プロローグ2
かつて世界にはアルスという唯一の国しか無かった。
そこには王と王を守護する神が住んでいた。
ある時、北の大地に魔女が住み着いた。
魔女は女神を名乗り国を創ってアルスから国土を奪った。
しかし北の極寒の地は誰も住まない不毛の大地。
アルス王は気にしなかった。
ある時南に異世界の記憶を持つ転生者が生まれる様になった。
彼等は異世界の思想を持ち込み、民主主義という共和国を設立してアルスから国土を奪った。
南の地は魔物達が住み着く大地と森が広がる危険な地帯。
アルス王は仕方が無いと容認した。
しかし、それを皮切りに、アルスから独立し、国を名乗る勢力は拡大した。
アルス王国はいつの間にか、かつての国土の4/5を失った。
王は諦めても、アルス王家を護る神は諦めなかった。
国土と人々の忠誠をアルス王家に取り戻す為、何度も人に産まれては、何度もアルス王の為に戦った。
神の働きにより、再びアルスは拡大し、多くの属国を支配する大国へと帰り咲いた。
属国を含めれば、かつて失った国土の1/3を取り戻したのだ。
神はそれでも飽き足らず、更に取り戻そうとした。
しかし、何千年と続く戦争に疲れたアルス王は、もう戦いを止めるようにと祈りを捧げた。
神はしぶしぶその祈りを聞き入れて、神自身が人に生まれるのを止めた。
それでも、神がアルス王家を守護する事をやめる事はなく。
時には雷で、時には天変地異でアルス王家を脅かす者達に鉄槌を下した。
その内、神は人々に怖れられるだけの存在になりそうになった。
そこで、精霊達に命じて人々を豊かにする実りを畑にも、森にも、川や海にも与える事にした。
更に、自分の名において精霊召喚出来る術を精霊魔法として人々に与えた。
神は自分の化身として、代弁者として、神が人に産まれた時の姿に似せて、緑の目の子供たちも誕生させた。
緑の目の子供達は精霊に愛され、国を護る騎士となった。
その神はもっと人々から親しまれる様にと、人々に明言した。
「私は神ではない」
「私はお前たちの長兄だ」
こうして、アルスの守護神は神を辞めようとしたが、かえって人々から慕われ、讃えられる存在となり、アルス国教の主神「ガーディアン」として崇められたのだった。
今からおよそ八百年前の出来事である。