残酷な恋
最後までお楽しみください(*^^*)
昼ごはんを早めに終えた俺たちは、また自転車に乗って風に吹かれていた。
「あれは何?」
前を向いてハンドルを握ったまま、浜野が話しかける。
「公園みたいだな。色んなものがあるらしいから入ってみようか」
自転車を停め、花のアーチをくぐる。
右奥に大広場や遊具があるが、そっちに目移りすることは無い。
なぜなら、目の前に、綺麗な花園と、妖精の世界にあるような小さな小屋があったから。
多種類の花や木が生えていて、小屋までの一本道を彩っている。
「あの小屋に入ろう!」
俺は浜野に手を引かれるがまま、小屋に向かって走った。
小屋は木で出来ていて、中には木の机を挟むように二人掛けの木の椅子が並んでいる。
「飲食禁止」と「喫煙禁止」の看板のおかげか、小屋内は清潔で、木のほのかな香りが漂っていた。
ふと浜野の方を見ると、何か言いたそうな顔をしている。
「どうした?」
「あの、さ。写真撮らない?」
「・・・・・・」
再び訪れたこの瞬間に俺は言葉に詰まる。
その様子を見ていた浜野が
「分かってるの。彼女がいるから撮れないって。でも、1回きり。今日が終わったら、もう邪魔しないから、だから、撮って、よ」
後半につれて声が弱々しく、涙声になりながらも、浜野は想いを言い切る。
「・・・分かった。1枚だけな」
これを断れない俺は心が弱いのかもしれない。
ある一部からは「優しい」と捉えられるが、過半数からは「甘い」と責められるだろう。
「ありがとう。撮ってくれて」
なんとか涙を抑えて、1枚写真を撮った。
加工など何一つない、美しい景色と、2人のピースサインがそこには写っている。
「いい写真だな」
「うん」
浜野はそれから数分、写真を見続けた。
微笑んだり、涙を流したり。
色んな感情が彼女の中を行き来していた。
ようやく落ち着いたようで、俺たちは公園を後にした。
見晴らしがいい丘で海を見たり
無料で入れる小さな動物園を回ったり
写真には残っていないが、思い出には深く刻まれた。
「終わったねー」
1周が終わってゴールに到着した。
自転車をレンタル所へ返し、駅で電車を待つ。
「終わったな。明日の足が心配だ」
「大丈夫?来週の金曜日クラスマッチだよ?」
「さすがに来週までには治るよ。でも、そっか、クラスマッチか」
確か競技は・・・ソフトボールとバレーボールだったっけ。
野球してたし、ソフトボールなら恥ずかしい思いをしないかな。
あ、電車きた。疲れたし着くまで寝よう。
音のならないアラームを設定して、俺は目的地まで眠りについた。
「じゃあな」
駅に着き、俺は浜野に別れの挨拶をして駐輪場に向かう。
すると
「待って!」
浜野に呼び止められた。
「あの、言いたいことがあるの」
来たか。今から俺は勇気を出さないといけない。好意を寄せてくれている人をを振るという勇気を。
告白をするより、受けるより勇気がいるが、乗り越えなくてはいけない。
「本当はね、今日、告白するつもりだった。まぁ、今こんなこと言っちゃったら意味が無いんだけど」
浜野は頬を掻きながら言葉を続ける
「でも、出来なかった。困らせてやろうって思ったけど、あそこまで彼女のことを想っているのを見たら、出来なかった」
「本当に羨ましいな。もっと早く言っていれば、もっと早く好きになっていれば、私もそんな風に想ってもらえたのかな」
涙をこらえ、何とか口を動かしている。
「だけど、約束だもんね。もう誘わないし、邪魔しない。今日はありがとね、ばいばい」
浜野は奥の車へ歩いていく。
俺も自転車に跨り、帰路についた。
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(告白はしなかったけど、あんなんしたようなもんだよ〜〜!!)
私は、ベッドに顔をうずめながら悶える。
永谷くん優しかったな。彼女さんのことを想って、私のことを思ってくれてた。
こんな迷惑な私に、真っ直ぐに接してくれた。
おかしいな。さっき諦めようって決めたはずなのに。
諦めよう、諦めようって自分に言い聞かせる度に“想い”が強くなっていく。
彼とのこれまでの会話が、頭の中に流れる。
恋を終わらせるための1日だったのに。
神様でもなんでもいい。
私を諦めさせてください
他にいい人を教えてください
大好きな人がいるのに絶対に結ばれない、そんな残酷な状況から解放してください
私はベッドに仰向けに倒れ込み、大粒の涙を流しながら、一言だけ呟いた。
「ああ、やっぱり大好きだなぁ…」
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