ナカマタチとの出会い、そして
「キミハニンゲン、、ナノカ?」
そう問われた瞬間人間だと即答したらどうなってただろう。果たして殺されていただろうか。それともあそこで答えていれば何かが変わっただろうか。それは分からない。
選択というものはいかに簡単に出来て、難しいものなのだろうか
ジャァァァ
一旦トイレの水を流した。落ち着こうと意味もなくトイレに入るのは昔からの癖だ。
「どうしようか、、一旦戻るべきか?、、」
カスペルさんは今、ハウスの事務室にいって今回の件を説明しているようだ。その間待ってくれと言われたが、時間が経つ事に余計に緊張して来たのでトイレに引きこもることにした。
「戻るか、、」
事務室へ向かうと誰もいなかった。
「おかしいなぁ、、」
まさか、トイレに長くいたからかと察した僕は慌てて事務室の人に聞いたら、
「もう帰られましたよ」とだけ言われてしまった。
「僕はどうしたら、、」
と、果てもなく歩いていると突然足に違和感を感じた。
「あれ?」
と転んでしまった。何かに引っかかったようだ。
なんだろうかと後ろを振り向いた瞬間
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「うわぁ!!」
驚いて後ろへ尻もち着いてしまった。
目の前を見ると何やら肩を組んで上から見下ろしている女の子がいた。
スカートの中が見えていたことに少し目線をずらして。
「驚いた?驚いた?」
「驚い、たじゃないよ驚いたよ。何がしたかったんだ」
「ん?だって面白かったんだもん」
「面白いとかそういうのじゃなくてさぁ、、」
初対面の相手に足を引っ掛けて驚かすのはかなり悪質のようにも感じるが、彼女にはその意識はないらしい。
「危なかったじゃないかぁ。怪我でもしたらどうするんだ」
「ごめんごめん。わざとじゃないの」
笑いながら彼女は言ったが、わざとじゃない、、?だと。
「私、エレナって言うの。エレナ・フランシス・シーカー。14歳よ。みんなシーカーだったりエレナだったり呼び方違うけどあんたはエレナって呼びなさいよね」
「それじゃあシーカーって呼ばせてもらうね」
と、少し煽ってみた。仕返しの気持ちも込めて。
「エレナって呼びなさいって言ってるでしょ!!それとあんたの名前は?」
完全にその煽りも撃退されてしまった。
「枢アカリ。じゃあ僕のことはアカリって読んでくれない?」
「じゃあ枢くんあんたの事はそう呼ばせてもらうわ」
こっちの言うことは聞いてくれないらしい。酷いものだ。
「それで、あんたが噂の新人くん?早速聞いてるわよ」
どこで手に入れた情報かは分からないが、恐らくそうだろう。
ここに来て数時間しか経ってないのにもう既に噂されているなんて、流石は軍隊だ。情報の移動が早いな。
「多分そうだと思うよ。今日からお世話になるのでよろしくね」
「あんた、もっと馴れ馴れしくしなさいよ。こんな変わった人がたくさんいるハウスでやってくなら仲良くならなきゃね。それと、なんか違和感あると思ったら、あんた名前も雰囲気もそうだけど、なーんか女の子っぽいのよね」
早速枢くんと呼ばれなくなった。これぞ「手のひら返し先輩」というものじゃないか。でもそれは今は置いておこう。
「確かに昔からよく言われてるかもしれないね。でも僕は僕らしくいろって姉ちゃんに言われたんだ。だから僕はこのままでいようと思う」
僕自身そうずっと思い続けている事。小さい頃に女の子かよと虐められた時に姉ちゃんが励ましてくれた言葉だ。
人にはそれぞれ個性があるのだから、と。
「なんだかよく分からないけど、早速行くわよ。もうすぐ昼食の時間が始まる。食堂に言ったら挨拶してね。そういう決まりなのよ」
「了解です」
即答した
「カスペルさんには後で謝っておこうか、、」
まずは朝からいろいろありすぎて収集が付かないので昼食の時間で整理しよう。
携帯を見るともう12時半になっていた。
「それと、君ってなんであそこにいたの?本来ならそっちの昼食に向かうはずだったんじゃないの?」
隣で歩いていたエレナにそう問いかける。
「ん?だってあんたも仲間になる子なんでしょ?だったら迎えに行くのが当たり前じゃない。これからよろしくという意味も込めてね。でも別にあんただからいったってわけじゃないからね!勘違いしないでよね!」
「・・・」
適当に1つに結ばれたその紅の髪をチラつかせながらプンッと振り向いて顔を膨らませていたが、案外優しい子なんだなと思った。さっき背負っていた緊張がほぐれたので心の中でありがとう、と呟いておく。
ハウスの集会部屋と呼ばれる部屋の前に立ち、エレナは一旦仲間達に僕が来ることを伝えに行くということなので一旦別れた。
目の前に貼られた部屋割りを見ていると横から人が近づいてきた。
「あなたが噂の新人くん?」
「はい、そうです。枢アカリと言います」
30代くらいのちょっとぽっちゃりした女性だ。
「私、新庄コハクと言うの。よろしくね。まず順番に説明していくからね」
ペコッとだけ会釈し、一旦前室のような場所へ入る。
「まず、ここの基本説明だけど、結構変わったメンバーが多いの。個性溢れる、と言った方がいいかな。聞いていると思うけど、年齢差はかなりあるからそこは把握しておいてね」
そうしてまずカバンに入っているものとポケットに入っているものをチェックされた。流石にこういうところは厳重に行うのだろう。
いるものといらないもので分けられた。いらないものは廃棄されるらしい。少し悲しかったが。
「携帯電話もこっちの新しいタイプに変更するからね。だから今まで繋がってた人達とはもう話せなかったりするけど構わないよね?」
正直あまり友達もいなかったので大丈夫ですとだけ伝える。
「それと、制服ってここでは普段も着ているんですか?」
「あー忘れてた忘れてた、制服は制服なんだけど普段の私服もお揃いの別のを着てもらうからね。そっちの制服は公務や外に出る時、訓練なんかで使うからね」
「分かりました。ありがとうございます」
「その新しい私服は後で部屋案内するからまずはお腹も空いたでしょうから食べてて。説明は、、そうだな」
携帯を取り出して誰かに電話している。
「それじゃ頼むねー、はーい」と、電話を切り、
「じゃあ早速だけど彼女に来て貰って、、」
ドーン!!!
と音がして力強くドアが開いた。
「もう、、うるさいんだから」と、新庄が呟くと
「ただいま戻りました!!!」と、巨漢の男が現れた。
「あの、、この方は、、」
「彼はキノ・アキラと言ってこのハウスの実質的リーダー的な存在なの。もう22にもなってあれだけどね」
「君がアカリ君か!!よろしく頼むな!!」
「あ、はい、、」
若干引き気味に僕は答え、そのまま連れ去られようとしたが、新庄さんが引き止めた。
「アキラくーん、ちょっと待っててすぐ行くからー!」
「了解です!」、とだけ聞こえキノさんがもう一度ドアを力強く開け、去っていった。
新庄さんはやれやれとしながらも続けた。
「今日からここで生活や訓練などをしてもらうわけだけど、守って欲しいことが3つあるの。まず1つ目、仲間同士で協力し合うこと。これは普段からやっておくべき一番重要なことかもしれないからしっかり守ってね」
なるほどなと僕は頷いた。普段から協力していることで訓練の時にも自然と役に立つということだ。
当たり前のことだけどとても大切なことだ。
「2つ目はこれを渡すからそれ通りに行って」
新庄さんから手渡されて物は薄い手帳のような物。
「それは特進クラスの掟が書いてある手帳。基本これを見て動いて。あくまで軍隊であるということは忘れてはいけないよ」
「了解です」
「それじゃ、食堂に出てまずは挨拶してもらうわ。君には6班に入ってもらう予定だから」
そのまま歩いて食堂の方に向かった
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「割と悪くなかった子だったわ」
アカリと一旦別れて食堂に向かった私は真っ先に5班の元へ向かった。
「それは知ってる。それだけ長官に期待されているのがよく分からない。逆にしっかりやってくれないと困る」
彼は霧バラ・リノ。私より2つ年上の16歳の男子。ここ第5班の副隊長を務めている指揮力に長けた人。髪は少し長く右目が上手く隠れている。その名前からバラリノというあだ名が付いてたりもする。
「で、そっちの準備はどうなの?バラリノ」
「順調に進んでいるとは言えないが、開発班には早くするようにとは言っている。そろそろ新タイプの『エイル』を開発しなければ、この間の」
「やめて」
もう1人の女性が話をかき消した。彼女は22歳の女性、生駒ルミ。確かにいい話ではなかったようね。
「ごめんねルミちゃん。決してそんなつもりはなかったの。大丈夫、次は絶対上手く行くからもうあんなこと」
「もういいだろエレナ、話を切り替えるならとっとと切り替えろ」
「うっ、、そうだね」
私は席を立ち、お手洗いに行く。そして洗面台の鏡の前に立った。
「はぁ〜もう嫌になっちゃう。なんで私がこんな特進クラスなんて入んなきゃいけなかったの。毎回毎回死ぬ気でやってんのよ。LIMO隊みたいに強い班ならもっとこんな苦労しなくてもいいのに」
正直あれはルミちゃんにとっては本当に悲しいことだった。
でも、あれから軍隊からの私達への重圧は散々なものじゃない。
もっと強ければ、、
「どいてくれない?」
「ギグっ!」
「私も手を洗うから、どいてくれない?」
「ちょっと、驚かさないでよ!なんであんたはそんなに影薄いのよ!!」
さっき隣にもトイレのドアが閉まっていたからそこにいたんだ。
私が気づかないほど影薄いなんて、、
「私はただ手を洗いたいだけだから」
彼女は妃未鳥トワ。髪はライトグリーンで、ショート。髪の色の割にはかなり地味、というか何処にいるのかも分からない影じゃない!
「分かった分かった。まああんたに絡む必要なんて私にはないからこのまま立ち去るけど、次はしっかり気づかせなさいよね!」
「・・・私は、強い」
ドアを開けて立ち去った。あいつに絡まなくちゃいけないのは何ででしょうねー!私が強いとか普通に言ってたし、それになんでかしんないけど本当に2班に所属してるのよね。班の数字が小さくなるほど優秀と言われてる中で私が5班なのは理解出来ない!
ビンボンパンボーン
チャイムが鳴った。ということは何らかしらの合図かしら。今からランチの時間よ
「特進クラスの隊員に連絡する。至急食堂に集まりなさい。繰り返し連絡する・・・」
なんだ、あいつの事ね。それじゃあそろそろ行きますか。
後ろを見るとトワの姿があったけど私は構わず向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
食堂に着いたけど、さあどうしようか。まずは昼食を食べるけどその前に挨拶しなければいけないらしい。
「キノさん、今から僕の方から挨拶するという事ですけど、簡単にでいいですよね?」
「あぁもちろんだ!自由にやってくれて構わない!」
「あ、わかりました、、」
相変わらず体も声量も大きい。
広い食堂の中で周りにはたくさんの隊員が座っている。徐々にこちらに気づく人も増えてきて一層緊張が増してきた。
「はぁい!注目注目!今日からここ特進クラスのハウスに入隊した子だ!!」
「あ、今回特進クラスに入隊しました枢アカリと申します!何かと迷惑かけるかもしれませんが、頑張ってみなさんと訓練など頑張りたいと思います!よろしくお願いします!!」
力強く叫んだ。今日だけでも本当に成長させてくれた。今までこんな風に話せたことなんてなかったからだ。
寛大な拍手で先輩方が迎え入れてくれて、内心とても嬉しかった。最初から上手くいきそうで何よりだ。
「それじゃ、所属の班は聞いてるよね?まあとにかく今日から頑張ってくれたまえ!」
僕はわかりましたと軽く会釈して、キノさんは自分の班の元へ行った。僕は確か6班だった。周りを見渡すとカスペルさんやレイラさんもいる。そういえばカスペルさん戻ってたんだ。それとシンさんは、、と思ったが特に何も言わず、僕の方に手の降っている方へ向かう。
「こっちこっち!そう、名前はアカリ君だったね」
とても優しそうなお姉さんが元気に迎え入れてくれた。
薄紫色の髪は1つに整えられていてポニーテールの可愛らしい女性だ。
「はい、アカリと言います。今日からよろしくお願いします!」
僕は座りながら軽くよろしくお願いします、と伝えた。
「さっき言ったばかりなのにそんなかしこまらなくてもいいよー!私、各務原ミナリって言うの!今日からよろしくね!」
凄く優しい人なんだなと思った、本当に裏がない人なんだなと思った。
僕は目の前に置かれた料理を見て驚いた。豪華な煮込みハンバーグランチだ。こんなの普通に軍隊で出るのか、と少し感心してしまう。
「それじゃ、いただきますの祈り始めようか。この世界を治める神よ、永きに渡って見守っておられる神よ、全ての頂きに感謝し、今日この一日を創世の時からの恵と思い、この食事をいただきます。」
いただきます、とテーブルにいる人達が復唱し、食事に手をつける。
この祈りとは正確には分からないが、約13年前から布教しだしたメタノイア教の食前の祈りだ。
メタノイア教の知識などもここで学ぶそうなので、少し楽しみだ。
「ねぇアカリ君、まずこの6班の班員を紹介するね。まず一人目、加羽マサト君、16歳。彼は指揮に長けててとっても優秀な子なの。次に彼女がイリーナ・マーズリー先輩25歳。イリーナ先輩はここの副班長をやってくれているんだ。私達の事を一番に考えてくれている優しい先輩。3人目はチャン・ハオ君15歳。ハオ君は努力家で成長するのがとても早い凄い子なんだ。そして杉並カイ先輩27歳。カイ先輩は銃の腕がピカイチで撃てない相手はいない凄い人なの。そしてここの班の班長をやらさせていただいてる私、各務原ミナリ!ホントは言いたくないんだけど、、19歳、です!」
マサト先輩は帽子を反対に被っていてとってもオシャレな先輩だ。イリーナ先輩は大人しくて優しそう。ハオ先輩は真っ先によろしくと握手してくれた元気な方、カイ先輩は一見厳かな雰囲気あるけど、目が合うとニッコリ笑ってくれる。
みんな個性があって良い人達だなと思った。
「そんじゃあ飯食べるか!!もう腹減って仕方ないぜ!!」
まだ食事に手を付けていなかったマサト先輩が真っ先にハンバーグを齧る。自分もナイフで切ってから齧ったが、とてもジューシーでおいしい。
「まあ今日は朝からいろいろあって大変だったけど、ひとまず3 時から訓練開始よ!それとGenesisは一旦発生したら落ち着いたからね。強化グラウンドに集まってね。それと、まだアカリ君は分かんないだろうから、ハオ君、歳近いし連れてってあげて」
わかりました、とハオ先輩は告げ食事に集中する。
今日はたくさんの事があったけど3時からも訓練があってまだまだありそうだ。
特進クラスに上がってしまい、心配ばかりが立ってたけどなんとかなりそうだ。
ただ、どこからか視線を感じているのには食堂に入った時から気づいていた
遅くなってすみません!
今回は前回と比べて2倍近くの分量となっています。これからもこれくらいの分量でやっていく予定なので、毎日投稿は難しいかもしれませんが、
出来るだけ頑張って投稿します!
なので最後までご覧下さい!