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LOCUS:Blessed Gems  作者: crew
大魔獣討伐編
7/11

7.傭兵組合 ◇

少し改変しました。

人物『フローマル・ショット』の性格を大幅に変更。

一部の言葉の表現を優しめに変更。

 リンウッドの村の建物には様々な種類がある。

 例えば、剥き出しの木造建築であったり、レンガ作りの頑丈な建築であったり、中にはガラスが使われている建築もある。

 そして傭兵組合の建物はまさしく、それらすべてが合わさった建築であった。


 土台にはレンガが使われており、屋根は少し形を変えて木造である。更に屋根には一部にガラスが使われているため、閉鎖空間である屋内にも関わらず心地よい日光が上から降り注ぐ気持ちの良い空間となっている。

 だがその反面、傭兵組合の建物には天窓以外の窓が存在しない。

 よって、外からは中の様子が確認できないようになっているのだ。

 その理由は単純であった。傭兵組合に入っている人々の大半は獣や人間との戦闘を生業にしている。そのため、喧嘩っ早く建物内で争い事が起きやすい。その上、傭兵という事もあり大半の組合員が人を殺すという事に大きな抵抗は無い。

 傭兵組合の建物内で何か事故・・があった時に、大通りの大衆の目にさらされないよう、視線を遮っているのだ。


 そんな傭兵組合。

 建物の出入り口は一般的な木の両開き扉であるが、その上には看板がある。看板には大きく傭兵組合と書かれており、それがなんの建物であるのかというのがすぐに理解できる。

 フユキは現在、その傭兵組合の建物の前に居た。



 ――――疲れた。危うく人波に揉まれて見つけられない所だった……



 フユキは疲れた様子で溜息を吐く。

 馬車を降りた後は大変だった。

 この地の人々は基本的に身長が高い。男であれば180センチ程、女であっても160センチ程が平均的である。そんな中身長140センチ後半であるフユキが歩けば、当然埋もれてしまう訳である。

 そんな埋もれた状態で周りの建物から傭兵組合を探していた為、探しにくい事この上なかった。

 運良くも傭兵組合の建物はわかりやすい様に扉の上に大きく傭兵組合という文字が書かれてあったので見つけることができたが、その看板がもう少し小さければ発見できないでいた事だろう。





 フユキは窓一つ無いその密閉された建物に少し威圧感を感じたが、恐怖したわけではなかったのでコンビニに入るような感覚で扉を開いた。


 すると、中には屈強な戦士たちが居た。


 普段は戦場にいますよなどと、言わずとも分かるほどの屈強な肉体に加えて、傷だらけの肌や鎧。中には目が潰れてしまっている人や片腕がない人、顔の半分が焼けただれている様な人も居る。


 そこでは男であれ女であれ、剣を持って鎧を着ていれば必ず筋骨隆々のマッチョであった。

 しかしそれとは逆に、クール系の男性やヒラヒラとした服装の女性もいる。それらの人物は例外なく杖や導具を持っており、魔術士であるという事が分かる。


 扉から建物内に入り、受付であろうカウンターに移動している最中。数人の傭兵がフユキの行く手を阻みながら声をかける。



 「ここはお子様が来る場所じゃねーぞ。さっさと帰んな!」


 「見た所どこかの貴族のお嬢様ってとこか? 何と間違えてこんなとこに来ちまったんだかね」


 「一応聞いておくが、こんな所に何しに来たんだ? こいつらが言うように、ここはアンタみたいな人間には一番関わりの無い場所だ」



 声を掛けてきたのは三人。

 やはり全員身長180センチ程で筋骨隆々のマッチョマンだった。腰には大きな剣を携えており、切るための剣というよりは叩き裂くための剣と言える様な、刃こぼれの激しい剣だ。

 大きいとは言え、フユキにとっては大きいが男たちから見ればちょうどよい程度の大きさである。


 そして最も重要な事は、三人は別にフユキに対して喧嘩目的で絡んできたわけではないという事だ。この様な治安が悪くて汚い場所に、小綺麗な子供が来たために、汚いものを何も見せないようそのまま帰そうとしているのだ。

 また、敵意が無いということはフユキも承知済みであった為、荒事にならないよう丁寧に返答する。



 「傭兵に少々興味がありましてね」


 「なんだ? アンタが戦えるっていうのか?」


 「そこそこの自信はありますよ」



 普通であれば笑い飛ばされて叩き出される所だ。普段の傭兵達であればそうしていた。なぜならこんな汚い場所にいつまでも子供を置いておくのは気が引けるからだ。

 いくら傭兵が喧嘩っ早いとは言え、それは大人同士であればの話。子供に喧嘩を吹っかけに行くというのはそれだけで程度が知れてしまう。


 だが、フユキの回答を聞いて普段通りにはできなかった。

 何故かフユキの言葉には重みがあったからだ。

 もしかすると口調や態度が大人びているからという要因もあるかも知れないが、それ以上に傭兵達の肥えた目が反応したのだ。こいつは本当に戦えるのかも知れない、と。



 「まあ待てよ。そう急かすもんじゃねぇだろ?」


 「お前は…… 『人質のフロー』じゃないか。帰ってきてたのか?」


 「ああ、ついさっきな。二階の会議室で少し話してたんだが、降りてみたらこの状況よ」


 「ここは傭兵組合だ。子供には刺激が強すぎんだよ」



 人質のフローと呼ばれた人物は、黒髪ウルフカットにヒゲが生えており全体的に毛が濃い三十代の男性だった。身長は他の傭兵達よりも少し高い事から、190センチ程はありそうだ。

 傭兵組合は三回建ての構造になっている。フローはその二階から降りてきたのだと言う。

 そして続けてフローはフユキに向かって言う。



 「どら、小娘。おじちゃんの手にパンチしてご覧。何なら蹴りでもいいぞ?」



 フユキは思わず怒りを感じてしまう。

 フローの言い方は、言葉を理解しない動物に話しかけている時の様な口調であった。まさしく遊んでいる感覚そのものだ。

 こいつには少し手を出しても仕方がない。そう考えたフユキは一応無表情のまま手だけを使って、差し出されたフローの手に軽いパンチを放つ。


 瞬間。

 フローの構えていた手は激しく外側に弾き出された。



 「なんだ……? 俺は一体何をされた……?」



 フローは自身の状況を理解できず、大きく後ろへと弾き飛ばされた手を自分の顔の前まで持ってきてまじまじと観察する。

 そして自分の手とフユキの顔を交互に三度、視線を往復させる。その間フローは困惑と驚きが混じってポカンという表情をしていた。


 直後。

 今度はフローの顔面に向かって先程と同じ一撃が放たれる。



 「ブファッ!」



 何も考えて居ない時の不意の攻撃だったので、受け身を取ることもままならず簡単に後方へ倒れ込んだフロー。体格差を考えて見た場合、その動きはありえない動きだった。

 いくらパワーがあるとは言え、フユキの身長は140センチ後半であり華奢とも取れる体格だ。それが身長190センチ台の筋肉だるまにも見える大男をノックアウトするなど、想像もできない。


 しかしそれもそのはずだ。

 フユキのパンチは、ゲーム時代でいう所の『格闘』の熟練度を五十まで上げた最上級のパンチなのだから。

 とは言え、流石に格闘熟練度五十の本気のパンチを食らわせた場合、頭が弾け飛ぶ可能性もある。そのため一応かなり手加減をしての物だったのだが、熟練度が高いおかげで物理的な威力に加えて素手攻撃で衝撃が発生するという技能があるため、それが影響してフローは大きく吹き飛ばされたのである。


 フローはゆっくりと起き上がってからフユキを見つめる。

 その目つきや姿勢は、まるで何かに目覚めた様な雰囲気を漂わせていた。



 「小娘ぇ…… いや、ここはあえてこう呼ばせて頂こうか! 『お嬢』と!」



 フローは先程までの態度とは別人になった勢いで大声で叫んだ。



 「やばいぞ…… 人質のフローが目覚めちまった……」


 「まじかよ、あのお嬢ちゃんそんなにいいパンチをしてたってのか!?」


 「人質のフローが犯罪者以外で目覚めさせられたのは初めてじゃないか?」



 傭兵組合の各箇所からそういった声が聞こえる。

 人質のフローを目覚めさせたという言葉を聞いて、フユキは首を傾げた。そこへ、すかさず最初にフユキに話しかけてきた三人が再度フユキに近づいてきて、説明を始める。



 「アンタ、厄介なもんに気に入られちまったな」


 「はい……?」


 「あいつの名前は『フローマル・ショット』この国の傭兵組合の中じゃあかなり有名な奴だよ。八まである傭兵ランクの内、実力は七に等しいとされているが、なんせ超が付くほどのドMでな。依頼で殲滅に向かった盗賊の長が好みの女だった時には、その女の攻撃をわざと受けに行って最終的には人質に取られる。そんなこんなで付いた二つ名は『人質のフロー』。迷惑行為とされて傭兵ランクも実力に合わず四どまりの、残念な奴さ」


 「そ、そうなんですか……」



 長々と説明をされたフユキは、引き気味で相槌をうつ。

 その間もフローはフユキに対して熱い視線を送っている。



 「お嬢…… 俺はあんたの強烈なパンチに惚れちまったみたいだぜ……」



 フローは先程殴られた頬の部分をスリスリと撫でながら息を荒くする。


 しかし、フユキは考える。

 どう見ても不審者にしか見えないこのフローという人物は、傭兵の中でも有名だという話だ。傭兵ランクという制度についてはフユキは知らないが、一番上から一つ下ということはそれなりに高いのだろう。


 これは使えるのではないか?


 この地で力を持つ者と繋がりを持っておくのは悪いことではない。なぜなら、いくらフユキが自身の戦闘能力に自信があるとは言え、情報戦や経験量や地形などの問題で負けるという可能性も十分に考えられるからだ。

 そういった点で、熟練した傭兵を味方に付けられるという機会は願っても居ないチャンスだった。


 そして、チャンスと共に仲を深める方法に付いてもフユキには考えがあった。

 幸いにも、男を相手にするというのであれば宮崎冬雪としての記憶がある。どんなことが嬉しくてどんな事が嫌なのか、その程度の事など手に取る様に分かるのだ。

 加えて、このフローという人物は、フユキのパンチに惚れたのだ。ではこれからも仲良くするためにはどうすればいいのか。簡単な話だ。パンチすれば良い。

 フローがドMというのであれば、フユキはドSになれば良い。それがフユキの答えだ。



 ――――そう言えば友達にドMのやつが居た…… そいつから聞かされるプレイの数々は正直引き気味で聞いていたが、今はその知識が役に立つ時だ!



 冬雪は性的指向に関してはあまり特筆がなかった。バイであるという事を除けば他は注目される事もない様な一般人だ。そして現代では、ゲイやバイが特殊視されることも減っていた為、それこそただの一般人と言える。

 だが、周囲の人間は違った。

 宮崎冬雪の周囲の人間は、ドSやドMはもちろんの事、控えめに言ってもあまり良いとは言えない様な趣向の持ち主達が集まり、なぜかそれをオープンにしている人が多かったのだ。

 毎度のようにそういった話を聞かされる冬雪はげんなりとしてしまっていたが、それを我慢して聞いていた成果がここで役に立つ事になる。


 フユキは深呼吸をすると、スイッチを切り替えた様に表情が一変する。



 「惚れたと言ったな? よしっ。ではそこのドM」


 「え?」


 「え? ではない。君のことだ」


 「な、なんでしょう!」



 フユキはかつての友人との記憶を思い返して最善の言葉を選ぶ。

 フローは急に攻めの口調になったフユキに対して困惑し、思わず敬語になってしまう。



 「君とは今後も仲良くしていきたいと思うのだが……」


 「っ! それは願ってもない!」


 「それは良かった。ではとりあえずここで待機していてくれ」



 どうみても初対面には見えないリズムで会話をする二人。


 ここで待機をしていてくれと言われて、少し考えるフロー。

 傭兵の名声には多少なりとも威厳という物が含まれる。威厳の無い傭兵はどれだけランクが高かったとしても、それに対して敬意を示されないという状況になってしまうのだ。

 この場でフローがフユキの言うことをすんなりと聞いてしまえば、それは威厳に関わる。そういった考えで即答することができなかったのだ。


 だが、フローは思った。

 フユキの実力は傭兵ランク六相当の実力を持つフローにとっても脅威になり得る程のものだ。なんの勢いも腰も入っていない様なパンチで巨体が吹き飛ばされたことからそれは明白。

 であればフローにとっても、フユキと仲を持っておくことは得になる可能性が高い。フユキから先程のパンチを習うこともできるかも知れないのだから。

 そして答えを出す。従うという答えを。



 「よ、よし。待とうじゃねぇか!」



 潔く了承したフロー。

 本人にとっても、傭兵組合の建物の中でこの様な行為に及ぶことは、威厳が無くなると考えていたためやってこなかった。だが、フユキの拳にはその壁をいとも簡単に破壊する程の魅力があったのだ。

 それこそ威厳を捨てても良い程のものだった。





 そして、フユキの方は自分で演技をしていて一つの感情が湧いた。



 ――――それにしても、この姿でこんな事を言われると流石の僕でも少しニヤけてしまうかも知れないな……



 キャラクター『フユキ』は宮崎冬雪の理想形だ。その外見でドSな振る舞いをされた場合、一般人である宮崎冬雪であっても、歪んでしまう可能性は十分にあった。

 実際、現在のフユキとしての演技の裏で、冬雪としての部分では意外といけるかも知れないと感じているのであった。

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