14話 収納の魔法、イメージといえばアレ
来た道には勿論律義に件の水の玉を落としながら進んでいたので戻る事は容易である。
そしてあの猪がいた場所まで戻ってきた。とは言え彼女に配慮して茂みに隠していたからどうなってるやら、と思いロイに一言告げてそれを取りに行く。特に虫に食われているだとかそういう事はない状態で残っていた。改めてそのヒュージボアなるものの一部分ではあるがそれを見て大きさに驚かされる。というかなんでこの猪こんな森に入ってこれたんだろうかと疑問に思う程のサイズはしていて、端的に言うと多分全長が俺の体格の4倍近くある。今の四割くらいが消え去った状態でも俺の倍近いサイズがあるというに。
さてこいつを回収するわけだが、ロイから存在を教えて貰った収納の魔法とやらを試さなくてはならない。イメージがまだ固まりきっていないからそこが不安要素ではあるが……。取り敢えず早く回収してロイの所に戻ろう。
あの不思議空間からものを取り出す光景、それを自分ならばどのように行うか、それを想像する。右手を開いて力を籠める、左手はそれを支えるかの如く右手首を掴む。
「アンロック!!」
がちん、と音がした。それだけであった。
……。
……。
……?
「ん? いけたのかこれ?」
何か空中に浮かんでると言う訳ではなくて心なしかこう空中に波紋が広がってるように見える。手を突っ込んでみれば分かるのか?
昔見たアニメとはまた違うけれどその空中に向かって手を伸ばすと茂みも何もないのに俺の腕は何かに吸い込まれたように、隠されたように見えなくなっている。という事は、成功とみて良いのか?
怖くなって一度腕を取り出すとちゃんと手はある。特に消えてない。成功だと思いたいが本当かどうかは分からない、とそこいらの枝を適当にぽきっと折ってもう一度、空中に手を突っ込んだ。腕が隠れたのを見てから手を放し手を空間から抜いた。枝だけが見事に消えている。
「……取り出す時これぐちゃぐちゃにならないのかな、どうなんだろう。……まぁ良いか取り敢えず今は猪を入れよう」
一度枝を出すか考えたけどまぁまた猪を取り出す時にでもついでに捨てよう等と結論付けて体の前半部分の殆どが消えて血みどろの猪の後ろ脚を掴んだ。ちょっと気持ち悪い感触がする。……これ本当に入れて大丈夫か?他のもの血塗れにならない? ……いや今は枝しか入ってないけども。
「うーん鉄臭くなるのは嫌だけど……せっかくだし売りたいよな……」
ええい、ままよ、とヒュージボアなる猪を謎の空間に入れる。この魔法はどうにも謎空間に収納するらしいのだけれど、少なくとも俺の目からは中がどうなっているか、なんてのは見えなくて空中に微々たる波紋が広がっているというその光景しか分からなかった。だから手を入れると消えた風に見えるしこうして猪を入れる時もワイプで段々消えてるみたいな演出にしか見えない。中は見えないのだ。
「血の匂いちょっとするなぁ……あ、もしや……」
先程唱えた言葉はアンロック、即ち解錠である。ならば施錠すれば匂いも消えるのかも知れない、と思い再び右手に力を込めた。
「ロック!」
すると今度もまたがちん、と音がして血の匂いが落ち着いた。
なるほど、ロックとアンロックそれぞれで収納魔法の発動と解除の役割を担っているのか。
「よし、早くロイの所にいかなきゃな」
そうして二人で森を出て、街に戻る。
二人で街に入りこそしたけれど、その後は割とすぐに分かれた。ロイはあんなところに居たりしたけれど当然ながらただの薬草売りの娘であるからギルドに基本的に用事なんてものはない。俺はギルドに行く必要があるからそっちに向かうわけだ。
「じゃあここでお別れかな」
「本当にありがとうございました!」
「いやぁ……俺も色々教えてもらえたし感謝してるよ」
「そんな……私が教えたことなんて殆ど無いに等しいですよ」
謙遜されたけれど、確かに冒険者などではない彼女が知っている知識、となれば本当ならば一般常識レベルであったりするのだろうか……。
「じゃあ俺はギルド向かうから」
「分かりました。それじゃあ……サクヤさんは私の店に用事なんてないと思いますけど……来てくれると嬉しいです」
「そうだね、また時間あったら行くかも」
そうしてロイと別れた。




