サイクリング
リアルで忙しく、遅くなりました。
前も言ったかと思いますが、年末年始はほとんど執筆できません(´・ω・`)
「すまん!待ったか?」
集合時間ギリギリ。滑り込みセーフで待ち合わせ場所に到着した。
「ううん。私もさっき来たから」
笑顔で立つ浜野。
いつものスポーティーさを残しつつ、女の子らしさも取り入れている、彼女らしい服装だ。
「とりあえず乗り込もう」
俺たちの交通手段は電車。
前に佳乃と行った時と同じ方向だ。
ただ行き先は違う…らしい。
実は俺も知らされていない。
浜野が秘密にしていた訳ではなく、俺が色んなことを考えていて聞くのを忘れていた。
俺は浜野に手を引かれ、電車に駆け込んだ。
佳乃と降りた駅を通り過ぎる。
「次の駅で乗り換えするからねー」
乗り換え?そっち方面は初めて行くな。なんか楽しみになってきた。
俺たちは乗り換えをして、さらに3駅ほど進んだところで降車した。
「ここか?初めて来たな」
「実は私も初めてなんだよね。調べたら楽しそうだったから!」
互いに初めて来る場所か。ちょっと不安はあるが、スマホもあるし大丈夫だろう。
「へぇ。何があるんだ?」
「サイクリングだよ!海のそば通ったり、見晴らしがいい丘登ったり、途中に色んな遊び場があったり!」
サイクリングか。10年くらい前に家族で行ったっきりだな。
あの時は小さかったし、ほとんど覚えてないから実質初めてみたいなものか。
「そのためのこの服なんだー」
なるほど。運動しやすそうな服だったのはここに行くからだったのか。
俺も比較的運動しやすい服なので、助かった。
「早速行こうか。レンタル所はこっちか?」
看板を頼りに俺は足を進める。
レンタル所には、数多くの自転車が並んでいた。
自転車の大きさ、ハンドルの形、タイヤの太さなど、自転車売り場のように綺麗に陳列されている。
その中の1種類に、浜野が目をつけた。
「永谷くん、これにしよう!」
浜野が指さしたのは二人乗りの自転車。
前と後ろのペダルが連動していて、2人で漕いでも、どちらかだけで漕いでも進むことが出来る。
「これか?」
俺は迷った、というより、躊躇った。
完全にカップルと思われる。住む場所から遠いところとはいえ、誰かに見られる可能性は0じゃない。
だが、電動アシストが付いている分こっちの方が楽だ。
「わかった。こっちにしよう」
結果、俺は二人乗りを借りることにした。
レンタル時間は3時間、1日の2つ。今は10時すぎでまだ時間があるので、1日の方を購入した。
「スタートー!」
浜野が前、俺が後ろのフォーメーションで走り出した。
俺が負担の大きい前をすると言ったのだが、景色が見たいと言われ、譲ることにした。
スタート地点から数分経った時、俺たちは海の近くの道を走っていた。
「きれー。あっちの海と全然違う!」
左に見えるのは美しい海と砂浜。
晴天も相まって、潮風がとても心地良い。
周りの人たちも、その海に釘付けになっていて、自転車を止める人がいるほどだ。
「少し先に砂浜に降りれる所があるから、そこまで行こう」
「はーい。あ、あそこかな?」
直線の先に階段が見えた。
丁寧に駐輪場まであるので、これもコースの1部なのだろう。
「涼しいなー。潮風のいい匂いがする」
「…そうだな」
この前テレビで、「潮風の匂いはプランクトンの死骸」と聞いた俺は、なんとも言えない表情に何とか笑顔を浮かべて応える。
俺も好きなんだけどな・・・。あれを聞いてしまったら、な。
「ねー。写真撮ろー!」
「わかっt」
と、最後の一字で俺の口が止まる。
恋人がいるのに他の人と撮っていいのか。
友達と遊びに来ているのならいいかもしれないが、相手が相手だけに、撮るのはいけない気がした。
「そ、それより早く先に進まないと!昼時になったらフードコートが混んでご飯食べれなくなる!」
「えー。まあ仕方がないかー」
浜野には悪いが、ここは断らせて頂こう。
それから海のそばを進み、森に入り、抜けた所にフードコートがあった。
大きなショッピングモールの中のものがそのまま外に出たような場所で、麺類、中華、スイーツまで多くの種類の店が並んでいる。
「さすがにまだ少ないね。この時間に来て正解だったかも」
今は11時前。大抵こういう場所は11時~14時くらいまで混むので、この時間に来ようと決めることにした。
適当に席を取って、何を食べるかを話し合う。
「永谷くん何にする?」
「俺はあの洋食屋のどれかを食べるつもり」
俺が選んだのは有名な洋食チェーン店。
スパゲッティやオムライス、ハンバーグやカツ定食などがあり、万人受けし、ハズレがないことで名が知れている。
「じゃあ私はそこのオムライスにしようかな」
「それもいいな。俺はハンバーグにしよ」
2人のメニューが決まったところで、注文しに行った。
出来たのを知らせるアラームを渡されたが、人が少なかったため、そこまで待たずに鳴った。
「どっちも美味しそ!早く食べよ!」
と言いながらしっかり写真を撮る浜野。
今どきの女の子って感じだな。
「いっただきまーす!」
俺も手を合わせ、小さく声に出し、ハンバーグを切って口に運ぶ。
「ん。美味しいな」
「ほんとにね!あ、それと」
1度スプーンを置き、俺の方を向いて、優しい笑顔で浜野は言った。
「ずるい誘い方だったけど、今日来てくれてありがとね」
短い言葉だったが、俺はその言葉から色々な思いを感じた。
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