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予想外

近いうちに新連載を始める予定です!


もし始まった時はお知らせするので、そちらも見ていただけると幸いです(*^^*)


「・・・・・・!!」


2試合目の作戦を聞かされたみんなの反応は、良いものではなかった。


それはそうだ。負ける可能性があるのだから。


6組がさっきの試合に勝ってしまったため、決勝進出のためには勝つしかなくなった。


ただ、俺は作戦を止めようとは思わない。


「大丈夫。ピンチになったらすぐ代わるから」


その一言(うそ)に場は安堵に包まれる。


俺は6組の試合結果を見て予定を変更した。


点数は3対2。多分、元野球部メインじゃなくても余裕で勝てる。

なので俺はあくまで保険のつもりでベンチで待つ。


「さ、もう試合開始だ。行こう!」


主審が両チームを呼んだ。その声に呼応し、返事をしながら列に並ぶ。





試合は俺の想定外の方向へ向かってしまった。


なんと、初回を三者凡退で抑えたのだ。


しかも、裏の攻撃で3点を先制した。


よく見ると、みんなの顔がかなり引き締まっている。


自分たちの力で何とかしようと思うことが、プレッシャーではなくそのまま力になったようだ。


守備で固さも見えないし、バッティングで焦って引っ掛けることもない。練習の成果をそのまま出している。


その後もピンチを迎え、点を取られながらもこちらも取り返し、9対4で勝利した。


まさかだな。これはこのまま行けるんじゃないか?


『これで午前の部を終わります。1時間の昼食、休み時間後午後の部に移るので、試合のあるチームは時間に間に合うように集合してください』



かくして午前の部、予選が終了した。




「そっちも決勝に残ったのか。おめでとう」


「ありがとう。得失点差でギリギリだったんだけどね」


運動場端の木陰。コンクリートの上で、俺と佳乃は弁当を食していた。


ここは俺の見つけた穴場で、校舎側から見たら見えないところに位置している。


女子チームも決勝に進出したということに、喜びが込み上げてくる。


女子の決勝戦も高校野球のグラウンドで行われるが、男子より先にある。


試合は時間無制限の5回ルール。1時間はゆうに超えるので、後半はスタミナ勝負になる。


「そういえば作戦の結果だけど、みんな強すぎて失敗したよ」


「それはいいこと…なんだよね?」


「まぁ、いいことと言えばいいことだな。予定としては真逆だけど…」


予想外の結果に焦りつつ、決勝戦の作戦を考える。


・・・いや、試合前から決めるのはやめよう。多分、そのまま戦うのが1番強い。


仲間を信じる。そしてのびのびとプレイする。

少年野球でも教えられ、一番大切にされる事。

今こそ、その教えを使う時だ。


「よし、決まった!」


「そんな自信あるんだ。じゃあ、勝てるね」


「まだ分からない。ただ、これが一番勝ちに近いはず」


「そっちの勢いをつけるためにも、まずは女子チームが勝たないとね。それで、一つお願いがあるんだけど…」


女子チームが勝つためのお願い、それは・・・





「そう、ここをこう持って、ここで腰入れて…」


バッティングフォームの指導だった。


しかし、初心者ほど教えやすい人はいない。

ある程度野球をしている人は、フォームが固まってしまい、変化するのが難しい。


佳乃の場合は本当の初心者なので、俺が教えたフォームがそのまま固まる。


まず、持ち手を正してくっつける。そして女子でも振れるように、グリップエンドから拳1つ空けさせた。


これで手はクリア。あとはフォームだが、ここが難しい。


投球待機状態は修正する必要は無かった。

ちゃんと肩幅と少し開いて、両足を投手に向けて真っ直ぐになっている。


問題は振り方。初心者あるあるだが、ヘッドが外から出てきて、ダウンスイングになる。


その結果、力が上手く前に伝わらず、平凡なゴロにしかならない。


「女子の守備ってどんな感じ?」


「んー、転がってるのはみんな捕ったり触ったりできるかな。でも打ち上がったのはほとんどの人が捕れないよ。あと、聖奈ちゃんが打つ早い打球もほとんどの人が捕れてなかったかな」


今の話を聞く感じ、フライとライナーを打つとほぼヒット。


ならダウンスイングを直すだけでいいな。


「もう1回構えてみて」


佳乃を構えさせ、ダウンスイングになる原因を探す。


すると1つのことに引っかかった。


これだ。バットを立てている。ここからバットを出すなら重さに負けてダウンスイングになるに決まっている。


「バットをさ、右肩に置くように持ってみて」


俺の指示通り、バットを右肩にかける。


「そこから腰を回しながらバット振ってみようか」


「・・・!」


・・・驚いた。急にスイングが変わった。


「…どうだ?振りにくくないか?」


「全く!最初より振りやすくなったよ!ありがと!」


いつもは大人しい佳乃が目の前でぴょんぴょん跳ねている。そこまで喜ばれると教えた甲斐があったというものだ。


「お、もうこんな時間だ。もうそろそろ戻ろうか」


「うん。絶対勝つよ!活躍してみせるから、応援よろしくね!」




過去1番レベルに元気に走っていく佳乃。


そんな姿を見た俺は、佳乃が活躍することを心から願った。






最後まで読んでいただきありがとうございます!

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