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15話 買取に出して失敗した話

 不幸中の幸いというか肌やら服にあの猪の血がついてなくて良かったと思う。まぁ手ぶらなのと風体の時点でギルドのなかではまぁまぁ浮くわけだけど。


 兎も角として急ぎめに受付に向かうと先程応対してくれたお姉さんで、どうにも俺の事を覚えていたらしい。

「ああ、先程の。どうかなされましたか?」

「あ、えっと今さっきちょっと狩ってきたのでまた買取に出そうかなと」

「分かりました。……手には何もなさそうですが……?」

 そうか、さっきの時は着の身着のまま状態で素手に植物とそれだけの格好だったし俺自身も収納魔法なんてものに気づいてなかったからな……。

「紆余曲折あって……まぁ収納の魔法使えるので……ちょっとサイズ大きいんですけど大丈夫ですかね?」

「なるほど、因みに買取に出していただけるものは何を?」

「ヒュージボアっていうらしいんですけど……」

 言いながら先程の全身の約四割くらいが消え去ったあの猪の一部をちらりと見せる。

「ひゅ、ヒュージボアですか!?」

 驚かれた。いやでも確かにサイズ感で考えても相当であるし、あの森でゲットできるモンスターやら植物やらは割に合わないものが多いのだったか。そういったレア感でも驚かれているのかも知れない。

「えっとさっき森でたまたま……」

 たまたま追いかけられてる女の子に出会ったわけだけど、そんな経緯は流石にいらないからしないでおいた。


「な……成程、でしたらギルドの裏口での引き渡しになりますが手続きは此方で済ませますので、先程の買取の時にお渡しした紙はございますか?」

 言われてポケットを探り、取り出した。植物を買取に出した時に貰った予約表みたいな紙だ。それを渡すとさらさらと何かを書いてくれて再び戻される。

「それでは先程のものと一緒に買取できるように手配しておきますね。では裏口の方で其方はお渡しください」

「分かりました」

 裏口、そんなものあったのか。まぁ確かにモンスターを狩るとなれば自然と大きい得物を買取に出す人はいる訳だから自然とそうなるものか。聞いてみた所両手に収まる程度であれば通常の受付で買い取りしてくれるらしいが、モンスターは大体がギルドの裏口で受付をするものらしい。


 裏口はなんというか表のギルドの入り口とはまた違う雰囲気と言うか、少し作りが簡素だった。受付の人もギルドの表入り口で迎えてくれたお姉さんとは相対しておっさんだった。まぁ見た目はガタイがよくて技量は確か、みたいな雰囲気は感じるけれど。表と比べてなのか受付がおっさんだからなのか、それとも俺の運がいいだけなのか知らないけれど、しかし幸運にも受け付けは開いており、

「あん、誰だ?」

 とおっさんから話しかけられた。

「ええと買い取りしてほしくて」

「あ? 何も持ってねぇじゃねぇか。餓鬼の冷やかしなら早く帰りやがれ」


 俺の姿恰好をみたらまぁそう言いたくなるよな。ただの服にバッグすら持ってないし体躯もいいわけではないから冒険者には見えないもんな。とは言え一応客と言うかそういう立場なのだけれどその態度もそれはそれでどうなのだと思う。

「ああ、魔法でしまってあるんで……ヒュージボアってやつの」

 言いながら件の猪の一部分を魔法で以て取り出す。すると俺の風体のギャップからなのか眼前の男はぎょっとした様子で声を漏らした。

「な……お前なんでそんなもの……!?」

「いや、さっき森で狩ってきたんで、買取に……。あ紙みたいなのはさっき貰いました」

 猪と一緒に受付で書いて貰った紙を提示する。

「……まぁその魔法が使えるってんなら難しかねぇのかもな。足が見えてるってことは捌いちゃいねえようだな、ほれ早くだしな」

 言われて全貌を見せると再び驚かれた。まぁ足しか見せてないし受付の人にもおっさんにも半分近くが消し炭になっているとは言ってなかったしな。

「いや、お前なんだこれ!? 何がどうなったらこうなんだよ!!」

 目を丸くして男は叫んだ。そして俺の方を怪訝な様子で伺っている。けれどもこっちからしたら事実しかないし言えないけれどチートバフを貰ってしまったし仕方ない。

「いやぁ……その……追いかけられてて必死の思いでその……魔法はなったらこんな風に」

 言いながらドン、とそこに置いた。

「……そうか。いやでも惜しいな。ヒュージボアってなると牙は出回りにくいからな。そこが消し飛んじまってるのか」

「あはは必死だったので」

 俺が出した死骸と言うか下半身部分を見つめながら呟き、それに愛想笑い交じりで返す。

「まぁ一体だっても順番だからよ、ええと明日ね。それなら余裕だから、明日の朝にでもギルドの裏口来てくれ」

 と言われ受付のおっさんとのやり取りを終えた。さて、これで一先ず狩りも終えて、あとは食事と寝床と……。

 などと呑気な事を考えながら街の大通りに戻って気づいた。


 金に関して、結局手に入ってないという事実に。


「うおおお、しまったあああ!!」

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