天才軍師就任?
今回から「クラスマッチ編」です。
「クラスマッチだー!!!」
5限目が終わって早々、優斗が両手を天に掲げ、大声で叫ぶ。
「次だっけ、色々決めるの」
「ああ!競技に別れて話し合いだな!」
俺の曖昧な説明を細かくしてくれる優斗。どれだけ楽しみなんだよ。
「ん?怜は楽しみじゃないのか?」
「もちろん楽しみだぞ。でも、今日じゃないだろ」
俺もとても楽しみにしている。
だが、言った通り今日じゃない。
来週のことを今から盛り上がってたら持たないし。
「確かにそうだけどさー。ちなみに怜はどっちにするんだ?」
ソフトボールとバレーボール。
この前の段階ではソフトボール一択だったが、どっちも楽しそうで迷っていた。
「どうしようかな。どっちでもいいかな」
「じゃあ俺とバレーに行こうぜ!」
「優斗はバレーにするのか。得意なのか?」
「いや、得意って言うより、バレーの方がマシってだけだ。ここで活躍して彼女を作ってやる!」
“彼女”というワードに、横で聖奈と話していた佳乃が反応した。
あれからあまり学校で話したり接していない。
LINEでは会話しているのだが、いざ出会うと全くである。
俺もこのクラスマッチで佳乃との距離を縮めないと。
「まぁ、頑張れ。時間になるからまたな」
「クラスマッチのチーム決めをするぞー」
黒山先生が教壇にたち、黒板に文字を書く。
「廊下側に男子、窓側に女子が集まって、ソフトボール11人、バレー9人のチームを組んでくれ。決まったら、各チームのキャプテンが前に来て、チーム全員の名前を書く。いいな。それでは、始め!」
「とりあえず、希望を聞こうか。ソフトボールはこっち、バレーはそっち。で、どっちでもいい人はここに集まってな」
翔が仕切り、スムーズに進行していく。
その中、1人の男子が、みんなに聞こえる声で呟く。
「そういえば、当日野球部遠征だったよな」
「それはほんとか!確かこのクラスは野球部いないよな!じゃあソフトボール優勝狙えるじゃないか!」
スポーツマンが反応する。おや、この流れは?
「この中で野球経験者の人は手を挙げてー」
やっぱり来ましたか。
手をあげないわけにはいかないよな。
「・・・」
俺は無言で手を挙げた。
俺に続いて3人手を挙げる。
「とりあえず4人は確定したな。あとは自由に行こう」
すると、偶然1発で別れた。
翔はソフトボール側、優斗はバレー側で参戦だ。
「チーム決定だな。各チームで話し合いを始めよう」
ソフトボール組は前で、バレー組は後ろに移動して話し合いを開始する。
「キャプテンは・・・俺でいいかな。進行は怜に任せるよ」
急に司会を振ってくる翔。
「なんで俺だよ」
「1番戦略的な考えができるだろ?」
否定はしない。プレーよりサポート。人を立てて、俺はそこそこ活躍すればいい。
この立ち位置に立てば、これができる。
「分かった。俺がやるよ」
「それでは、進行を任されました永谷怜です」
「一つ確認だけど、みんな目を閉じて」
俺の声に反応し、チーム全員が目を閉じる。
「本気で、勝ちたい人は手を挙げて。・・・・・・ありがとう。目を開けていいよ」
この質問にはちゃんと考えがあった。
みんな挙げるのは大前提。大切なのはそれまでのスピード。
「いいね。このチームなら勝てる」
俺は確信を持って言う。
みんなが挙げたタイミングは、俺が質問をした瞬間。
ここの全員が、心から優勝を狙っている。
「この時間で、おおまかな守備位置を決めよう」
「もう決めるのか?」
翔が質問を投げかける。
「ああ。明日から体育はクラスマッチの練習だろ。そこにスムーズに入って有意義な練習をしたいからな」
「なるほど。流石だな、天才軍師」
「そんなんじゃねーよ」
俺は笑って否定する。
俺がやることは簡単。
今日ある程度ポジションを決める。
明日実践。その後、帰った後に守備能力、肩などを鑑みて再度ポジションを振る。
そしてまた次実践。
この繰り返しで固い守備を作る。
「俺入れて元野球部の4人は、申し訳ないけど守備位置を決めてる。キャッチャー、ファースト、ショート、センターの4つ。ちなみに現役時代はどこだった?」
「キャッチャー」「ファースト」「ピッチャー」
3人ともいいところをしていた。
「完璧だな。じゃあ俺がショートをしよう」
「なんで怜がショートなんだ?同じ内野手だし、ピッチャーしてたやつがショートでいいんじゃないか?」
「えーとな。ピッチャーは内野で唯一、外野投げなんだ。それに、その肩の強さを外野からの返球で使って欲しくてな」
「なるほど。それじゃ納得だな」
「あとは好きなところの取り合いで!ベンチの人は試合毎にスタメン変えるから心配しないでな」
俺の言葉で、ポジションの取り合いが始まる。
もちろん一番人気はピッチャー。
元野球部がした方がいいのは当然だが、正直ストライクが入れば誰だっていい。
じゃんけんの結果、1番やる気を出していたスポーツマンが勝ち取ったみたいだ。
「とりあえずはこれで決定だな!」
今日やろうとしていたこと全てが終わった時、授業終了のチャイムがなった。
野球を離れてもうすぐ1年。こんな形で役に立つとは。
翔が言ってくれた天才軍師として、絶対的に信頼されるように頑張ろう。
そう誓い、今日決まった守備位置を見つめた。
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