優しい妹
この頃少し投稿ペースが落ちていますが、それには理由があります。
それは、「新連載」です。
今、色んな設定やらを考えている最中なので、楽しみに待っていただけたら嬉しいです(*^^*)
その時は、どちらも週2、3投稿になると思います!
それから俺はずっと考え続けていた。
あの誘いの理由を、意図を、そして浜野の気持ちを。
ああ言うということは、そういうことなのだろうか。
「自意識過剰だ」。そう思いたかった。
だが、あそこまで言われるとそう思えない。
「浜野が俺に好意を寄せている」
客観的に見ても、主観的に見ても明らかで。
鈍感な俺でも気づいてしまうくらい。
彼女は告白と同等の言葉を俺に対して綴った。
その状態はその日だけでは収まらず、宿泊研修が終わった後も続いた。
夜の自由時間も、次の日の木工体験も、帰りのバスでさえ。
決して頭から離れず、俺の脳にまとわりつく。
途中佳乃たちに話しかけられても、俺は上の空で返すだけだった。
「ただいまー」
いつの間にか家に到着した。
安心からか、家に入った途端にガクッと疲れが出る。
「おかえり!荷物持つよ!」
琴葉が疲れている俺に気を使ってくれる。
優しさに甘えて俺は荷物を渡し、覚束無い足取りで2階のベッドまで歩く。
俺はベッドに座り、そのまま横に倒れる。
「今からでも断るべきか、否か」
その事でずっと悩んでいる。
常識的に考えて、断るべきだ。
ただその場合、俺と佳乃のことがみんなに伝わる。
浜野の目は本気だった。その時は確実に言うだろう。
そしてあと一つの障害。
それは、「浜野の覚悟を簡単に断ち切っていいのか」ということ。
付き合いたてなんて、絶対に奪えない。
そんなことも分かった上で、彼女は誘ったのだ。
傍から見たら、最低な女と思われるのだろう。
しかし、俺はそうは思えなかった。
あの覚悟は、恐らく普通の告白より勇気がいる。
負けると分かっていて仕掛けているようなものだ。
「行こう。断らずに。そして、誠意を持って気持ちを伝えよう」
俺は決断した。
それと同時に次の悩みが訪れる。
「佳乃に言うか、否か」
これはすぐに答えが出た。
言う。ちゃんと、理由も添えて。
俺はLINEを開き、佳乃にメールを送った。
誰と行くのか、どこに行くのか、なぜ行くのか、そしてどうするのか。
正直に。嘘なんてつけるはずがない。
全ての作業が終わり、俺が重力のままにベッドに倒れ込んだ時、ドアをノックする音が聞こえた。
「お兄ちゃん、入るよ」
「どうぞ」と力なく返事をし、部屋のドアが開く。
「ねえ、さっきから大丈…夫、みたいだね」
「ああ、疲れてはいるけど大丈夫だぞ」
「いや、そっちじゃなくて。なにかに悩んでる顔してたから」
さすがに妹と言ったところか。顔と声色でバレてる。
しかも解決した事まで。
「よく分かったな。すごいな琴葉は」
「ずっと見てきたからね!」
琴葉は手を腰に当て、エッヘンという顔をし、言葉を続ける。
「で、何で悩んでたの?」
「いや、それは話せないよ」
「ねぇなんのこと?宿泊研修?友達?それとも・・・長瀬さん?」
最後にその名前が出たことに驚いた。
たった1回。さっと紹介しただけなのに覚えていたのか。
「・・・長瀬さんの事なんだ」
その反応で図星だと気づいたらしい。
「・・・ああ、そうだよ」
俺は隠すことを諦めた。どうせバレる。
なぜ俺の周りには俺の心が読める人が多いのだろうか。
「何?告白する覚悟でも決めたの?」
「そんなのとっくの前にしてるし、実行して成功もした」
「へー。・・・って、ええーーー!!」
「声がでけぇよ」
「でかくもなるよ!え?付き合えたの?あのお兄ちゃんが」
あのとは失礼な。
学校では意外と真面目にしてますよ。
「付き合ったよ。ちょっとずるいタイミングだったけど」
「へーえ!詳しく教えて!教えて!」
俺は話した。佳乃の告白から、俺の告白まで。
「いいねー。なら尚更なんで悩んでたの?付き合った直後なら幸せオーラ全開が普通でしょ?」
「あー。・・・それはな」
少し迷った末、俺は話すことにした。
肝試しの時にした浜野との会話。
そして、浜野がどんな人かを。
「は?なんで断らなかったの?最低」
たった1人の妹から厳しい言葉が浴びせられる。
そうだよな。それは分かっている。
「そんなの知ってる。だけど、選択肢がYESしか無かったんだよ」
「それを長瀬さんは?」
「さっきLINEで言ったから知ってる。それでとりあえず解決したからこんな顔してた」
「それでも不安でいっぱいだと思うよ。今は信じて貰ってるだろうけど、早めにどうにかしないと」
「分かってる。うん、分かってる」
俺は力強く応えた。
「頑張ってね!じゃ、私は下に行くから」
そう言い残して琴葉は部屋を後にした。
琴葉は優しいな。
ずっと兄想いで、反発しないで、懐いてくれて。
琴葉に恋人ができたら、少し寂しいな。
もしかしたら琴葉も同じなのか?
いや、それは無いか
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