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Genesis/君が生まれた日  作者: 八神楓
FIRST STAGE 未来編
5/5

過去と、今についての物語

「すみません、ハオ先輩。わざわざ着いてきてもらって」


「いやいや、先輩として当たり前の事をやってるだけだよ」


今、僕とハオ先輩は食事を終え、強化グラウンドにて訓練を行うため、向かっている途中だ。


「ハオ先輩って15歳ってミナリ先輩が言ってましたけど歳近いですね」


「まあね。だからあんまり堅苦しくしなくても構わないよ。俺だってまだ入って3年目だし」


「じゃあハオ先輩は今年16歳になられるんですね。僕なんてまだ義務教育過程を終了したばかりの12歳ですよ」


今年の3月から13歳になるけど、実際まだ先の話だ。

1つ下の年代とそう変わらない歳でもある。


「ハオ先輩が子供の時ってどんな方だったんですか?」


事実気になるところではあった。名前的には中国系の方なのかな?と思ったので、自分とは違う国のことについて知りたかった。


「あー、いや話そうか」


あ、話しずらいことでもあったのか、だとしたら申し訳ない。


「まあ俺は上海の地下都市で暮らすただの浪人、つまり親がいない孤児だったんだ。そしてGenesisの襲撃にあってな。それは地獄だった。ちょうどその時中国ではエリアバリアを改築してGenesisが入ってこないようにするか、そのまま防衛し続けるか、政党同士での闘争になっていて、紛争まで持ち越されたんだ」


エリアバリアというのはここ、地下新宿都市でも貼られている地上のバリアのこと。地下からは外の景色は太陽しか見えなくなっている構造だ。そのため、外にGenesisが何体いるのか、今外はどうなっているのかは確認する事は出来ない。また外国に行くためには海中から潜水艦で移動するしかない。


そして恐らく問題視されているのはGenesisが侵略してから約1年でエリアバリアを建てたこと。その為、迅速な建築をしてしまったことにより、怠った部分が数多くあり、ここ新宿でもGenesisが穴を開けて侵略してきてしまうんだ。



「それでな、あの時、地獄が始まった時に」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


それは5年前、俺が10歳の時


「我が国主党に投票を!!!公約はただ1つ!!!エリアバリアの解放だ!!!!」


当時俺は母親と共に国主党というエリアバリアを改築する地上進出派の演説を聞いていたんだ。


「ハオ、あなたは必ずこの紛争から生き延びなきゃいけない。そして地上へ進出してGenesisから地球を奪え返さなくちゃいけない」


母親は国主党の支持者だった。だから母親には地上に出て、今の生活から変えなくちゃいけないと言いつけられていた。

そしてその演説の最中に事件があったんた。


パンッ!!!!



「うわぁ!!」

突然銃声がなり響いた。

そして目を開けると目の前にいた党首が頭を撃たれて死んでいた。


「うぉぉ!!!テロだ!!!国防党の仕業だ!!!国防党を許すな!!!」


国防党とは保守派。つまりこのままエリアバリアを改築せずに、防衛し続けながら長期戦にてGenesisを減らし続けようという政党。実際その時国防党が党首を撃ったのかは分からなかったが、紛争が始まったことには変わりなかった。


「ハオ!!逃げるわよ!!!」


そして俺は母親に手を引っ張られたまま防空壕の中に逃げ込んだ。本来ならGenesis対策だが、その時はそんな事を気にしている場合ではなかった。




2日後、その紛争は国主党の勝利で終わった。

改築派であり、対人間用の武器が多数所持していた為勝利したと言われている。


結果、1ヶ月後にエリアバリアの改築が始まった。


世界でも類を見ない初めての試みにより、世界から多くの記者や著名人が集まり、当時上海は世界から注目されていた。


しかし、それにより地獄は始まってしまったんだ。

国主党の改築隊は工事ミスより直径約100メートルの大穴を空けてしまった。

そう、Genesisが入ってきたんだ。


その時約50体のGenesisが入ってきたらしい。

ただその時はパニック状態で何も覚えていない。


「母さん、母さん!!」


母親とははぐれてしまい、俺は一人ぼっちだった。

そして血の色に染まった街を見渡しながら泣き叫んでいた。

その涙も血の色に染まっていくような勢いで。



その時遠くには一体のGenesisがいたんだ。

こちらに向かって来ていた。だがその時はもう死ぬと分かっていた。周りはみんな死んでいる。

だから俺は逃げずにその場に立っていた。

絶望の目をしながら。


ビューン!!!


その時その音によって目を開けた。強い風が吹き、腕を顔に当てながら微かに見えたのが1人の大人の人がGenesisに向かっていた。早すぎてその後からは何も見えてはいないが、気づいた時にはそのGenesisは倒れていた。


そして彼がこちらの方へ走ってきた。

その時俺は足が動かず、そのまま彼との距離は縮んでいく。


すぐに目の前へ立ち、ゴーグルを外して彼はニッコリ笑って言った。


「まだ諦めちゃいけない!君には生きる資格があるんだ!」


その言葉を聞いて、俺は目に輝きを取り戻した。

まだ諦めちゃいけないと。


そう、彼こそ俺の尊敬する方、LIMO隊所属の副隊長。

『シン・アスト』さんだ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


僕はハオ先輩の話を聞いて思った。

シンさんはどんな時でも笑ってくれる優しい方なんだと。

そんなシンさんを見習っていこうと。


「その後は、シンさんが俺を抱いてAPEELの上海訓練所まで連れて行ってくれた。重たい装備を付けていても一生懸命走ってくれた。そして訓練所にて戦闘後、俺を助けた功績からシンさんは上海から新宿にあるここ、本部へ移籍。そして俺はシンさんと共に海を渡り、特進クラスに入ることになったんだ」


だから今ここで働いているのか、、


「すみません、いろいろ聞いちゃって」


「いやいや、俺が話したんだから。こっちこそこんな話して悪かったな」


人にはいろんな過去がある。それぞれ楽しかった思い出も悲しかった思い出も心に刻まれる。

そんな生活を人は『人生』と呼ぶのだろうか。


「おっと、そろそろ着くぞ。話に集中しすぎてて忘れかけてたな」

オ先輩は微笑しながら続ける。


「今日はさっき出現したGenesisに使った特殊スーツ『エイル』の整備をすると共に枢には使い方を学んでもらわなければいけないからね」


『エイル』。それはシンさんが使っていたもので間違いないだろう。だけど僕にそれが扱えるのだろうか。

心配そうな顔をしていたのだろう、僕を見て口を開いた。


「大丈夫だって。俺だって最初は何も出来なかったんだぜ。練習すれば出来るよ」


「そ、そうですかね」


強化グラウンド前に来た僕達は門から中に入った。

・・・やっぱり広い。

前を見るとかなり人が集まっている。


「凄いなぁ。これが強化グラウンドか」


真ん中にあるグラウンドから屋内のジム?などに向けて周りにはたくさんの道が別れている。


「整列!!!」


突然大声が聞こえたので一瞬ビクッとしてしまったが、すぐに6班の一番後ろに並んだ。

流石は軍隊だ。規律はしっかり出来ている。


「今日はシンがいない分私が一人で引き受ける。初めて訓練を受けるのもいるだろう。私が玄道ワタリだ!!よろしく」


初めてというのは僕のことだろう。それと、玄道さんは恐らくLIMO隊の運転手をしていた人だ。ということはかなり凄い人なのだろう。

それと先程の食事にて聞いたことだがLIMO隊とは特進クラスの1班のことらしい。


「それでは各々に出された課題を無駄なくこなし、努力に励め!!以上!!」


以上!!と言われてもどうすればいいか分からなかったので、そのまま6班に着いていった。


6班の辿り着いたところは室内グラウンド。体育館よりはかなり広い。しかし、バスケットボールコートやバドミントンのラインなどは見た感じない。

あるのは端と端に分厚い壁があるだけ。

室内グラウンドの真ん中に立つと、ミナリ先輩か元気よく振り向いた。


「さぁて今から訓練始めてくけど、まずはアカリ君!君には超ベテランのカイ先輩に『エイル』の説明をしてもらって!」


カイ先輩とは特進クラス6班の最年長の人。ランチの時にはミナリ先輩が銃の腕が凄いと聞いていた。


「では、カイ先輩よろしくお願いします!」


「了解」


見た目は厳かな方だが、とても優しそうな方だ。


「では枢君、君にはまず講習室にて『エイル』について学んでもらう」


「わかりました」


ようやくあのとてつもないスーツ『エイル』について知れると思うと少しワクワクもしながら緊張も重なった。

屋内グラウンドにも様々な道に分かれていて、入って右側にあった道から講習室へ向かった。

普通に講習室へ付けば良かったのだが、その道中の廊下にてエレナともう1人男の人が口論している状況に出くわしてしまった。


「だーかーらーバラリノ。今日の訓練までには間に合わせるようにしなさいって言ったじゃない!」


「仕方ないじゃないかエレナ・・・。最近はGenesisの出現率が低い。新型の『エイル』なんて作れる状況ではないんだ。それに、今ある『エイル』の整備で工作班も手一杯なんだよ」


「それこそ出現率が低いなら今の『エイル』は生産量を下げてもいいでしょ!?なんでそんな事も分からないの!?」


「いや、そんな簡単な問題じゃないんだ。エレナにはまだ分からないだろうが、新開発をする時にはいろいろ手続きが必要でな・・・」


「そんなん気にしてたら空気が悪くなる一方じゃない!そんな事が起きたら、ってあれ?あぁあんたね」


ようやくこちらに気づいたらしい。カイ先輩の方を見ると首を横に降って早く行こう、とでも言いたそうだったがそんなのお構い無しにエレナが自分からやって来た。


「あんた、今の話聞いた!?」


両手を腰に当て、こちらを下から覗きながら尋問される。正直もうあまり絡みたくなかった・・というのは控えておこう。


「い、いや聞いてないよ聞いてない。それより・・」


と、言った即時に振り向いてからまたこちらを向き言った。


「あぁ、この人はバラリノ。霧バラ・リノ。一応副隊長やってるんだけどね、ホントに使えないのよね。もう、嫌になっちゃう」


霧バラ先輩というのは確か5班にいた人だ。班確認をしていた時に変わった名前から少し頭に残っていた。それにしても凄いな。確か霧バラ先輩はエレナより年上だった。それなのに霧バラ先輩の方が引けていた。

もう一度振り返るとやはりというかカイ先輩が呆れていた。


「エレナ。これから僕はカイ先輩に『エイル』について教えてもらうんだ。少しどいてくれない?」


少し強気で言ったので、エレナも流石に驚いたのか退いた。


「はいはい分かってる分かってるわ。だけど、あんたはあんな危ないスーツ使わなくていいの。どうせ運動神経なんて大してないから壁とぶつかって死ぬわよ」


笑いながら言われたので少しカチッときたがここは抑えておく。

そんな事を気にせず先へ進もう、とカイ先輩は言った。


「では霧バラ先輩。じゃあねエレナ」


「ちゃんと名前で呼べるようになって良かったわ」


最後までエレナの勢いは変わらなかったが、新型の『エイル』とはなんだろう。それと誰かについて揉めていたような気もした。


講習室に着いた。

ドアを開けそのままテーブルに座った。


その間カイ先輩は別の部屋に行き、戻ってきた時には何か重たそうなダンボールを運んでいた。


「百聞は一見にしかず、と言うしな。本物を見せて教えた方が早いだろう」


そのままドサッとテーブルに置き、カイ先輩も正面に座った。


「この重たいものこそ『エイル』だ。中を開けてみるぞ?」


カイ先輩はダンボールに入っていたものからスーツを取り出した。これが『エイル』か。


「存じ上げている通りこれが対Genesis用特殊戦闘スーツ『エイル』だ。これは人間の運動神経を最大限まで引き出すと共に時速100kmのスピードで移動することが出来る人類歴史史上最高の発明品だ。まぁまずは着てみる方が早いな」


そう言うと隣にある更衣室の中へ入れ、と言われそのまま『エイル』を渡された。


「おっ、重っ」


「そりゃあ重さ約20kgほどあるからなぁ。最初着た時にはまともに動けないだろうね」


かなり重かったので正直驚いた。こんなスーツであんなスピードで本当に動けるのだろうか。


そのまま更衣室で着替え出てきた。

まだまともに体が動かせない。


「感じている通り動きづらい。『エイル』を起動させればまだ楽になるが、扱うには肉体改造が必要だ。だから積極的に励めよ?」


「わかりました」


「それでは説明していく。まずは頭からだな。そのゴーグルは動いている時に目が見えるように単純に作られたものだ。そのゴーグルからは目の前に簡易的なバリアが貼られ移動中は風に乗りながら戦えるようになっている。バリアには司令からの命令なども表示されるので常時確認するように」


そう説明されしっかり髪に絡まないよう固定した。


「次に上半身から説明する」


上半身と言われ、ピチピチのスーツの真ん中にあるものに触れた。


「それは、Genesisのコアから取れて加工された『エイル』用のコアだ。これが一番重要になってくるもの。そのコアは『エイル』の全ての力の役割を担うもの。つまり『エイル』原動力は全てそのコアで出来ているということだ。これでGenesisがあんなに強敵な理由がわかっただろ?」


聞いていた時から何となく察していたので即座に答えた。


「つまりそのコアは莫大なエネルギーを持っていてそれを持っているGenesisだから『ロスト』などが撃てるというわけですね」


『ロスト』というのはGenesisから放たれるビーム砲のことだ。その名の通り撃たれた部分は血ごと消し去る。


「正解、100点満点の回答だ。だからエイルを使っている時には自分がGenesisになっていると思え」


自分がGenesisと思え。とてつもなく重い言葉だ。


「そして背中にあるのが、Genesisの血から取れた抽出液のボンベ。これは高速移動中の燃料となるものだ」


凄い、Genesisは体中にとてつもない力を秘めている。それに関心しながらも恐ろしさを感じてしまう。


「次に下半身についてだ。その腰から生えているものは絶対防御装置と呼ばれるものだ。これはGenesisからの攻撃には1回まで耐えられるようになっている仕組みの防御装置だ。1つの『エイル』につき1つだけ付けられる。そのため大事な書類や隊員連絡用番号が書かれた紙、簡易応急処置キットに補給ドリンクなどは全て入っている。連絡についてだが、携帯電話などの高価なものより頑丈なトランシーバーを優先して使えと上からの命令によりトランシーバーの利用が義務付けられている。それとトランシーバーは常時使えるよう、左胸の内ポケットに小型になって入っている」


『エイル』の仕組みが徐々に分かってきた。中々難しそうで覚えるのが大変だ。


「最後に一番重要なのが反動耐性機能であるということ。たとえいくら高速で動けても自由に戦うことが出来ない。そのため『エイル』には全身に32個の反動耐性装置が付けられている。反動耐性装置からは全身の動きを圧迫させ無理やり押し通すという機能だが、ここまで複雑な機能を付けているとどうしても難しいことがある。それは『エイル』を使える時間が限られているということだ。全力で『エイル』を使用してからだと僅か10分で使用限界が来てしまう。つまりその間にGenesisを倒せということだ」


僅か10分・・それはかなり短いな。複数体のGenesisが出現した場合ならかなり大変だぞ。

それと気になっていることを1つだけ質問した。


「あの一番気になっていることなんですが、Genesisの倒し方とは・・」


「あぁ悪い忘れていた、一番重要な事だったな。Genesisを倒す時には胸に付いているコアを破壊すること。その破壊方法とは」


「破壊方法とは・・」


だが次に来る言葉で呆気に取られてしまった。


「素手だ」


「す、素手?」


「驚かせるかもしれないが、『エイル』にはコアを破壊するための部分が複数ある。それは手の甲、肘、膝、かかとだ。いわゆる肉体の中で硬い場所。そこは重点的に破壊出来るように加工されている。現時点ではそれしかGenesisのコアを破壊する方法はないんだ」


素手なら幼い頃に格闘技を姉ちゃんから教えて貰っていたので自身はあったが、もっと別の破壊方法があったと思ったので「素手?」などと聞いてしまった。


「それでは確認用のテストをしようとするかな。そのままもう一度脱いでテーブルに座ってくれ。今の確認テストをする」


「わかりました」


中々のハイスピードで今日が進んでいく。

今は3時半だ。

ここまで充実した一日は過ごしたことがない。ただそれには今まで感じたことのない嬉しさもあった。


そして「その日」までの時間も加速していくのだった。

ようやく投稿出来ました!

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