宮殿に行ってみてはどうか、という事だったな。それこそ転移魔法で一気に飛べばいいのか。

 いやでもよく考えたら彼の話曰く転移魔法となると知ってる場所であるという制約がある。生憎俺が訪れたのはあの宮殿ではなくて彼女、テティスの寝室のみである。

「ん……? 待てよ?」

 そうか、そんな簡単な答えがあったではないか。何も見知らぬ誰かに助けを求めなくてもいい。女神に通信して助けを乞う必要もないではないか。

 そう、転移魔法でそのままテティスの寝室にワープしてしまえば万事解決になるのではないか。とても単純な回答があったではないか。

 思うが早いか頭の中でイメージを固めようとしたのだけれどそこでふと思いとどまった。彼女の寝室に誰かいたら面倒なことになり得る。流石にこればっかりは一度通信して確かめる必要があるのか、だけれど女神に下手に通信して俺の思考を悟られるのもいけない。作戦とも呼べぬ作戦ではあるけれどこのどっきりじみた行為を悟られたくはない。

 そういえば先程のホトギと名乗った男とのやり取り、女神様は見ていたのだろうか? 俺の懇願に呆れたのか強制的に通信を切られたから見ていない、ってなるのであればもう一度懇願しまくれば再び呆れて暫く俺の思考やらを覗き見しないでくれるだろうか。

 思ってささっと路地裏に入り込み多少なら喋っても問題がない環境であることを確認してから女神に念を送る。すると平然とした様子で

『どうした? またなんぞ用か?』

 と女神テティスが応答した。

 とは言えどうやって切り出したものかな。取り敢えず遠回りして聞いていくとしようか。


「なんぞ下らぬことでも企んでおるのか? であればやめておけ。女神には如何ような小賢しい策も通用せんと思え」

 随分と自らの力に自信がおありのようであった。そして俺の考えている事が殆ど悟られているようだから下手に考え込むと何もかも悟られて宜しくない。思想の自由なんてものはこの世界にはないのか。

『で、貴様なんのようだ?』

 ああ、とそうだった。取り敢えずあの男の動向でも聞いておこう。実際俺の目の前で消えた気がするところに関しては気になるところがあるし、何者なのかもいまいち掴みきれていない。

『ふむ……男とな? 生憎だが暫く貴様の行動は見ておらなんだ。せめて特徴の一つでも言ってもらわねば何も分からん』

 特徴か。糸目で、探偵みたいで……ああ、いや女神相手でも探偵って言葉は多分通じないか。等と頭の中でうんうん、と唸りながら思い出そうとしていたのだけれど、そこで問題発生。

 彼の格好が何一つ思い出せなかった。人間を判別するにあたって重要度的にも大事な要素なのだけれど、何故だろうか服装が思い出せない。

『服装が分からんときたか。その程度の情報では何も分からんよ』

「ってもこの街にいるってことは多分テティスの信徒だと……」

『いや、残念ながらな。我々女神たち少なくとも平和な世界、を保っている。故にどの国にどの信徒がいようが我々は干渉しない決まりになっていてな。生憎私の目が届く範囲はこの国の私の信徒のみよ』


 ……結構範囲が狭いんだな、と思ってしまった。まぁそもそも同時に何人も見れるとかそう言う訳でもなさそうだし仕方ないというものだろうか。

『しかしなんだ、その男がどうしたという? 私が推測するに何か問題があるとは思えんのだが』

「何ていうか、確かに飯も奢ってくれたしそこはいい人でしたけど……。こうなんか底が見えない人で」

『はっきりせんな。貴様の微々たる情報では此方から何かするのは難しいが故諦めろと言いう他無いな』

 スパっと言われた。まぁ俺の思い過しであるならそれに越したことは無いのだけれど……。

『用はそれだけか? であれば早急に終わらせたいのだがな』

「何かあるんですか?」

『何もないからこそ、だ。部屋には誰もおらぬしやる事もない、そういった息抜きの時間は女神においても必要という事だ。故に早う休ませてもらうぞ』

 やる事がないって言っていたけれどであるならば俺の寝床問題に関して何か策を見出して欲しいのだけれど。そもそもこの女神普段そんな仕事らしい仕事をしているのか? 彼女と対話していたのが一日中だとかそういうわけではないのだけれど。

『普段から貴様ら信徒の様子や国全体の様子などを把握しているのだ。それとたまに他の女神とのやり取りも致すぞ』

「他の女神と仲良くないと思ってましたけど……」

『相手がどう思っているかまでは私も知らんからそこに関しては何も言わんぞ。私がしておるのは国同士の状況の報告やらなんやら……端的に言えば情報交換じみたことをしている』

「……それ俺の存在とかもその内……?」

『否、私の口から言ってしまえば私自ら生み出したとすぐにばれるから言わんよ。まぁそれとなく異世界からの来訪者の話を聞けないかと探ってはいるがな』


 女神が俺の事に関して何も知らないのであれば他の女神でも知らないと思うけれど、まぁそれでも何か情報が掴める可能性があるならば希望を少しでも抱いておくとしよう。そのためにもこの世界で一先ずは生き抜いていく必要があるわけだが。そしてその為に俺はこうして女神に念話を送っていたのだけれど。そう、寝床問題である。しかしそう思った途端に面倒事の匂いを感じ取ったとでも言うのか、テティスはまたもや念話を断った。……またかこいつ、という気分にはなるけれどしかしそれでも欲しい情報自体は手に入った。

「……あいつ、今一人だから休むとか言っていたよな……」

 だとすれば俺の転移も上手くいく。

 ひひひ、と何だか怪しげな笑いが漏れてしまいそうだ。

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