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肝試し、浜野の覚悟

ここから年末年始にかけて、投稿ペースが少し落ちます。


特に年末年始はほとんど書く時間が無いと思いますので、ご了承ください。


あの後、俺たちは順路の通りに進み、ゴールした。


告白を聞いていた人が少しだけいたらしく、広場内で噂が広がる。


それは解散して各部屋に移動したあとも続いた。




「誰が告ったんだろうなー!」


俺たちの部屋でもその話題で賑わう。


予め内緒にしてくれとお願いしたため、広まることは無いと思うが、悟らせないようにだけ気をつけなければ。


「そ、そうだなー。誰なんだろうなー」


優斗が棒読みで返す。


演技する自信が無いなら黙っててくれよ!と心の中で叫びながら、俺は見守る。


幸い聞いていたのは他クラスの人で、声でバレることは無い。


「それより夕食だろ。移動しよう」


優斗がボロを出す前に、食堂へ行く流れにする。


「そうだな。少し早いけど食堂に行くか」


翔がそう発言したことで、みんな話をやめて部屋を後にした。





7時50分。全員風呂を済ませ、広場に集合する。


この後は肝試し。2人1組になって、スタートからゴールまでを歩くだけ。


だが、その途中に色んな仕掛けがあるらしい。


人数が多く時間が短いためすぐにゴールにつくらしいので、苦手な俺でも幾分か気が楽だ。


2人組を作る時間。


俺は3人に嵌められて佳乃と組むことになった。


周りは男子ペアと女子ペアばかりで、男女ペアは両手で足りるほどしかいない。



「よし、行こうか…」


俺は不安を覚えながらスタートする。


10数センチ横にはついさっき恋仲になった佳乃がいる。


肝試しの微かな恐怖と佳乃が隣にいる緊張。


「ちょっと、速いよー」


佳乃から袖を掴まれた時に、無意識に早足になっていたことに気がついた。


「ご、ごめん」


「大丈夫。先に進も…!?きゃぁー!!」


「うわぁぁー!?」


急にフラッシュがたかれ、佳乃が驚く。

そしてそのリアクションに驚き俺が叫び声をあげる。


「あー、びっくりした。いきなりこれか」


1番目がこれ。ということは、これから先はこれ以上と考えた方が良さそうだ。


手を繋いだりしたかったけど、とてもできる場合じゃないな。


どうにかして出来ないものか。


考えながら歩くうちに佳乃が少しずつ前に出る。


追いつこうと走ろうとした時、横から手が出て引っ張られた。



「・・・!!?」


驚きすぎて声が出ない。


掴んだ手の主を見ると、そこには知っている顔があった。


「って、浜野か。ほんとに怖かった」


「ごめん!急に引っ張っちゃって」


「それはいいけど、なんでここに?」


「私、肝試しの実行委員的なやつになってて、場所について驚かす役をしてたんだよー」


「なるほどな。で、俺を引っ張った理由は?」


「一つ気になることがあってね。それを聞きたくて」


「気になること?なんだ?」


俺は首を傾げて聞く。


「噂の告白ってさ、永谷くんじゃない?」


「!!」


バレていた。あの時の声を聞かれたのか?

さすがに浜野が聞いていたら俺ってバレるか。


「どうしてそう思う?」


「声を聞いてそうじゃないかなって。そして、今二人で歩いてるとこ見て確信したの」


やっぱり聞かれていたのか。

で、この状況。これは言い逃れ出来ないな。


「…大正解だ。でも、他の人には言わないでくれよ?」


「それは彼女のため?」


「ああ、そうだ」


みんなにバレたら冷やかされる可能性がある。

俺はともかく、佳乃はそういうの苦手だろうから、バレるわけにはいかない。


「分かった。でも、黙る代わりにお願いをひとつ聞いてよ」


「お願い?俺に出来ることならいいぞ」


すると浜野は一度顔を下にし、意を決した様な顔でこちらを向き直してから、言った。


「次の休みにさ、一緒に遊ぼ」


「っ!そ、それは・・・」


「デートじゃないから大丈夫だよ。行きたいとこに来てもらうだけ」


「それでもな・・・」


浜野の顔を見る。

その顔は真剣そのもの。部活の試合形式の時に見せる顔となんら変わらない。


「ダメって言うなら、こっちも言いふらす。それくらいの覚悟で頼んでるの」


「・・・分かった。その1回だけな」


俺は折れてしまった。

断らなきゃいけないとこなのに、この先に何かを感じた。それを見たくなった。


「ありがとう。ほら、彼女さんに追いつかないと!」


俺は茂みから突き出されて、「おう!」と返事をして走っていった。





ーーーーーーー






「ダメって言うなら、こっちも言いふらす。それくらいの覚悟で頼んでるの」


言っちゃった。


私今、とんでもなく性格の悪い女になってる。

みんなに嫌われる悪女の立ち位置。

今ならあの役の気持ちが分かる。


永谷くんに彼女が出来たかもしれないと知った私は、嬉しかった。


あんなに優しい人に、大切な人が。


彼が選んだんだから、すごくいい人なんだろう。


ただ、素直に祝えなかった。


出来れば、嘘であって欲しかった。

出来れば、横には私がいたかった。


しかし、さっき目の前で見てしまった。


仲良く歩く、2人の男女。


男の子はもちろん永谷くんで、その隣には美少女がいた。


私なんか比べ物にならないほど、可愛い女の子。


勝てない。そう確信した。

でも今更諦めることなんて出来ない。

せめて最後のあがきを。キッパリ諦めがつくようなことを。


その意を込めた、遊びもといデートの誘い。


最終的には脅したような結果になってしまったが、約束を取りつけることが出来た。


そこでたくさん遊んで、想いを伝えて砕けよう。


気持ちよく、いつ始まったかも分からない恋を終えよう。




私は空を見上げ、そう誓った。



悪女でもなんでもいい。





私は、「負けず嫌い」なんだから。







最後まで読んでいただきありがとうございます!

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