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9話 ギルドと買い取りの仕組み

「うおっ……!!?」

 ぐい、と足を引っ張られる。バランスを崩し地面に尻餅をついて、何事か足の方を見ると何やら植物の蔦のようなものが絡まっているのが分かった。さっきの植物だろうか、と手で以て解こうと試みたのだけれど、どうにも解けない。

 今一度サーチで以てよく見てみると先程の光が何やら濁ったような色に変わっており、サイズも大きくなっているのが分かった。


「うわっ!?」


 萎れたタンポポ的な何か程度に思っていたのだけれど、やがてソレはぐんぐん、と成長かのように巨大化していき牙が見えた。……実際に牙なのかは分からないが少なくとも俺からすれば十分に牙に見えるし涎の様な液体を垂らしている。言葉を発しているわけではないけれど、しかしその様子はどうにも俺を食わんとしている。

 フシャアァ、と何を言っているのかよく分からないその鳴き声で迫ってきている。

「……これ……食虫植物のモンスター的な奴か!?」

 あんまりファンタジー世界のモンスターに詳しいわけではないけれど、何か食べる仕草みたいなのをしてくる植物とやらは知っているしそれをモチーフにした敵と言うのもゲームではあるけど知識としてある。けれども対処方法は知らないわけだけど。

「いや……でも……流石に殺せば……いけるよな?」


 流石にこの状況下でドロップだとかを気にしてられないだろうと右手に力を籠める。水魔法が相性的に良いのかどうかは分からないけれど、それでも超絶パワーで放てば多分死ぬだろう。最悪切れ端程度でも何か売れればひとまずずそれで良しとしよう。それにモンスターはこれ一体と言うこともないだろうし。兎も角として右手に先程宮殿で試した時以上に巨大な水の玉を生み出してその食虫植物にぶつけた。少し大きすぎた感覚もあるが自営が何よりであるから環境破壊とかそんな細かいこと言ってられない。


 ぼん、と耳に劈くような大きな音がしてそのん植物の顔面に相当すると思しきその牙やらなんやらが消し飛んでおり、あとは残った葉がピクピクと動いている。トカゲがしっぽをきられてもしっぽだけ動いているみたいな、そういうものだろうか。しかしすぐにその葉の動きも止まり俺は解放された。


「ふう……こっわ……」


 ひとまず深呼吸をして落ち着かせる。まず自分の足の様子からチェックする。パッと見の印象ではあるけれど、特に大きな違和感はないし強いて言えば先程巻き付かれていたことからきている微妙な痛みと言うか感覚が残っている程度で問題は無いだろうと判断し、すっと立ち上がった。


「おっと……売れるのか分かんないけど取り敢えず持っておくか」

 そう思ってその植物の首から下という表現であっているのかは分からないがその部分をもった。どちらかといえば茎か。兎も角そいつを引っこ抜いて直に、手で持った。今更ながらバッグすら持っていない事に対する面倒くささに気づいた。とは言え金がないからそんなアイテムを入れられるもの、なんて買えないわけだけど。

「これ直に触ってたら価値が下がるとかあるのかなぁ……まぁそんなこと気にしてられないよな……」

 まずもってバッグが必要になりそうだと気づかされたがそれ以上に食糧分のお金は必要だろう。どれくらい稼げば一日過ごせるのかは分からない。けれど何となくの持った感じとしてこの植物を速く如何にかしたいという思いにも駆られたので良かれと思ってその森をそそくさと出て行ってしまった。


 街の中で物が売れる場所が何処なのかそういえば知らない事に気づく。けれどこの手の世界であれば買い取りの店があるかもしくはギルドで売れるかの二択と判断してよいだろう。女神様か誰かの特殊能力でもって文字は読めるからギルドだとか買取やだとかは適当に探してもそのうち見つかる筈だ。最悪分からなければ聞こう、と決めて街を歩く。本当にすぐにギルドが見つかったので入った。


「……はっず」


 思うと右手にあの植物の一部を直に持っただけの人間が入ってくるという光景は中々に滑稽な気がする。女神様の魔法によってその辺りの精神面はカバーされていたお陰で逃げ出したいとかそんなことは思わずに済んでいるが。それに自分は初心者なんだから、いいじゃないかの精神で取り敢えず分かりやすい受付めいた場所まで向かう。

 受付のお姉さんに「あの……」と話しかけて応対してもらった。少なくともこのギルドの受付の人は皆女の人らしいし、顔が良い。極力表情には出さないようにしていたがちょっと内心では嬉しくなっている。やはり美人を見ると心が穏やかになるね。社会人と言う訳ではないから何とも言えないけど確かに元の世界でも会社のフロントの受付は女の人のイメージがあるからギルドもその面で見ると普通なのか。


「どうされました?」

 にこにことした表情で問いかけて来る。

「ええと……つい最近冒険者になったばかりでして……ひとまず買取とかについて色々聞きたいなと……」

「買取ですね? 物はそちらに握られている物でよろしいでしょうか?」

「ああ、はい……これ一応植物のモンスターの死骸っていうか一部分なんですけど売れますかね?」

「それは鑑定次第ではありますかね。ですけれどモンスターの一部であれば大丈夫ですよ。素材の量や傷の有無、それから部位等で色々と変化は致しますが」

 この人は仕事だからとは言えこんな状態の俺に対してなにも笑わずに応対してくれている。それだけで凄い良い人に見えた。

「物はそちらのみで宜しいでしょうか?」

「え、ああ……はい」

「でしたら明日までには鑑定と買い取り額の算定は終わると思いますので、此方をお持ちになってまたお越しください」

 言いながら何かを渡された。紙のように見えるが俺が知っている紙にしては分厚いというか作りが荒いというか何だかごわごわしている感じがする。これがこの世界の紙という事か。いや、それよりも

「……ええと明日?」

「はい。他の方の買取もありますので、順番と言う風になっております。一応有料で先に買取してもらうことも出来ますが、いかがいたしましょうか?」

 なるほど、ギルドに入った時からわかっていたが、冒険者の数と言うのは相当のようだし、皆が皆が当然ながらこのアイテムの売り買いで生計を立てている、とすればこんな事にもなるのか。有料で、と言われても生憎金はないし例えばこの植物の買取価格から引いて貰って、とかが出来たとしてもこの植物がそんな高値で売れる気がしない。

「ああ、じゃあ、はい明日……でお願いします」


 また狩りか……。

 もう一度森に戻っていって高値で売れそうなモンスターを狩らねばならないのか。少し面倒くさい気持ちになるけれど生きねばいけないのだから仕方がない、と自分に言い聞かせて再び街を出た。

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