12話 ヒール魔法を使おうとしたら恥をかいた
森で出会った少女、ロイの薬草探しを手伝う形で再び捜索を開始せんとする。こっそりと魔法で以てそのキュアテイルというものを探せないか試したのだけれど、駄目だった。少なくともあの魔法で探せるのはモンスター限定という事なのか。
改めて彼女の方をちらりとみて思ったが顔の傷やらがちょっと気になった。
「そういえば傷大丈夫なの?」
「え、ああ……かすり傷程度なのでそこまで」
「いいよ、ちょっとじっとしててね」
彼女にそう告げるて右手に力を籠める。やったことはないけれど物は試しにと回復魔法を試みた。少なくとも攻撃のイメージみたいなものを取り外して癒しの様なそういったイメージを探しあて思い描く。これだ、とそのイメージ図を固め、叫んだ。
「ヒール!」
何だか自分の心が落ち着いてる気がした。こう、安らぐ感じが。そして相対して彼女の傷は特に治っていない。つまり失敗ということになるわけだが、恥ずかしくなる。
「ええと、サクヤさん何を?」
「えっと……その……やったことないけど回復魔法とかで傷治してあげられないかなと……」
「えっ……あっ……さ、サクヤさんって回復魔法が使えるんですか!?」
「え? いや魔法が使えるなら誰でも出来るかなって思って……あっ」
しまった。普通に気づかない自分を阿保らしく思った。目の前にいる女の子は薬草売りの一家なのだぞ、誰でも魔法として使えるならそんな職業も植物も必要ないだろうが。完全に発言としては駄目なものだ。だからこそ真っ先に頭を下げて謝ろうとしたら
「ご、ごめんなさい!」
先に何故か謝られた。
「わ、私……その……サクヤさんがそんな凄い人だとは知らず善意に付け込んでその……」
「いやいやいやいや! 君が薬草摘んでるの知ってるのにこんなことしてる俺の方がおかしいからさ!!」
そもそもこの行い自体魔力に対して似つかわしくない俺のミスによるものだ。曰く回復魔法を使える者は結構希少らしく基本的にそういう人たちはギルドの医務室的な所で高額で雇われてるケースがほとんどだどかで冒険者としてはとても重宝される存在らしい。確かに自分の魔力削るだけで回復できるんだから薬草みたいな回復アイテムいらないんだもんな。で、そんな回復魔法が使える人間と言うのはえてして薬草やらポーションに対して見下している節があるとかなんとか。まぁ自分にとっては基本的にいらないもの売られてるようなもんか。
彼女の態度も何処かぎこちないというか固くなっている気がする。流石にやり過ぎたというか、魔法を気軽に使い過ぎたか。異世界人であることを明かせたらそれが一番説明として楽なのは分かるけど流石に出会って数分数時間程度の間柄の人に言う訳にもいかないし……。
「別に俺は、手伝いたいからこうしているわけで、そんな……。それにさっきから言ってるけど冒険者もそうだし魔法だって使い始めて日が浅いんだよ。だから、こうしてさ色々教えてくれるロイさんの存在は有難いと思ってる」
「そう……ですか、それならいいんですけど、でも何でまた私にわざわざ回復魔法なんか」
「わざわざ、ってだって傷ついてるし……女の子がその傷だからけなのそのまま放置できないみたな……? こう、助けられるならちょっとくらいは手を差し伸べてあげたいし」
まぁ嘗ての自分がこんなに良い人間んだったかと問われたら当然に否定の言葉しか出てこない。今の自分は何でもできる、だからこそこんな調子の良い事だって言えてる。
「代わりにって言ったら変だけど、俺ホントに何て言うか冒険者とか魔法とか無知だからさ、ロイさんが知ってる限りでもいいから教えて欲しい」
彼女は俯いた。じっとして、拙い声でか細い声で、「そういうことなら……」と発していた。納得と言うか了承というかはしてくれただろうか。それに誤魔化せたどうかは分からないけど、彼女の様子を見る限り既に俺が魔法について無知すぎるとかさっきの失言とか失態とかそういうものは遠く空の彼方の出来事に化しているように見えた。というかもっと、こう、言葉に上手くできないけど雰囲気として違うものなっている気がするのだけれど。
「あの……その……私を回復してくれるという事でしたら、その……私に触れてからでないと」
戸惑ったようにロイからそう告げられた。凄い顔を赤らめながらもじもじしている。
「え、あ、そうなの!!?」
途端に自分も顔が赤くなってしまった。魔法ってそんな面倒なルールみたいなのがあるのか!? あ、いや待てよ、と思い出す。女神テティスとのやり取りの中で基本的にあの女神は俺に対して魔法を扱うときは手の平を翳すことが基本的であったけど、それでも確かに一度だけ俺に触れて行った魔法がある。情報の伝達、その時は確か俺の額に手を当てていたか。そういう風に決められた何か、が一応は存在するのか。というかそもそもこれ大丈夫か?
流石に回復してあげる、といった手前触るのは緊張するから無しでなんて言えないし、向こうも何となくそれに関しては許してくれているように思えるし、と少し申し訳なくなりながら彼女の手に触れた。多分手でもいけるだろうからという選択なのだけれど、テティスに触れられた時とは比べ物にならない程の何かを感じるあの女神の見目が幼かったからなのか、今目の前の彼女が見るからに俺に対して赤面しているからなのか。考えるのも難しい。雑念交じりにどうにかこうにか
先程のイメージを更に相手に伝播させるそんな風に昇華させ念じ唱える。
「……ヒール!」
途端に俺のその触れていた手と彼女の体に淡い光が漂って彼女の腕やらについていたその擦り傷が段々と消えていった。
色々あったけれど兎も角、彼女の傷も治すことが叶ってこれで漸くちゃんとした形でのキュアテイルとやらを探すことが出来る。
「有難うございます……!」
深くお辞儀をされる。そして彼女はぱん、と両の頬を手の平で叩いて「さ、急いで探しましょう!」
と言った。切り替え早い。




